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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

一般財団法人女性労働協会専務理事・福沢恵子さん/業務第二課(起業セミナー担当)・富尾木綾子さん

取材・文:鈴木 佳文(中小企業診断士)

【第3回】中小企業診断士に期待すること

取材日:2012年12月10日

ここまでのお話で、女性の背景にあるさまざまな事情に理解を示せる「共感力」を持った、女性就業支援のプロとして、中小企業診断士の活躍するフィールドが広がっていることが見えてきました。最終回となる今回は、実際に中小企業診断士に期待されていることをうかがいました。

中小企業診断士に期待すること

― それでは、女性就業支援の現場から、中小企業診断士に期待することを教えてください。

福沢:経営や起業の情報で、メディアが誤解を生んでいるケースが見受けられます。中小企業診断士の先生方には、「起業=ベンチャーではない」ということを、豊富な事例をもとにご自身の言葉で語っていただくだけでも価値があります。「スローワーク」も立派な起業で、儲けるばかりがすべてではないことを、説得力を持って語っていただくことですね。

― 意識の変革を促す、という意味合いで認識してよろしいでしょうか。

福沢:そうですね。ご実家が事業をしていらっしゃらない方は「自分が何かを決定する」という感覚が持ちにくく、「仕事をする=雇われて働く」というイメージしか持てないことが多いのです。そのような方々に「雇用される以外にも仕事をする機会はあるのだ」ということを理解してもらうためには、ぜひ中小企業診断士の先生方のお力をお借りしたいと思います。

― 「道筋をつける」ということについて、もう少し詳しく教えてください。

福沢恵子さんと富尾木綾子さん
福沢恵子さん(左)と富尾木綾子さん

福沢:やりたいことが決まっている方へのコンサルティングはもちろんですが、たとえば、高校や大学に在学中の生徒たちにも、仕事には雇われて働くスタイルだけでなく、自分で仕事を作り出すスタイルもあることを伝える。つまり、わかりやすい事例を活用して、働き方やビジネスのモデルを伝えるといったことをしていただくと、若い方たちも経営の視点を身につけられると思います。

― 経営への意識が明確でない方たちに、経営感覚を身につけてもらうということですね。

富尾木:中小企業診断士の先生方だからこそ得られる情報もありますので、そのような情報も含めて伝えてほしいと思います。

女性創業支援に求められる3つの能力

― 中小企業診断士が女性の創業・就業支援を行うにあたって、求められる能力を挙げるとすれば、どのようなものでしょうか。

福沢:3つ挙げるとすれば「共感力」、「翻訳力」、「想像力」ですね。「共感力」は、自分の価値観や経験だけでなく、それを踏まえたうえで、まったく立場の異なる人や異なる経験の人にも思いを馳せることができる力です。たとえば、このチャンスをつかめば事業が飛躍的に伸びるという状況で、家庭の事情から降りる人がいたとき、「何ともったいないことを...」と考えてしまったら、それは「共感力」が乏しいことになります。いまのチャンスをつかむだけでなく、さまざまな選択肢をアドバイスできる先生であればありがたいです。

「翻訳力」は、専門用語を使わずに話ができることです。専門用語を使ってしまえば、概念を一元化できますが、専門外の人にとっては、何を言っているかわからないことがあります。だからこそ、専門用語を違う言葉に翻訳できる力が求められます。"内輪"ではなく、"外輪"にするためには、バイリンガルであることが重要です。

「想像力」については、1を聞いて2や3を想像できる力です。ネガティブな側面はもちろんですが、ポジティブな面も含めてフィードバックできる、複眼的な視点を持っていることが重要です。女性が描いた当初のビジネスモデルから、本人が発想できないような可能性を示していただけるとありがたいですね。

― 最後にお二人から、女性労働協会または女性の創業・就業支援に中小企業診断士がかかわるとしたら、どのような言葉をかけるかを教えてください。

福沢恵子さんと富尾木綾子さん

富尾木:起業を考える女性はとても前向きで、そのプロセスの中で自身を好きになる方が多いので、そういった気持ちを応援してくれる先生が増えてほしいですね。全国に起業支援のニーズがあり、先生を探している自治体も多いので、地域に根ざした活動をする先生が増えてくれるといいと思います。

福沢:女性労働の視点から言えば、女性には転機がたくさんあります。具体的に言えば、出産、子育て、親の介護、働いている会社内での立場の変化など、判断を迫られる時期が、男性に比べて若いうちに来てしまう。そんなときにも、自律的・自立的に自身をマネジメントしていかなければならないので、経営と女性には親和性があると思うのです。

また、職場を離れた女性が再度雇用されるには、年齢を重ねた分、経営マインドがとても重要になります。その側面を、中小企業診断士の先生がサポートしてくださるととてもありがたいので、その点にもっとかかわっていただけたらと思います。

取材を終えて

女性労働協会と言えば厚生労働省管轄で、中小企業診断士の入り込む余地はあまりなさそうに感じていました。しかし、創業支援や就業支援といった場面で中小企業診断士への評価は高く、活動領域を広げていくうえで、フィールドの1つとして選択肢になり得ます。また、女性診断士だけでなく、男性診断士にも活躍してほしいと語られたことが印象に残りました。

取材後、「第1回講師デビュー講座」に何人の中小企業診断士が応募したかを教えていただきましたが、130名以上の応募があった中、わずかに3名ということでした。私たち中小企業診断士も、既存の活動フィールドにとどまらず、さまざまな分野に興味・関心を広げて、積極的に新しいビジネス機会を探していくことが必要だと、あらためて感じた取材でした。

(おわり)

【事業紹介】

福沢恵子さん

福沢 恵子(ふくざわ けいこ)
一般財団法人女性労働協会専務理事/昭和女子大学特命教授(キャリア開発論)
早稲田大学政治経済学部卒。在学中に女子学生が作る就職情報誌「私たちの就職手帖」を創刊、初代編集長。卒業後、朝日新聞記者を経て、1990年にフリーランスのジャーナリストとして独立。以後、労働・経済分野を中心とした執筆活動のほか、大学や自治体などで就業支援、女性労働、経済関連の取材や講演を行う。「女性の仕事と未来館」運営協議会委員、財団法人21世紀職業財団中央雇用管理アドバイザー、東京家政大学人間文化研究所助教授、同客員研究員、財団法人日本女性学習財団理事、日本女子大学客員教授を歴任。執筆活動や雑誌への寄稿も多数。女性労働に関する分野で、第一人者として活動。


富尾木 綾子(とみおぎ あやこ)
一般財団法人女性労働協会業務第二課
2005年より女性労働協会に入職し、主に広報・ホームページ企画や、女性就業支援セミナーの企画・運営を担当。女性を対象とした起業セミナー、起業相談・イベントの事務局として、多くの受講生とかかわってきた。最近は、全国の自治体、男女共同参画センターなどの講座・研修の企画協力を行う。

団体名 一般財団法人女性労働協会
会長 鹿嶋 敬
所在地 東京都港区三田3-5-21 三田北島ビル4F
TEL 03-3456-4410
ホームページ http://www.jaaww.or.jp/