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地域から始まる新たなビジネス

文:高木 麻未

『コミュニティビジネス』

地域発のビジネス

現在、さまざまな社会サービスの業務が民間に移行されています。本書の著者は、コミュニティビジネスを、地域住民がよい意味で企業的経営感覚を持ち、生活者意識と市民意識のもとに活動する「住民主体の地域事業」と定義し、地域コミュニティ内の問題解決と生活の質の向上を目指す「地域コミュニティの元気づくり」をビジネスを通じて実現することであると述べています。
 日本のみならず、世界各地のさまざまな状況下にある地域コミュニティにおいて、住民主導による「コミュニティビジネス」という基本的アイデアが重視されています。合わせて、それぞれの地域独自の問題に取り組んでいく中で、「コミュニティビジネス」は地域の特性に合致した多様なビジネス展開が求められているのが現状だと言えるでしょう。

本書は、「コミュニティビジネス」を立ち上げ、運営している多くの事例を、国内・国外から紹介し、「コミュニティビジネス」の現状を取り上げています。

コミュニティビジネスの特徴

本書では、コミュニティビジネスの特徴として、以下の4点があげられています。
(1)住民主体の地域密着ビジネスである
(2)その地域コミュニティのサイズにあった規模があるという考え方
(3)営利追求ビジネスとボランティア活動の中間に位置している
(4)世界的な視野のもとに自分たちの情報をオープンにして地域で行動を起こす。

日本の事例

市民団体が行うコミュニティビジネスにおいて、どのように資金を調達し、何人で経営していくのか、自分たちの強みは何か、マーケティングをどうするか、どのように売るか、などのビジネス戦略が非常に重要でありながら、この視点が弱く、確立されていないと指摘されています。これらの点を踏まえ、起業時に先進的なビジネス戦略を有している日本各地の事例が紹介されています。パン屋の開業資金の不足を補うために「パン債(利子を店のパンで支払う)」と発行する、消臭繊維による介護用品の商品化など、多くの独創的な発想が示されています。

海外の事例

欧米諸国において、「コミュニティビジネス」とほぼ同一のビジネスモデルが70年代~80年代にかけて起こりはじめました。本書では、民主主義と地方自治の伝統が根付いているてんなど、日本と似通った社会的状況であるイギリスの住民主導による地域経営システムの事例を詳細に報告しています。

イギリス・スコットランドで発達したコミュニティビジネスは、「地域コミュニティによって所有される企業」であり、NPO的な要素と企業経営的な要素を併せ持つ独特の組織構造からなっています。事例では、スコットランドのコミュニティビジネスの運営構造や利益の行方、また活動に伴う問題点や課題などが取り上げられています。

コミュニティビジネスの支援

本書では、コミュニティビジネスの特徴や事例を紹介に加え、コミュニティビジネスの育成・支援として、インターミディアリーが必要不可欠であることを指摘しています。インターミディアリーとは、行政や企業と協調しながら、地域コミュニティの問題解決などをめざす、仲介支援機能だといえます。本書では、アメリカにおけるインターミディアリーを紹介し、それを参考にしながらも日本で求められる位置づけや機能を考慮した上での設立を提言しています。

また、日本でのインターミディアリー設立に向けて、著者が発足させたインターミディアリー設立準備会についても取り上げており、コミュニティビジネス支援のためのアイデアが実験から起業支援スキームの開発までが紹介されています。

地域の活性化をめざして

本書で一貫して主張されていることは、コミュニティビジネスによる地域の活性化です。
新しいまちづくり活動という観点から、観光地や商業地で実践されている具体例が紹介されています。

本書では、コミュニティビジネスとはどのような形態のビジネスモデルであるのか、また、数多くの事例を用いて、コミュニティビジネスの実際の運営とその問題点、さらには今後の発展について論じられています。本書で取り上げられている豊富な事例は、コミュニティビジネスという形式のみならず、さまざまな形態の企業や組織を運営していく上で、大変多くの示唆を与えてくれるでしょう。

『コミュニティビジネス』

『コミュニティビジネス』

細内信孝[著]
四六版・200ページ
定価:2100円(税込)
中央大学出版 http://www2.chuo-u.ac.jp/up/