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熱いハートと冷静な頭脳で目標を達成する

文:飯田 順(中小企業診断士)

清宮克幸著『究極の勝利 ULTIMATE CRUSH 最強の組織とリーダーシップ論』

サッカー人気に押され、最近、やや影の薄いラグビー。しかし、選手同士が体と体をぶつけ合い、ボールをつなぐ姿に感動を覚える方は多いのではないでしょうか。著者は早稲田大学ラグビー蹴球部の監督として、同部を3度の優勝(大学日本一)に導いた、ラグビー界のカリスマ的指導者です。体格・素質で上回る相手に立ち向かう時、チームに情熱を吹き込み、創意工夫を重ねながら勝利を目指す様子が描かれています。

低迷からの脱却

著者が選手として大学日本一に輝いた1990年以降、チームは長く優勝から遠ざかります。選手達は華麗にボールを展開する伝統的なスタイルを追い求め、時には夜中まで練習を続けました。ボールを回す"サインプレー"の数は、100を超えたといいます。しかし、それでも勝てませんでした。

そうした時期に著者は監督に就任し、改革を敢行します。チーム全体の目標を明確化するとともに、不必要な練習メニューを廃し、時間を大幅に短縮しました。一方、プレーのミスは細かくチェックし、原因を突き止めた上で対応策をアドバイスする指導方法を浸透させていきます。また、選手・スタッフの役割分担を明確にすると同時に、一人ひとりとの面談の機会を設け、具体的な目標を設定するなど、組織の改革にも乗り出します。その結果、就任2年目の2003年には、大学日本一に返り咲きました。

兜の緒を締め続ける

同部は常に優勝を争うチームに変貌を遂げます。毎年、主力選手が卒業する学生スポーツにあって、抜群の成績を継続して残す秘訣はどこにあるのでしょうか。著者は、組織・体制を改革し、プレーをする環境を整えるだけでなく、チーム・個人が、常にチャレンジ精神を持ち続けることが大事であると説きます。理論的なトレーニングに加え、時には非合理ともいえる体力の限界まで追い込む練習に耐え抜くことで、精神的な強さを養い、極限状態で相手を上回る気力や仲間との固い信頼関係が培われるとしています。科学的な要素と非科学的な要素を融合させることによって組織を活性化し、選手のモチベーションを高め、さらなる成長に導いている様子が伺えます。

勝つ仕組みを作り上げる

監督就任当初、著者の改革は軋轢を生み、順調には進みませんでした。しかし、固い信念を持ち、誰よりも真剣に勝利に向けた取り組みを続けることで、次第に選手やチームスタッフ、さらには大学関係者やファンなど、周囲の人々を巻き込んでいきます。本著のタイトル"究極の勝利 ULTIMATE CRUSH"が全員の目標として共有化され、勝つための仕組みが形作られていくのがわかります。

"勝利"を"顧客満足""利益"に置き換えればどうでしょう。組織・個人の成長を図るための目標の設定や具体策の提示、ピンチにも動じない心の持ち方など、企業を経営・支援する場面で、大いに示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

『究極の勝利ULTIMATE CRUSH 最強の組織とリーダーシップ論』

『究極の勝利ULTIMATE CRUSH 最強の組織とリーダーシップ論』

清宮克幸[著]
文庫判・318ページ
定価:760円(税込)
講談社刊(講談社+α文庫) http://www.kodansha.co.jp/