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深遠な問いに答える利益の物語

文:井海 宏通(中小企業診断士)

『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』

利益は求めるもの

利益が出ている企業と出ていない企業を比較してみると、高収益を誇っている企業は、利益が出てしかるべき事業モデルが構築されていることに気づきます。そして、その根底にあるのは"利益"に対する執念の違いです。

儲かっている企業は、どうすれば利益が出るのかを、経営者をはじめ、現場スタッフに至るまでがそれぞれの立場で考え抜き、実践しています。そして、"利益が出て当然"とまでは言いませんが、"利益が出やすく損をしにくい"事業のやり方をしています。その結果、業界の好況不況に関わらず収益をあげています。

一方で、儲かっていない企業は利益に対する探求心があまり強くありません。経営者自身が利益にあまり関心がない(名誉心から売上規模を追求したり、技術者として製品開発に没頭したりして、利益がそっちのけになっている)企業は、そもそもお金を稼げるわけがありませんし、経営者だけが利益に関心があっても、その他の人が利益に全く関心がなければ結果は同じです。

本書の序文に「今日の勝ち組企業は、社員一人ひとりに「利益」を説き始めています」の一節があります。利益は強く求めてこそ得られるものです。

23の利益モデルを学ぶ

『ザ・プロフィット』では、利益が生まれる仕組みをストーリー形式で解説されています。大企業デルモアの戦略企画部門で働くスティーブが、自社の業績落ち込みに悩んだ末、ビジネスで利益が生まれる仕組みを知り尽くした男、デビッド・チャオの門をたたき、教えを請うことになります。授業は23回。1回につき1つの利益モデルを学んでいきます。

顧客ソリューション利益モデル、製品ピラミッド利益モデル、利益増殖モデル、販売後利益モデル、などシンプルながらも奥が深いそれぞれの利益モデルについて、図を書いたり、適用される業界を挙げたり、関連文書を挙げたりしながら授業は展開されます。物語中では授業は毎週土曜日に行われますが、著者は週に1章くらいのペースでゆっくりと読むことを勧めています。それは、スラスラと読み流すのではなく、1つひとつの利益モデルをじっくりと理解しながら読むべき本として書かれているからです。

本質を理解し自社の成功パターンを見出す

本書の根底にある考え方は、「利益が生まれる仕組みは多種多様だが、企業がどこで利益を上げられるかを決めるのは顧客である」ということです。自らの顧客を知り、しっかりと見据えたうえで、「我々のビジネスにおいて、利益はどこで、どのように発生しているか」という問いを徹底的に考え抜くことが重要、とも説いています。利益に対する執念がなければ本書を読むことは出来ても、真意を受け止めることはできないでしょう。

利益モデルが23も挙げられていますので、ほとんどの企業にどれかが適用できます。当然、モデルはモデルであって原型のまま適用させることはできませんが、"基本形"を知っているのと知らないのとでは、自社なりの成功モデルを作り上げるうえで、精度が全く異なってきます。

主人公であるスティーブの気持ちになって本書を読み進めてみると、大きな収穫があることでしょう。

『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』

『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』

エイドリアン・J・スライウォツキー[著]/中川治子[訳]
四六判・304ページ
定価:1,680円(税込)
ダイヤモンド社刊 http://www.diamond.co.jp/