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人をその気にさせるコミュニケーション

文:高橋 美紀(中小企業診断士)

碧野圭著『辞めない理由』を読んで

ワーキングマザーゆえの苦悩?

本書の主人公は七瀬和美。37歳、大手出版社の女性誌副編集長。家族は夫と小学1年生の娘。職場では若い男性や独身女性社員から足を引っ張られ、挙句の果てに左遷。帰宅すれば娘が学校でトラブルを起こし、担任の先生や娘の友達の親から「だから働く母親は...」と軽蔑される始末。そんな彼女が、左遷先の新雑誌準備室で新雑誌を企画し、成功を収める、というストーリーです。

ワーキングマザーの苦悩に焦点を当てていることから、同じ立場で働く女性の共感を得ているようですが、和美が苦労した理由はそれだけではなさそうです。

自分一人で頑張ってもダメ

副編集長時代の和美は、「私はこんなに苦労しているのに、なぜ周りは分かってくれないの?」と言わんばかりの態度でした。職場では、「子持ちの女性だからと軽く見られたくない」という思いで精一杯頑張っていたのでしょうが、人前でヒステリックに部下を怒鳴りつけたり、同僚の悪口を社内外に対して言ったりしていては、周囲からの信頼は得られないでしょう。また、娘の担任の先生にも、「苦手なタイプ」と先入観を持ち、相手の言動に過剰反応しています。和美は、「皆が非協力的」と嘆いていますが、実際に和美自ら相手を「その気」にさせるようなコミュニケーションを取ろうとしたのか疑問が残ります。

左遷先でも、当初は落ちこぼれ集団だと見下し、自分一人で実績をあげようとしていました。しかし、新たな目標の実現の過程で新雑誌準備室の面々が意外な人脈や才能を持っていることを知り、同僚や先輩ワーキングマザーの応援を受けながら、相手を信頼し協力しあうことの心地良さを実感していきます。

アサーティブなコミュニケーションを

当初、和美は、アサーティブなコミュニケーション、すなわち「相手の思いを受け入れつつ、自分の気持ちを率直に表現すること」ができていませんでした。和美の言動は、あるときは感情に任せて攻撃的に命令するアグレッシブなものであり、またあるときは言いたいことを我慢し、孤独を深めるノンアサーティブなものでした。

感情に支配されているだけでは、周囲は動きません。他人を攻撃的にねじ伏せたり、非主張的に他人に合わせたりするのではなく、お互いが歩み寄る余地を見出すよう努力することが大切です。ときには自分の意見を押し通す必要もありますが、他人の意見に丁寧に耳を傾けることができなければ、自分の意見も聴いてもらえないのではないでしょうか。

「最近、周囲の仲間とコミュニケーションが上手く取れていない」と感じたら、少しだけ自分を振り返ってみてください。どうしたら自分の本当の気持ちが伝わるか考えていますか? 相手の本心を汲み取ろうとしていますか? そして自分自身ネガティブ志向になっていませんか? 難しいことですが、ほんの少し意識することで、相手をその気にさせるコミュニケーションに近づけるはず。そしてそれはきっと、新たな成功への第一歩となるでしょう。和美が見事に復活を遂げたように...。

『辞めない理由』

『辞めない理由』

碧野圭[著]
四六判・352ページ
定価:1,365 円(税込)
PARCO出版 http://www.parco-publishing.jp/
公式サイト http://homepage2.nifty.com/yamenairiyuu/