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社長さん、プロの経営者になろう!

文:加藤 毅(中小企業診断士)

『建設業 残された選択肢』を読んで

プロの経営者になれ

建設業は安定的で競争の少ない業界でした。好況時には民需、不況時には官需という景況に左右されづらい面がありました。また、長期にわたり共同体的な分配市場でした。ゼネコンを頂点とするピラミッド構造のもと、業界内の付き合いが何よりも優先されていました。

しかし政府の財政悪化が進むにつれ、官需=公共事業は減っています。都市部は景気が持ち直しつつあり、民間工事も期待できます。しかし地方では、まだそれを望める段階にはありません。建設業界はかつてないほど縮小されていますが、さらに縮小が進むことが予想されています。地方の中小建設業は壊滅状態、瀕死の重症にあるといえます。

「建設業 残された選択肢」では、地方の中小建設業が生き残るためには何をすべきかを示唆しています。

まず経営者に「プロの経営者」になることを説きます。どんぶり勘定からマネジメントへの変身、家族経営からの脱却、営業力の強化、経営計画の策定。経営者には当然求められる姿勢やスキルの必要性を解説しています。いままでは建設業には経営力が培われなかった、むしろ培う必要すらなかった時代といえます。しかしその時代は終わりました。建設業の経営者も、意識を変革して「プロの経営者」になる必要があるのです。

改善だけでは済まされない現実

業界全体が縮小していくなかで、すべての企業が生き残ることは不可能です。本書は他社との戦略的合併、他分野への進出などを「残された選択肢」として提示しています。しかし「残された選択肢」すら取れない企業は、ますます増えていくことは明白です。

本書ではその現実から目をそむけてはいません。「会社をきちんと死なせることは、個人として生きていくために重要」と説き、会社の清算も選択肢の1つとしてあげています。

中小企業診断士の使命とは

かつては「就業者の10人に1人は建設業」といわれました。建設業は日本の基幹産業として位置づけられていました。現在、就業者数も事業所数も減少が止まりません。それでも建設業が日本の基幹産業であることに変わりはありません。土木、建築ともに建設業が健全な形で復興することは、日本全体の課題といえます。

建設業というと、大手ゼネコンに目がいきがちですが、根底を担うのは中小の建設会社や個人事業主です。独立した事業体であるならば自己責任は当然ですが、やはり外部環境の変化が急すぎた観は否めません。

本書で強く主張されているのは、建設会社の経営力の向上です。私たち中小企業診断士の活躍すべきフィールドであるといえます。業界独特の構造もあり、建設業界の見識がない中小企業診断士には参入しづらいのは確かです。しかし、私たち中小企業診断士の使命を考えれば、それを克服して業界の復興のために貢献すべきではないか。そんな課題を突きつけられた一冊でした。

『建設業 残された選択肢』

『建設業 残された選択肢』

―ホンモノの経営、してますか
建設支援リーグ 米田 雅子[編著]
A5判・221ページ
定価:2,100円(税込)
同友館刊 http://www.doyukan.co.jp/