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中小企業が成長するための指南書

文:井海 宏通(中小企業診断士)

『新版 小さな会社にも活用できる!「バランス・スコアカード」の創り方』

創る側の目線で書かれた本

最初に強調しておきたいのは「非常に読みやすい」ということです。バランス・スコアカード関連の本は他にも何冊か読んではいますが、ここまで分かりやすい本は有りませんでした。経営者や中小企業診断士は基本的に多忙ですから、こういった点は重要です。

本書は2人の著者による共著ですが、前半は中小企業の社長が執筆しています。その社長がバランス・スコアカードの導入を決めた背景からはじまり、途中の経緯、苦労した点、成功の秘訣などを語っています。その後、導入を支援した中小企業診断士がバトンを引き継ぎ、事例を通して作成上のポイントを解説しています。

学者やコンサルタントが書いたバランス・スコアカードの本はたくさんありますが、導入者と支援者がタッグを組んで書いた本は珍しいのではないでしょうか。敢えて細かい理屈は追わず、経営の現場で活用することに焦点を絞っていることが、本書が分かりやすい大きな要因だと思います。

理論よりも実践を重視

バランス・スコアカードの概念自体はあまり難しくなく、関心を持っている経営者も多いでしょう。戦略マップ、4つの視点、重要成功要因、業績評価指標、アクションプランなどの枠組(フレームワーク)は、どの入門書にも載っていて、少し勉強した人ならたいていは知識として持っています。ところが、いざ導入する段階になってから戸惑う人が少なくありません。

大切なのはバランス・スコアカードの枠組自体ではなく、実際の経営に結びつけることです。ここがなかなか難しいところですが、入門書では得てして概念やツールの説明に留まり、使うところまでは踏み込んでいないことが少なくありません。反対に、専門書は理論中心で事例も大企業中心であるため、中小企業としては敷居が高くなっています。

その点、本書では「小さな会社」に目線を合わせ、中小企業の経営戦略にバランス・スコアカードを組み込んでしまっています。具体的な流れとしては、最初に3年後の数値目標(あるべき姿)を明確にした上で、ビジョン策定、SWOT分析の後、戦略マップ、4つの視点へと落とし込む、といった具合です。また、「トップダウンとボトムアップのどちらが良いのか?」「全社と部門別のバランス・スコアカードの兼ね合いはどうすべきか?」「絵に描いた餅に終わらずに実践されるにはどうすればいいのか?」等、多くの人がぶつかる疑問に対しても、分かりやすく丁寧に答えてくれています。

読んですぐに活用できる

後半は活用事例集です。本書の旧版では10社の事例が挙げられていましたが、新版では3社に絞り込み、その分1件あたりの解説量が増えています。バランス・スコアカードの作成結果だけでなく、そこに至るプロセス(実はこちらの方が重要)が詳細に記述されていますので、4つの視点や重要成功要因を探し出す際のヒントになります。また、バランス・スコアカードを活用した戦略策定支援ツール「戦略創造」も紹介されていますので、関心のある方は試してみるのも良いでしょう。

これからバランス・スコアカードに取り組んでみたい、という方には「入り口」としてお勧めです。

『新版 小さな会社にも活用できる!「バランス・スコアカード」の創り方』

『新版 小さな会社にも活用できる!「バランス・スコアカード」の創り方』

伊藤一彦、上宮克己[著]
A5版・187ページ
定価:1,575円(税込)
同友館刊 http://www.doyukan.co.jp/