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質量ともに類を見ない内容を誇るベンチャー論の基本書

文:平村 一紀(中小企業診断士)

ティモンズ著『ベンチャー創造の理論と戦略』を読む

ベンチャー企業の創出にコミットした全体構成

第1部から第5部までのテーマはそれぞれ、起業機会、創業経営者、必要資源、ベンチャー企業の財務戦略、スタートアップおよびその後、という展開になっています。構成そのものがベンチャー企業の立ち上げから軌道に乗せるまでのステップそのものとなっており、それは各部の中の章立てでも同様です。例えば、第2部の創業経営者をみると、まず起業家精神について触れて、次に経営チームのあり方を述べ、最後に起業家の倫理について説いています。

「起業機会の探索から資金調達までの実践的方法」というサブタイトルに表されているように理論の体系化にとどまらず、現実の経済社会でベンチャー企業の創出することに対してコミットした内容となっているのです。本書全体を通し、著者であるバブソン大学教授のジェフリー・A・ティモンズ氏が、ベンチャー企業の創出に対し、どれほどこだわりを持っていたかを読み取ることができるでしょう。

メッセージ性あふれる用語の定義

「"アントレプレナーシップ"とは何も無いところから価値を創造する過程である」という起業家精神についての表現は、日本でも多くの成功起業家が好んで引用しているものです。この"アントレプレナーシップ"の定義に始まり、ベンチャーを理解するために必要なキーワードに関して、随所で明確な定義がなされています。

その表現は情熱・確信あふれるものとなっており、ここに本書の特長があると考えられます。読みすすめる過程で、ベンチャー用語の定義そのものにメッセージがこめられていることを感じるでしょう。ベンチャー企業へ関与している人であれば、自らが奮い立たされたり、活動の意義を改めて再認識したりなどといった動機づけの効果も期待できる内容です。

診断士として起業を目指す人や起業家支援に関わる診断士へ

ベンチャー企業やベンチャー企業経営者についての分析データやケース紹介が数多く紹介されています。成功事例の特性などに加えて、失敗事例のデータについても、多くのリサーチ結果が挙げられているのです。データや事例の内容は質・量とも他のベンチャー論の著書に類を見ないものとなっていて、これがベンチャー論のバイブルといわれる所以のひとつでしょう。

以上のような理由で、本書を推薦します。特に、中小企業診断士として起業を目指す人や起業家支援に関わる中小企業診断士には目を通してもらいたい著書です。600ページを超えるボリュームで価格設定も7,800円とやや高めではありますが、その内容は"噛めば噛むほど味わい深い"ものであり、十二分に価値に見合うものと言えます。

『ベンチャー創造の理論と戦略』

『ベンチャー創造の理論と戦略』

―起業機会探索から資金調達までの実践的方法論
ジェフリー・A ティモンズ[著]
千本 倖生・金井 信次[訳]
A5上製・672ページ
定価8,190円(税込)
ダイヤモンド社刊 http://book.diamond.co.jp/