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メディアを診る

気遣いが良好な人間関係を組み上げる

文:村橋 保春

『日本全国「ヨイショ」のツボ』

県民性は侮れない

最近、テレビで各地域、特に都道府県別の特徴を取り上げる番組が多い。出身の都道府県では当たり前のことが、ほかではかなり変わったこと、おかしなこととして捉えられる。そのギャップに改めて地域のアイデンティティを感じ、他県出身者からあらぬ難癖を付けられるとふつふつと郷土愛が芽生えてくる。テレビの常で、時々眉唾に感じる内容も含まれているが、ご愛嬌であろう。
 こうした傾向は出版業界にも見られる。県民性、地域性を取り上げる本をインターネットで検索しただけでも、優に100冊を超える。性格を取り上げるものを基本として、食文化(グルメ)、恋愛、消費動向(マーケティング)、政治、歴史風土などいろいろな切り口でまとめられている。

本書は、「ヨイショ」をキーワードとして、すぐに使える「ヨイショ句」と絶対に口にできない「タブー句」を具体的に示している。県民性に関する切り口としてやや出尽くし感を感じていたところに、虚を突かれた思いである。
 仕事柄、全国各地に出向くことが多い。コンサルティングを行ううえで、クライアントとかなり深く話し込むこともある。いろいろ話す中で、その地域の感想を聞かれる場合がある。よかれと思って話したことが相手の意に沿わないこともあり、とはいえあまりに一般的な感想では空々しい雰囲気が出来上がってしまう。こうした質問のときが一番緊張する。

中小企業診断士であれば過度にヨイショをする必要はない。調査分析、コンサルティング等、クライアントにとってふさわしい判断ができるように、率直に報告、指導することが大切である。クライアントにとって耳の痛い話であっても、伝えるべきことはきちんと伝えることが責務である。ただし、タブーには十分留意すべきであろう。クライアントとの良好な関係構築は最も重要な要素のひとつである。そのためにはタブーという地雷を踏まないように十分配慮しておきたい。

話の幅を広げることもできる

本書の著者は県民性、地域性をテーマに数多くの著書を著してきている。性格や仕事の取り組み方など色々な視点で地域を調べてきた、ひとつの集大成として本書を捉えることができる。
 都道府県数は47であるが、本書では59エリアに区分されている。同一都県内を複数のエリアに区分しているのは、青森県、福島県、東京都、愛知県、兵庫県、鳥取県、愛媛県、福岡県である。いずれも歴史的背景をはらんでいる。このエリア区分は当該都県内ではあまり話題としないほうがいい。こうした機微に触れる区分ができているのが本書の特徴であり、ゆえにヨイショやタブーとして解説ができているといえる。
 本書は北から順に、59エリアごとにエリアの特性、ヨイショ句、タブー句がまとめられている。気になる都道府県、エリアから読んでなんら支障がない。少し空いた時間に、少しずつ読み足していけばよい。業務として出向く地域の特徴を知っておこうと、事典的に確認してみることも可能である。気になる内容を記憶にとどめておけば、話の幅を広げることもできると思う。
 少し内容を取り上げてみる。
 福島県が太平洋側から順に、浜通り、中通り、会津に三区分されることをご存知の方もおられると思う。本書でも、福島県東部、中央部、西部としてエリア区分して解説している。
このうち、西部(会津)の人の特性は、郷土愛が強く、頑なな忠勤の人として示されている。幕末戊辰戦争に関わる歴史は、人々の中に鮮明に残っており、白虎隊に関わる話はヨイショ句にも、タブー句にもなるとしている。私も同エリアで業務をした経験があるが、人々の誠実さと一途さは大いに感銘した。
中央部は福島市や郡山市を含み、このエリアの人の特性は東北には珍しく、新しいもの好きで社交的としている。都市規模や機能でライバル関係にある福島市と郡山市について言及することに注意が要するとしている。東部は気候的にも穏やかで、人々もおおらかで解放的とし、タブー句の設定もない。
本書のとおり受け取るかどうかは読み手の判断であるが、話のネタとしても興味深いものと考える。

ヨイショもタブーも、相手の心情を思いやる気遣いである。中小企業診断士として、クライアントとふさわしい人間関係を構築するうえで、気遣いを裏付ける情報の収集、活用は必須として捉えていただきたい。

『日本全国「ヨイショ」のツボ』

『日本全国「ヨイショ」のツボ』

岩中祥史[著]
新書版・280ページ
定価:861円(税込)
祥伝社刊 http://www.shodensha.co.jp/