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大田原市副市長・永山 林(ながやま はやし)さん

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第1回】プロに任せたほうがうまくいく

取材日:2013年2月18日

昨年、栃木県大田原市が出資する「株式会社大田原ツーリズム」が設立されました。代表取締役会長には大田原市副市長の永山林さん、代表取締役社長には農業活性化に取り組む藤井大介さん(中小企業診断士)が就任しました。
 同社は、農業体験、自然体験、歴史・文化体験などのグリーンツーリズム事業を行う会社です。大田原市副市長の永山林さんにお話をうかがいました。

大田原グリーンツーリズムの推進

― 大田原グリーンツーリズムの取組み経緯を教えてください。

永山林さん
永山 林・大田原市副市長

2005~2007年にかけて、大田原市で中山間地域振興についての研究・調査を行いました。特別委員会がまとめた報告書には、グリーンツーリズム推進が盛り込まれました。現大田原市長のマニュフェストにも、グリーンツーリズム推進がうたわれていました。

そこで、公募型のプロポーザル方式で、グリーンツーリズム推進業者を選定することにしました。大手旅行代理店など数社が提案してきたのですが、一番内容が良かったのが藤井大介さん(株式会社ファーム・アンド・ファーム・カンパニー代表取締役社長、中小企業診断士)の提案だったのです。

― 大手旅行代理店などからの提案よりも、藤井さんの提案のほうが良かったのですね。

まずは、実績がありました。もともと農業をやっていなかった人が農業を始めて、農業レストラン(栃木県宇都宮市にあるレストラン「下野農園」)までやっている。これは、なかなかできることではありません。

提案内容の実現可能性も評価しました。藤井さんの提案には、グリーンツーリズム推進に向けたロードマップが描かれていました。そこで、計画書に磨きをかけてもらい、大田原市議会に提案することにしたのです。

株式会社大田原ツーリズムを設立

― 議会の承認を得るためには、きちんとした計画が必要になりますね。

永山林さん

藤井さんが全国の事例を調査して、事業計画を作成しました。株式会社を設立して、大田原市が50%を出資、5~8年で黒字化まで持っていく計画でした。

― 株式会社を設立し、グリーンツーリズムを推進していく計画ですね。

ほかの方式では、なかなかうまくいかないと考えました。たとえば、農業公社を使ってグリーンツーリズムを推進する方法です。しかし、そもそも農業公社には、グリーンツーリズムに詳しい職員がいるわけではありません。職員にグリーンツーリズムを理解してもらうところから始めなければいけない。これでは、事業の実現がどんどん遅れてしまいます。やはり、プロにやってもらったほうが良い。

また、大田原市の職員がグリーンツーリズム事業を推進しようと思っても、人事異動がネックになります。市の職員は通常、3~5年くらいで別の部門に異動します。せっかく経験を積んでも、担当者が変われば、再度経験を積み直す必要が出てきます。人事異動が、事業失敗の原因になってしまうのです。

― なるほど。株式会社を設立してプロに任せたほうが、うまくいくわけですね。

費用の面も検討しました。農業公社でグリーンツーリズムを推進するとしたら、最低4~5人の職員が必要です。仮に、共済などを含めた人件費が1人あたり500万円かかるとすると、年間2,000万円で、5年間で1億円です。

一方、株式会社を設立する事業計画では、大田原市の出資額は5,000万円(資本金1億円の50%)です。農業公社のように、毎年2,000万円の人件費を負担し続ける必要はありません。さらに事業が軌道に乗れば、出資者として配当が出る可能性まであります。出資額の5,000万円が高いか安いか、きちんと比較すれば、結論は明確です。

他地域の事例でも、農業公社がグリーンツーリズムを推進しようとしても、なかなかうまくいっていないところが多いのですが、それらは毎年、職員の人件費を負担して成り立つ仕組みでした。一方で成功しているのは、株式会社として民間ベースでやっているところばかりなのです。

― だから、民間ベースで進めていこうと考えられたのですね。

株式会社大田原ツーリズム
株式会社大田原ツーリズムを
設立(大田原市副市長・永山
林さん(右)と藤井大介さん、
大田原市ホームページより)

グリーンツーリズム推進を事業委託することも考えました。でも、事業委託では、責任の所在があいまいになってしまいます。その点、株式会社を設立して大田原市が出資をする形をとれば、責任の所在が明確になります。

市町村が株式会社に出資することが可能かどうかも確認しました。調べてみると、大田原市でも街づくりカンパニーに出資している事例がありました。商工団体と大田原市が出資して、株式会社を設立していたんです。

― 以前にそうした事例があったのですね。

もちろん株式会社ですから、万一のケースを指摘する意見もありました。始まる前から、つぶれることを考えるのもおかしな話ですが...。

でも、万一つぶれたとしても、この事業は無駄にはなりません。必ず、農家に経験が残ります。大田原市の魅力発信、グリーンツーリズムの経験、そしてやりがい。この事業を実施することで、得られるものは大きいのです。

(つづく)

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会社名 株式会社大田原ツーリズム
代表取締役会長 永山 林(大田原市副市長)
代表取締役社長 藤井大介(中小企業診断士)
所在地 栃木県大田原市本町1丁目3-3 総合文化会館2階
TEL 0287-47-6759
ホームページ http://ohtawaragt.blog.fc2.com/