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実戦で役立つ経営分析の基礎

文:井海 宏通(中小企業診断士)

『決定版 ほんとうにわかる経営分析』

コンサルに不可欠な財務分析

中小企業に対する経営支援は、最初にその企業の経営状況を分析することから始まります。その際、特に重要なのが財務分析です。なぜなら、すべての提案は収益性と資金繰りに絡んでくるからで、財務諸表の分析なしにまともな提案・助言をすることは不可能です。

われわれコンサルタントは、数字を通して経営上の問題を見極めます。場合によっては経営者の性格までわかることもあります。このことを「数字と会話する」と表現した人もいますが、1つひとつの数字の向こう側に企業の真の姿を見ていくわけです。うすっぺらな分析ではコンサルにはならないと言っても過言ではありません。

経営分析の基礎を分かりやすく解説

本書は銀行出身の公認会計士が書いた本で、非常に読みやすいのが特徴です。また、実践の場で通用するだけの基礎がすべて網羅されていますので、経営分析の現場経験が少ない人にとっては入口としてちょうど良い内容となっています。

数ある経営分析の解説書と全く異なるのは、筆者の現場経験が踏まえられている点です。決算書が粉飾または経理操作されたものを見抜くことに力点を置いています。また、キャッシュフローや付加価値利益といった、企業の本当の姿を見抜くうえで大切な"ものさし"についても詳述されています。

流れとしては、損益計算書から収益性を分析するところから始まり、貸借対照表、損益分岐点、キャッシュフローの分析へと入っていきます。ところどころに現場でしか知り得ない生の情報が埋め込まれているのが面白いところです。その後、資金の調達と運用のバランス、資金繰表、資金運用表、キャッシュフロー計算書へと進んでいきます。最後は粉飾決算を見抜くケーススタディです。とにかく、スラスラ読めて実務に必要な知識をストレスなく習得することができます。

ここで、筆者が経営分析において重視しているポイントを3つ紹介します。

  1. 短期的には収益性と資金繰りを同時に追求することが難しいが、長期的には、収益性が上がれば資金繰りもうまくいく。
  2. 企業から提出される財務諸表などをそのまま信じない。
  3. その企業を実際に訪ねて、トイレを借りる。

これから診断士を目指す人にもオススメ

中小企業診断士を目指して勉強中の方には、ぜひ、本書を読みこんでいただきたいと思います。普段から決算書を目にする仕事をしている人以外は、財務が分からずに苦労する人が多いと思います。私も数年前はその一人でしたが、本書に助けられて中小企業診断士の第2次試験をクリアすることができました。その意味で、個人的に感慨深い本でもあります。

もちろん、自社や取引先の経営状態を分析するのに大いに役立ちますので、中小企業の経営者にも読んでいただきたい良書です。

『決定版 ほんとうにわかる経営分析』

『決定版 ほんとうにわかる経営分析』

高田 直芳[著]
A5版・363ページ
定価:1,890円(税込)
PHPエディターズ・グループ刊 http://www.peg.co.jp/