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なぜ自社の売上が伸びないのか?

文;井海 宏通(中小企業診断士)

コトラー『マーケティング10の大罪』

中小企業のマーケティングの実状

中小企業のマーケティングの実状と言えば、非常に心もとないというのが実感です。そもそもマーケティングの概念を知らず、とにかく売れれば何でも良いと考える企業は相変わらず多いですし、マーケティングを理解していると言いながら実は自己流の解釈であまり分かっていない企業も少なくありません。

例を挙げれば、マーケティングの要素として4P(製品、価格、流通、販売促進)がありますが、そのうちの販売促進しか考えてなく"1P"になっているケース。また、「差別化が大切だ」と言いながら、顧客の目から見れば他社製品と何の違いもなく、差別化が意味をなしていないケース。こういった事例には事欠きません。

マーケティングの知識はある程度持っているものの、理解が中途半端なるがゆえにモレがあり、今一つ実績が伸びない企業にとって、本書は非常に参考になるでしょう。

大切なポイントを分かりやすく解説

マーケティングの大家であるコトラーが、マーケティングのコンセプトを10の切り口から分かりやすく解説したのが本書です。その切り口とは、(1)市場、(2)顧客、(3)競合、(4)利害関係者、(5)機会、(6)計画、(7)製品、(8)コミュニケーション、(9)組織、(10)技術です。そのそれぞれについて、マーケティングで失敗している企業が陥っている落とし穴とその解決策が簡潔にまとめられています。これを読めば、自社のマーケティング戦略のどこが弱いのか、がすぐに確認できます。特に、計画、組織、利害関係者の3つは、非常に大切な要素でありながら多くの中小企業で軽視されているのではないでしょうか。

本書をしっかりと読めば、マーケティングとは何かが再認識でき、営業(セールス)と全く違うことが理解できます。

戦略のヌケを見つけるチェックリスト

マーケティングについては、知識の量よりも本質の理解が大切です。さらに、観念の遊戯で終わらせず、しっかりと実践していくことがもっと重要です。本書はスラスラと読めますので忙しい人にもお勧めです。内容もさほど難しくはありません。

また、本書は、自社のマーケティング活動に対するチェックリストとして使用できます。大企業でも100点満点のケースは雨夜の星です。ましてや、中小企業では、できていない所がいくつもあるはずです。そして、売上が思ったほど伸びないのは、多くの場合、そこに原因があります。

本格的なマーケティング手法の習得を期待して本書を手に取る人は、テクニカルな内容が少ないことを残念に思うかもしれません。しかし、成果を出すための基本的なポイントはほぼ網羅されています。あとは、本書の内容を自分なりに加工するのが良いでしょう。まとめることで理解が深まり、ただの"知識"が"使いこなせる武器"に昇華していきます。

『マーケティング10の大罪』

『マーケティング10の大罪』

フィリップ・コトラー[著]/恩蔵直人[監訳]大川修二[訳]
四六判上製・208ページ
定価:1,890円(税込)
東洋経済新報社刊 http://www.toyokeizai.co.jp/