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仕事を得るもうひとつの方法

文:村橋 保春

『小さな起業家』/『起業 成功をきめる準備』

起業という方法を考える

雇用問題が大きな社会問題としてクローズアップされている。雇用者としての企業のあり方や被雇用者の待遇など、抱える問題は多岐に及んでいる。いずれの問題も、相互に関係しあっており、解決方法を見出すには多くの関係者の解決意欲と努力が必要である。なかなか早期に抜本的な解決策を見出すことは難しいかもしれない。

そこで、雇用と違うもうひとつの仕事を得る方法として、「起業」について考えたい。起業は、雇用と比べて、ある程度のノウハウスキルが必要であり、起業し軌道に乗るまでの資金が必要であり、成果を確認するまでの強い意思が必要である。確かに、ハードルは高い。しかし、中小企業診断士は、中小企業を対象として、起業や起業後の定着時期までのコンサルティングに関わることが多い。起業は中小企業診断士にとって大きなテーマであり、起業の推進は中小企業診断士に期待される役割である。

幸せで、着実な起業のあり方

起業に関して、数多くの書籍がでている。ITを活用し投資や時間の負担が少ない副業としての起業や株式上場までを視野に入れた金銭的成功を前面に打ち出した起業を紹介するものなど、「起業」に関わる内容は幅広い。「副業」ではお小遣い稼ぎの延長でしかなく、「株式上場」では話が遠大過ぎて多くの人に適合するものではない。
本編では、幸せで着実な起業のあり方について考える書籍を2冊紹介したい。
 『小さな起業家』。イスラエルの弁護士、実業家が著した自伝風起業テキストである。子供の頃からビジネスに対していろんなチャレンジを繰り返し行ってきており、その都度得られた教訓をわかりやすく示されている。きれいな挿絵もふんだんに取り込まれており、著者が示すヒントが太字で記されている。

起業に関わる本であるから、全体にポジティブである。例えば以下のような文章が示されている。

『どんな起業でも最初は夢から始まる。
夢を見ることができれば、望みがかなえられる現実があることに気づくかもしれない。望みがかなった自分の姿を想像し、その細部を心の目で見たなら、現実にそれを実行することが楽になるはずだ。』

しかし、起業家自身だけの成功を望むことは愚かであり、社会の一員としての自覚を強く持つことも求めている。

『やれることは何でもやっていいというわけではない。
優れた商品やサービスの提供を約束することでビジネスの可能性は広がるが、それは、その商品が実際に存在し、誠実で信頼性の高いサービスが実際に行われることが前提となる。そうでなければただの詐欺行為であって、遅かれ早かれ非難を受けることになる。』
『評判がお金をもたらしてくれることはあっても、お金で評判を買えるとはかぎらない。』

本書はとても読みやすい。すらすら読めるため、いいヒントを読み飛ばす恐れもある。このため、本書は、まずざっと読んで大きな流れをつかんだ後で、再度じっくり読んでほしい。起業に対する冷静な思考と情熱的な意欲が湧いてくるはずである。

最適ビジネスを目指す起業の取組

紹介するもう1冊は『起業 成功を決める準備』である。著者は長年、起業に関わる研究やコンサルティングに携わっている。

本書は全編を通して的確に順序立て、漏れなく区分して論じており、論理的に把握しやすい構成になっている。例えば、起業しようとする「本音の動機」を、退職動機、独立動機、起業動機に区分し、それぞれの特徴を記している。そもそも起業を目指そうとする本音はどこにあるのか、その本音により読者は今どの段階にいて、もし起業を推し進めたいとするならばどのように検討を重ねればよいのかを明確に捉えることができる。イメージに走りがちで、計画の細部の検討をないがしろにして実施段階で大きな陥穽に陥ってしまうことの多い起業家の姿勢をしっかりと正している。

著者は成長ビジネスではなく、最適ビジネスでの起業を勧めている。最適ビジネスとは、『自分にとって迷わず「始める」ことができ』、『はじめた以上は、途中で投げ出さずに「続ける」ことができ』、『その仕事を続けていれば自分が着実に「成長する」ことができ』るビジネスであるとしている。

ビジネスの規模については生業、家業、事業の3つに区分し、起業の輪郭をはっきりさせている。そのうえで、『「具体性のない妄想」から「実現可能な計画」へ』とする章立ての中で、計画書の作成手順を詳しく解説している。『プランを深める6W1H』や『ニーズに対応する「七つのdo」』などの順序立て、区分は著者の真骨頂である。

巻末には起業家成功度自己チェックが示されている。著者は本書を読む前に、同自己チェックをすることを希望する。確かに、同自己チェックを行うことにより、本書で理解したい内容をあらかじめ確認することができる。同書を読む際には、著者の勧めに従うことがふさわしい。 本書は平成10年の初版のままである。その間、状況は大きく変わっている。改定版の出版が望まれるところである。

起業は、経済を最も基礎的な部分から活性化する役割を果たすものと考える。起業意欲を高め、起業機会を提供し、起業実施へと導く。中小企業診断士の皆さんには、これからの時代に、起業に関わるコンサルティングを進めることが求められている。

『小さな起業家』

『小さな起業家』

デビッド・レヴィ[著]
A5版・142ページ
定価:1000円(税込)
ぶんか社刊 http://www.bunkasha.co.jp/
『起業 成功を決める準備』

『起業 成功を決める準備』

小久保達[著]
新書・192ページ
定価:円(税込)
丸善株式会社刊 http://pub.maruzen.co.jp/