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社員の「主体性」を引き出すために

文:岩渕 晋明(中小企業診断士)

柴田昌治著『なぜ社員はやる気をなくしているのか』

終身雇用制、年功賃金など日本企業の特徴と云われていたものは大きく変化しつつあります。新卒で就職した人の30%は3年以内に会社をやめ、成果主義が当たり前になり、企業業績は過去最高でも賃金は上がらなくなっています。

2007年問題といわれ世代交代が進んでいます。日本の高度成長を支えてきた原動力は一体何だったのでしょうか、もちろん給与だけではなかったはずです。

組織を構成するメンバーに最大限の力を発揮させるためには、どうすればよいのか。これは、企業のみならず、スポーツなどチームで動く場合には必ず発生してくる永遠のテーマです。

本書では、「組織を進化させたり退化させたりしていく価値観の役割」「人の内発的動機はどのようにすれば引き出すことができるか」の2つのテーマを切り口に、内からわきあがるやる気を取り戻す方法を提案しています。

なぜ社員は主体性をなくしているのか

最近の某新聞が行った20代へのアンケートで、休日は出かけず掃除や片づけを行う、お酒はあまり飲まないという若者像が出てきています。

本書では会社へのロイヤリティの高さや仕事への原動力には社員同士のコミュニケーションの濃さが寄与していたとしています。メールの普及により会話などのコミュニケーションが減り、上司とのアフターファイブの付き合いも激減していることがやる気や主体性をなくしている一因としています。

また、組織風土の面からは、情報の共有がなされず、風通しが悪いと、部門間での連携の悪さ、問題が上層部に伝わりにくいなどの問題を引き起こし、個人としてはがんばっていても、全体としての効率があがらないため、社員の士気があがらないとしています。

閉塞感を打ち破る

自ら進んで仕事をやる、つまり、内発的動機を引き出すのは、同僚、上司、部下と夢を共有できる経営、つまり、夢を語り合い、しかも、事実に根ざし、「めざすもの」が何か見つけ出すことができてはじめて、やる気が引き出されていくとしています。

オフサイトミーティング

つまり、問題解決のポイントは「対話」であり、そういう場が必要になります。その1つとして、オフサイトミーティングを提唱しています。「信頼にもとづく対話から問題を発見し、知恵を生み出す話し合いの場」であり、リラックスした雰囲気の中でお互いの意見を聴き合う場をつくるということです。

スポンサーシップ

内発的動機を引き出すためには、強いリーダーシップは逆効果を生むとして、スポンサーシップを提唱しています。スポンサーシップはリーダーシップの一種とし、ただ引っ張っていくだけでなく、部下が主役になりうる機会を演出することで「質の高いチームワーク」をつくり出していくリーダーシップと定義しています。

つまり、押しつけではなく、個々のやる気を引き出す、個性を伸ばしていくリーダーシップということがいえるでしょうか。

職場を選ぶ基準として「働きがい」をあげる人が一番多いといわれます。成果に応じて報酬をもらうという基準は一番ではなかったようです。働きがいとは、やりたいことを任せてもらうこと、つまり、本書で指摘する「主体性」を引き出すことではないでしょうか。

『なぜ社員はやる気をなくしているのか―働きがいを生むスポンサーシップ―』

『なぜ社員はやる気をなくしているのか―働きがいを生むスポンサーシップ―』

柴田昌治[著]
四六判上製・240ページ
定価:1,575円(税込)
日本経済新聞出版社刊 http://www.nikkei-bookdirect.com/bookdirect/