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経営者(+コンサルタント)の皆さん、自分の「しつけ」ができていますか?

文:井上 真伯(中小企業診断士)

森信三著『真理は現実のただ中にあり』を読んで

昔と違うから仕方がないよ

企業において、人を育てることは、今も昔も極めて重要なテーマです。しかし、企業が「人財」を求めるべく、ありとあらゆる手段を使って「人材」を確保し、相応の労力と経営資源を投下して育てているにもかかわらず、早々に辞めてしまったり、「人在」に留まっているという話を聞くことがあります。

そういった話を受けて「どうしてうまくいかないのでしょうか」と尋ねてみますと、「若い人の気質は昔と違うから...」とか「世の中が変わったから仕方ない」という答えが返ってきます。しかし、本当に「若い人の気質は昔と違い」「世の中が変わったから仕方ない」と割り切って良いのでしょうか。

では、昔の若者はどうなのか

本書は、森信三(もり・のぶぞう)氏が、昭和30年から昭和53年にかけて各地の小中学校から大学までの学生や各種学校の教員向けに行った講話をまとめた『森信三講演集』(昭和62年)から、さらに精選した10編の講話を収録したものです。

最初に掲載されている講話は、昭和38年に島根県浜田市の小学5年生に向けて行ったもので、この時に講話を聞いた方は、現在52~53歳の「昔の若者」ということになります。小学生相手の講話ゆえ、非常にわかりやすい言葉を使って話して(記して)います。

しかし、著者は相手を子供扱いするどころか、一人前の聴き手として扱い、人生に必要な「3つの人生の肥やし」を説いているのです。このくだりを読むと、自分はこれができているだろうかと、背中に電流が走り、社会の厳しさをあらためて感じる方が多いはずです。

人の上に立つ「昔の若者」が心すべきこと

では、経営者となった「昔の若者」が何をなすべきなのでしょうか。岡崎市新任教員研修会での講話における著者の言葉を、経営者の立場で聞くと、以下のようになるでしょう。

  • 教育とはお説教をすることではない
  • 人の長たるものは、見えないところで僕(しもべ)になり、社員の尻ぬぐいをする
  • 課題をきちんとやっていたら、時々褒めるだけで良い
  • 軌道に乗るまでは、(相対的に)できの良い者から数名をいつも褒めてやる
  • 経営者として真っ先に大事なことは、社員を知ることである

言行一致が大前提

上で示したことは「言うは易し」で「もうやってるよ」という方も多いと思います。しかし、社員はトップの一挙手一投足をしっかり見ているものです。社長の「お説教」からでなく「現実のただ中」に真理を捉えているのです。本書は、この真理を知り、実践したいという経営者の方はもちろん、老若男女を問わずお読みいただきたい一冊です。

他人様から「センセイ」と呼ばれることに麻痺しつつある経営コンサルタントを業とする私にとって、また「社長」と呼ばれて持ち上げられることの多い経営者の方にとっても、本書122ページ中段のくだりは、常に心しておきたい言葉のひとつです。

『講話録・真理は現実のただ中にあり』

『講話録・真理は現実のただ中にあり』

森信三[著]
四六判・297ページ
定価:1,680円(税込)
致知出版社刊 http://www.chichi.co.jp/