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組織の成功要因は何か?

文:服部 至道(中小企業診断士)

映画「陽はまた昇る」をケーススタディとして読み解く

その組織の成功要因は何か? コンサルティング現場で考えることを、この映画を通して気軽に体験することができました。

あらすじ

ビクターVHSを開発し、ベータとの開発競争に打ち勝ったリーダーの実話を映画化した作品です。

ある日開発部署にいた加賀谷部長(西田敏行)は、不採算事業部工場の事業部長へ昇格します。しかし、それは会社としては左遷部署で、事実上のリストラでした。工場ではリストラ寸前の社員と怒号の嵐。気持ちは沈みかけますが、VHS開発を掲げ奮い立ちます。リストラ予定の社員をやる気にし、組織を立て直し、VHS開発に漕ぎ着け、販売への執念で会社を成功に導きます。

あらすじはごくごく知られているVHS対ベータの話です。おもしろいのは、なぜ成功できたのかということが描かれていることです。その理由は直接的に述べられていません。見れば様々な解釈ができるでしょう。そこで、組織の事例として考察してみました。なぜ成功できたのか、観た人それぞれが解釈できておもしろいと思います。

組織としての成功の要因

1)リーダーシップ(人の魅力)
 「つめたい会社をあたたかくするにはひとつの方法がある。人の名前を覚えることだ。」(『人を動かす』Dカーネギーより)
 加賀谷事業部長はまず、社員の名前をすべて覚えます。次に、現場へ出て一人ひとりと対話し、信頼を得ます。納得するまで話し合って社員をやる気にさせます。現場に出る、社員の話を自分のことのように親身になって聞く。よく当然のこととして言われることですが、できそうでできないことを加賀谷事業部長は実行します。
 そして、決してあきらめない。その愚直なまでの一生懸命さが社員に伝わります。一方で、状況に応じてリーダーシップを変化させる賢さも備えています。独善的にリーダーシップを発揮したり、民主的に解決したり、気づいたときには社員が自発的になっているというような参加型のリーダーシップを発揮したりと、状況に応じて変化させています。
2)組織
 加賀谷事業部長は、事業部制という固定的な組織の枠組みにとらわれることなく柔軟に組織を組み替えます。開発担当者が営業をしたり、職人工が開発をしたり。環境に応じた創発的な協業型ネットワーク組織を作り出していきます。
3)モチベーション
 「考えてみてください。全世界の家庭に自分たちが作ったビデオレコーダーがあることを。」と加賀谷事業部長は熱く社員に説きます。自己実現と社会貢献と会社の目標を一致させているのです。ただ自分の会社が、ただ自分がよければいいというのではなく、社員は会社で社会に対する夢を描きだします。

以上の点から考えてみました。みなさんだったらどういう解釈をするでしょうか。

リーダーの思想

映画での加賀谷事業部長は、温かみのあるリーダーとして描かれていますが、実際は軍人出身で厳格なリーダーであったという話が裏話としてあります。なぜ監督は、実際とは違うリーダー像を描き出したのでしょうか。いつの時代にも変わらずにあるリーダーの理想、私には、これを描き出したかったからだと思えるのです。

No Images

『陽はまた昇る』(配給 東映2002年)

DVD販売元 ビクターエンタテインメント
監督 佐々部清
出演 西田敏行、渡辺謙、緒方直人ほか