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チンギス汗に見る組織改革

文:岩渕 晋明(中小企業診断士)

森村誠一著『地果て海尽きるまで 小説チンギス汗』

チンギスハンの人生そのものが戦いの連続であり、その歴史をなぞりながらチンギスハンとその集団が成長する過程が描かれています。

戦いだけでなく、チンギスハンが持っていた、「地果て、海尽きるところまで」を求める大きな目的、それを達成するための強い意志、そして、しがらみにこだわらない組織改革と柔軟な組織運営を果断に行ったことがモンゴル帝国成立の底流に流れています。

原点は部族の幸せと安全を守ること

チンギスハンはモンゴルの族長の長男として生まれます。将来を約束されていたはずですが、13歳の時に父親を毒殺されてしまいます。一家9人は部族から見放され、その日の食糧にも困るほど困窮を極めます。他の部族からの襲撃におびえながら暮らす生活に陥りますが、ここにチンギスハンの原点が形成されます。戦いは自分の部族を守るために戦うところからはじまります。

いつ消えてもおかしくない零細な集団が、戦いを重ねるごとに大きな集団になり、ついにはモンゴルを統一し、アジアからヨーロッパにまたがる大帝国をつくりあげていきます。

実力主義と組織化

この時代モンゴルでは血縁や年齢を重視する年功序列制が当たり前でした。しかし、チンギスハンは実力を重視し、若くても能力がある者をどんどん抜擢していきます。いわば実力主義です。そのようなリーダーに若い世代、力あるものたちは共感し、チンギスハンの陣営に有能な人財が集まってくるようになります。

また、遊牧民にとって戦いに参加することは、命をかけて自分の財産を増やす事業でした。財産は自分で奪い取るものであり、戦いの帰趨が判明してくると、戦闘より略奪が中心となります。場合によっては命令より自分の利益が優先する個の集団でした。

ここでもチンギスハンは改革を行います。略奪を禁止し、戦利品はチンギスハンが公平に分配する仕組みにします。これにより戦いは組織化されチンギスハンの軍団は明確な指揮命令系統で動く組織に変化します。

装備の近代化

チンギスハンの戦いの目的は富を得ることではなく、勝ち続けることでした。当時中国を支配していた金国と協力してタタール族と戦った時には、戦場で金軍の進んだ武器を集めさせます。異民族の優れた武器を買い求め、装備の近代化を推し進めていきます。富を蓄えていく他の族長とは異なり、勝つための投資を行っていったのです。

グローバル主義

チンギスハンには冷酷なイメージがついてまわりますが、根底には「人間は平等」という考え方がありました。次々と異民族を征服していきますが、人種や慣習、宗教に関わらず有能な人材を登用していきます。それぞれの文化を認め、優れたものはどんどん取り入れていくという柔軟な発想を持っていました。

戦いに勝ち、組織の規模が大きくなるにつれて、兵士から文官へ、軍令から法令に、家畜から貨幣へと必要とされるものは変化していきます。チンギスハンは、そのたびに的確に判断を下し続けたといえます。

大きな目的、強い意志、人事・組織改革、再投資、柔軟な姿勢など経営者に求められるものに共通するのではないでしょうか。

『地果て海尽きるまで 小説チンギス汗』(上) 『地果て海尽きるまで 小説チンギス汗』(下)

『地果て海尽きるまで 小説チンギス汗』(上)(下)

森村誠一[著]
文庫版 上巻453ページ/下巻418ページ
定価(上下巻各):880円(税込)
角川春樹事務所刊(ハルキ文庫) http://www.kadokawaharuki.co.jp/