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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

商店街は中小企業診断士を待っている―岡崎まちゼミの会代表 松井 洋一郎さん

取材・文:【第1回】山口 良明(中小企業診断士)・【第2回】石田 紀彦(中小企業診断士)

【第2回】「まちゼミ」の“次の一手”のサポートを

2018年4月24日更新(取材日:2017年11月16日)

「まちゼミ」が全都道府県340地域に広がりを見せる中、中小企業診断士の果たす役割について、岡崎まちゼミの会代表の松井洋一郎氏にお話を伺っています。第2回は、具体的な支援の内容や方向性について、中小企業診断士に期待することを語っていただきました。

「まちゼミ」と「まちゼミ後」への期待

―活動を続けられる中で、中小企業診断士に期待することは何ですか。

「まちゼミ」以前に中小企業診断士の方々にお願いしたいのが、もっと地方に出てきてほしいということです。中小企業診断士は、東京や大阪に集中しすぎているように感じます。地方では食べていけないと思っておられるのかもしれませんが、地方の商店街が中小企業診断士の支援を必要としていることを、まず知ってほしいです。

―地方では特に、どのような支援が求められているのでしょうか。

私が期待するのは、外部リーダーとしての中小企業診断士です。私は、商店街の活性化には、商店街をまとめあげる内部リーダーと、その内部リーダーを支えるための外部リーダーの2種類のリーダーが必要だと思っています。
本来は、内部リーダーだけで商店街を活性化できれば良いのですが、現在のように店の従業員数が大幅に減ってしまっている状況では、昔のように1人の強力な内部リーダーが商店街をまとめ上げることは難しくなっているからです。
私は、一般社団法人全国タウンマネージャー協会の副会長を務めていますが、タウンマネージャーのような外部リーダーがいなければ、内部リーダーを支えきれません。中小企業診断士の方々は皆さん、意識が高いので、外部リーダーとしての組織を編成し、サポートする役割も期待できるのではないかと思っています。

「まちゼミ」メンバーによって作成されるチラシのデザインも、外部のファシリテーターがビジュアルを指導することで来客数に大きな違いが出る
「まちゼミ」メンバーによって作成されるチラシのデザインも、
外部のファシリテーターがビジュアルを指導することで来客数に大きな違いが出る

―「まちゼミ」の運営については、どのような支援をお望みですか。

中小企業診断士の方々には、商店街の主体性を尊重するような支援をしてほしいです。「まちゼミ」にも続くものと続かないものがありますが、続かないものには一定の傾向があります。それは、事務局が中心になりすぎたり、商業者が主体性を持たずに実施したり、中小企業診断士の方々が自身の経験をもとに「指導」してしまったりするケースです。店主がやろうとすることに対して、「もっとこうしたほうが良いよ」と言ってしまったり、場合によってはチラシの文言すべてをチェックしてしまったりすることもあるようです。
しかし、それでは参加者の主体性が育ちません。失敗しても良いのです。肝心なことは、参加者が反省を繰り返し、自らの失敗を自らで改善しようとする主体性です。スイッチが入ったとき、その参加者は自分で考えて動き出しますので、そのサポートをしてほしいのです。

―そのスイッチは、どのようなときに入るのでしょうか。

こうすれば参加者のスイッチが入る、というマニュアルはありません。連携させることでスイッチが入る場合も、逆にネガティブな対応をすることでスイッチが入る場合もありますので、このあたりは経験を重ねるしかないと思います。ただ、私はすべての人にスイッチがあることだけは確信しています。

―今後、中小企業診断士に期待することをお聞かせください。

中小企業診断士の方々に期待するのは、「まちゼミ」の“次の一手”です。
「まちゼミ」を長くやっていると、それをきっかけに事業を発展させる方が現れます。たとえば、理容店さんが「まちゼミ」で行った女性のお顔そりの評判が高まり、店舗を分けて「お顔そり専門店」を立ち上げることになったり、ピアノ教室が日中の時間を利用して「歌の教室」を起こしたりと、新規事業に結びつける事業者が増えてきました。

松井氏の着ているジャケットは、「まちゼミ」から生まれた久留米かすりを使用したもの
松井氏の着ているジャケットは、「まちゼミ」から生まれた久留米かすりを使用したもの

しかしその先に、「この商品を世の中にどう出していくか」という問題があります。その採算や資金繰りなどは、私たちが得意ではない部分ですので、そこに中小企業診断士の方々が入り、事業計画などをサポートしてほしいですね。
店主たちは皆、「こういう風にしていくと良いだろうなぁ」と感じてはいても、「その先はどうするのか」と問われると答えられません。そのときに、中小企業診断士の方々が明確に分析してくれたり、「こういった道筋が見えますね」と未来の姿を見せてくれたりすると、「まちゼミ」のような地域創生はさらに発展すると思います。

取材を終えて

松井氏の著書『まちゼミ さあ、商いを楽しもう!』(商業界)の中に、和歌山県田辺市の「まちゼミ」に参加した女性の「まちゼミのような場さえあれば、商人は自然と学び合い、店は磨かれていきます。まちゼミとは、店という“まちの宝石”を磨く布のようなものです」という言葉が紹介されています。
商店街支援にかかわる中小企業診断士も、自らがまちを磨くという意識ではなく、あくまでも店主の主体性を磨き上げる黒子としての姿勢が期待されていることを感じました。

(おわり)

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プロフィール

松井 洋一郎(まつい よういちろう)
1968年愛知県岡崎市生まれ。OA機器販売会社で5年間勤務の後、家業の化粧品専門店(株)みどりや入社、現在は専務取締役。岡崎まちゼミの会代表として、まちゼミを中心として岡崎のまちづくり施策に取り組む。内閣府地域活性化伝道師、経済産業省タウンプロデューサーとして全国の中心市街地、商店街の活性化に向けて講演や実践活動を行っている。