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商店街は中小企業診断士を待っている―岡崎まちゼミの会代表 松井 洋一郎さん

取材・文:【第1回】山口 良明(中小企業診断士)・【第2回】石田 紀彦(中小企業診断士)

【第1回】「まちゼミ」はPDCAを回しながら生まれた

2018年3月27日更新(取材日:2017年11月16日)

店主やスタッフが講師となって店内で無料講座を行う「まちゼミ」が、全都道府県340地域で行われています。商店主は「まちゼミ」によって企業家精神を取り戻し、まち商人のリーダーが育つことで商店街も元気になっています。
ではなぜ、「まちゼミ」は全国に広がったのか。また、活動の中で中小企業診断士が果たす役割は何か――。2003年に愛知県岡崎市で始まった「まちゼミ」を、現在は全国に広めた、岡崎まちゼミの会代表の松井洋一郎氏にお話を伺いました。

まち商人を元気にしたい

―「まちゼミ」が全国で広がっています。

全国の商店街では、シャッターを下ろしたままの店が目につきます。店主に聞くと、大型店の進出で仕方がないという人、行政が何とかすべきという人などさまざまです。インターネットその他で自ら変わるチャンスもありますが、何を行ったら良いかで悩んでいる店主が多いのを感じていました。
愛知県岡崎市で始まった「まちゼミ」は、15年ほどで100店舗に拡大し、店主の自主的な活動が広がっています。最初から広げようと思っていたわけではありません。顧客の満足は何か、事業者の満足は何か、そして地域にとって私たちの活動をどうすべきかとPDCAを繰り返す中で、徐々に「まちゼミ」の形ができてきて、これは他の地域でも役に立つと思いました。いまは「まちゼミ」拡大のために、全国で研修を行っています。

岡崎まちゼミの会代表の松井洋一郎氏。毎日のように全国を飛び回っている
岡崎まちゼミの会代表の松井洋一郎氏。毎日のように全国を飛び回っている

「商店街、地域のために」皆が想いを共有

―PDCAは、具体的にどのようになさっていますか?

意識したわけではなく、自然にできてきたことばかりです。「まちゼミ」に限らず、新しくイベントを始めるときは、「この事業が数年経ったらこうなる」、あるいは「こうしていきたい」と思っていますが、事業をやることが目的のルーチンワークになってしまう場合もあります。それは、やり始めた人の持つ想いが周りに伝わっていないのが原因ではないかと感じました。
そこで、どうすればお客様の満足度を上げられるか、地域のためにどう改善すべきかを「まちゼミ」が終わるたびに考えました。ゼミの参加者を5人程度に抑え、店主の話は1時間のうち20分以内にして、残り40分はお客様同士で疑問点や感想をじっくりと話していただいたところ、参加者の満足度をずいぶん上げられることがわかりました。商品の販売もしません。お客様の満足、楽しさを優先すれば、いずれは「この店で買いたい」とお客様のほうから来ていただけるのです。
また、集客を増やすために、仲間の店を宣伝します。新潟県吉川町のように、人口4,000人ほどでも大きな成果を上げるまちがありますが、そこでは参加者同士がお互いの宣伝をしています。化粧品屋さんが「花屋さんの講座は良い」とか、うどん屋さんが「肉屋さんに行くと良い」といった具合に、自分のことよりも周りの紹介をするのです。同じ1万枚のチラシを配っても、使い方を工夫することで成果は変わってきます。

―チェックの結果は、どのようにフィードバックするのでしょうか。

PDCAを回す中で、良い事例を共有すれば皆が伸びることに10年前に気づきました。情報をシェアするということです。「まちゼミ」の輪が広がれば広がるほど、良い事例や考え方が出てきます。効果測定も、沖縄から北海道まで同じアンケートを使って行っています。非常に細かいアンケートですが、「このまちにはこのような特徴があり、次はこうなる」といったことがわかるようになりました。
成功するノウハウや情報については、3年に1度の全国まちゼミサミットのほか、県や商工会議所主催の交流会などで、全国340地域のリーダーに流しています。毎日、膨大な数のメールにも応えています。正直大変ですが、それをずっと続けています。最近は書籍を書いたり、事例集を出したりして、情報を伝える手段を増やしています。

「まちゼミ」の先にあるもの

―将来の夢をお聞かせください。

小規模事業者向けの支援は、地域創生の基本的な事業だと思っています。「まちゼミ」を開くことは、目的ではありません。その次のアクションを、個店としてまちとして、考え続けてほしい。
地域では多くの人がPTA、消防団、見守りなどさまざまな活動をしていますが、その人たちが自身の商売と地域の連携を通じて、地域を押し上げる活動ができたら良いと思っています。最終的には、自身の事業拡大を考えても、地域の進歩を目指しても、どちらでも構いません。公共的なことに奉仕したいという気持ちは、誰しもにあると思いますが、多くの人たちと連携していくことで、地域や国が元気を取り戻せたら良いなと思っています。

(つづく)

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プロフィール

松井 洋一郎(まつい よういちろう)
1968年愛知県岡崎市生まれ。OA機器販売会社で5年間勤務の後、家業の化粧品専門店(株)みどりや入社、現在は専務取締役。岡崎まちゼミの会代表として、まちゼミを中心として岡崎のまちづくり施策に取り組む。内閣府地域活性化伝道師、経済産業省タウンプロデューサーとして全国の中心市街地、商店街の活性化に向けて講演や実践活動を行っている。