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「官僚と闘う男」はいかに生まれたか。

文:加藤 毅(中小企業診断士)

小倉昌男著『経営はロマンだ!』から倫理と論理を学ぶ

宅急便の生みの親

日本経済新聞の「私の履歴書」を楽しみにしている読者は多いでしょう。私もファンの一人です。経営者、政治家、文化人など一流の方々の歩んできた道、大事にしている信条などを垣間見ることができ、社会人としても人間としても啓発されます。

ご紹介するのは『経営はロマンだ!』、ヤマト運輸元会長小倉昌男氏(故人)の「履歴書」をまとめなおしたものです。小倉氏が、クロネコヤマトの宅急便を作り上げ、日本人の生活様式に大きな変革を与えたのはご存知の通りです。

企業の中心には倫理があるべきだ

小倉氏が経営で重視していたものの一つが倫理・コンプライアンスです。学生時代の思い出としてマックス・ウェーバーを学んだことが綴られています。

「それまで需要と供給の関係で動くのが資本主義経済だと思っていたが、その基盤として倫理が重要だという。(中略)企業経営者としてやってきた私の心の底辺に、この講義の影響があったと思っている。抹香臭いと言われるかもしれないが、企業の中心には倫理があるべきだと、今も信じている。」

小倉氏は当時の運輸省や郵政省とたびたび衝突しました。権益の護持と業界バランスの維持を重視する官僚組織は、恣意的に認可を遅らせる、郵政法の解釈を拡大して宅急便事業を制限するなどの手段を用います。国民のために活動しているとは言いがたい官僚組織の言動は小倉氏からみれば倫理から外れているように見えたのでしょう。新聞広告を使って運輸省を攻撃するなど、小倉氏は「官僚と闘う男」との異名を得るほどの抵抗を示しました。

算術が役に立った

また倫理とともに、論理的思考・ロジックを重んじていたことも綴られています。小学校時代について次のように述懐しています。

「学校で習ったことで卒業後も役に立ったことは何かと聞かれれば、即座に小学校の算術であったと答えたい。自分で筋道を立てて考える習慣を身につけたことが、後の企業経営にも大きな影響を与えていると思う。経営もつまるところ、論理の積み重ねだからである。」

それまで前例のなかった宅急便事業に集中し、配送ネットワークをいち早く構築できたのはこうした論理的思考の賜物でした。

ヤマト財団の設立

導入当時は非常識とされた宅急便事業を成功させ、ヤマト運輸を業界トップの地位に至らしめたのは、コンプライアンスとロジック、小倉氏が重んじた二つの要素がありました。経営者を支援する中小企業診断士としても肝に銘じておきたいことです。

ヤマト運輸を退社した後、小倉氏は私財を投じてヤマト財団を設立します。心身に障害のある人々の「自立」と「社会参加」を支援するために、小倉氏は挑戦を再び始めたのです。ちなみにヤマト財団の活動に中小企業診断士大塚由紀子先生がご尽力されていることを最後に紹介させていただきます。

『経営はロマンだ!』

『経営はロマンだ!』

小倉昌男[著]
文庫・224ページ
定価:630円(税込)
日本経済新聞出版社刊(日経ビジネス人文庫)  http://www.nikkei-bookdirect.com/