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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

オリックス・バファローズ執行役員 球団本部長補佐/千葉商科大学大学院客員教授・瀬戸山隆三さんに聞く

取材・文:秋田 舞美(中小企業診断士)

【第3回】私が中小企業診断士に期待すること

取材日:2012年9月8日、10月27日

球団経営のスペシャリスト・瀬戸山隆三さんにうかがう最終回です。今回は千葉商科大学大学院中小企業診断士養成コースで客員教授を務められたご経験をもとに、中小企業診断士に期待することをお聞きしました。

99.7%の中小企業のために

― ところで、2012年4月からは、中小企業診断士養成コースの客員教授をされていたと聞きました。

瀬戸山隆三さん

ええ、千葉商科大学大学院で、スポーツビジネスを担当していました。皆さん、真面目であるとともに、中小企業診断士の1次試験を突破されているだけあって、質問がストレートで具体的でした。球団ルールや球団規模などを聞かれて、初めてそれが「球界ルール」だったことに気づいたような場面もありましたね。

― 中小企業診断士という資格は、以前からご存じでしたか。

もちろんです。私はもともと、ダイエー本体の出身ですが、経営状況が悪くなった2000年以降、本体では早期退職もだいぶ行われていまして。当時の同僚や上司、部下で、診断士資格を取った人も結構いたんです。診断士資格を取って独立した方や、コンサル系の会社に入った方もいます。

― たしかに、私が一緒にお仕事をさせていただいている中でも、大手スーパーのバイヤー出身だった方が数名いらっしゃいます。食品製造業などに対して、「スーパーとうまく付き合う営業、受け入れられる製品開発」など、実感あるアドバイスをされる方が多いですよね。
 では、これまで球団経営に携わられる中で、中小企業診断士に相談したかったような場面はありましたか。

前回も述べましたが、私が一番悩んでいたのは、経営指針についてでした。特に、福岡ダイエーホークスの立ち上げにかかわり、その後に球団社長となった際、経営指針についてアドバイスしていただければありがたかったですね。球団を立ち上げたときは、本当に右も左もわからず、途方に暮れていました。財務や人事の相談に乗ってくれる方はいても、経営指針について相談に乗っていただけるような方は、あまりいませんでした。

― 通常は、経営戦略があり、その下に経営戦術があって、その部分の支援をというのが一般的です。場合によっては、全体戦略というか、より基盤にある経営理念に近い部分のアドバイスが求められるんですね。

経営理念の根幹は、経営者自身が考え、実現するところだと思います。ただ、漠とした理念を整理してくれたり、言葉にしてくれたり、利害関係者が多数にわたる場合は、その間の交通整理をしてくれたり。私は、球団経営という稀な業種なので、指針に対するアドバイスの必要性を強く感じましたが、経営理念へのアドバイスというのは、他の業種でも必要なことだと思います。

― たしかに、経営者は決断の場面では常に孤独です。経営理念の根幹は変えずとも、その実現方法、中期目標とも言える指針について、「やりたい」ことが「やれる」ことなのかという、客観的かつ理論と経験に基づいた意見を得る機会は、何よりも貴重かもしれませんね。
 そのほかに、中小企業診断士の需要を感じる分野はありますか。

瀬戸山隆三さん

日本の99.7%は中小企業だと聞きました。私は球団経営に携わっていますが、世間も、そして中小企業診断士の方も、野球球団を中小企業と思っていますでしょうか。中小企業診断士の方が活躍されているのはおそらく、製造業や流通業といったある意味、メジャーな産業がほとんどかと思います。でも、私どもの野球球団も中小企業です。そして、稀な業種だからこそ、迷いも多く生じます。

南海ホークスから球団を引き受け、福岡ダイエーホークスを立ち上げるお手伝いをした際には、経営書を探し歩いたものです。でも、「野球球団の運営の仕方」なんて指南書は、どこにもない(笑)。

― 中小企業診断士として、これまでに対応したことのない業種への進出はなかなか難しい気もしますが、どのようにアプローチすればよろしいでしょうか。

たとえば野球球団でも、当初から野球の専門家である必要はありません。中小企業診断士は、「経営」のプロであってくれればいい。新規分野に進出する際も、また既存分野でも、その分野へのアドバイスが欲しいというよりは、「経営」というものに対してアドバイスをいただけるとありがたいのです。

当時は、一般的な「経営」について意見をうかがえたら、すごくありがたかったと思います。稀な業種だからこそ、誰にも聞けないし、わからない。迷いが生じる場面が多くありましたから。そういう意味で中小企業診断士の皆さんには、対応する業種を広げることで、活躍の場をより広げてほしいですね。

― 進出分野を増やしていくにあたっては、何が必要でしょうか。

いままでに出会った中小企業診断士の方や、大学での出会いを思い返すと、皆さん、能力はあるのに控えめ。やればできるのに、その「できること」を知られていないことが多い気がします。ご自身のPRをもっと、頑張っていただきたいですね。

― なるほど。今回は期待すべき分野として、「(1)経営理念に関する相談」、「(2)稀な業種への対応」、そして気をつけるべき点として、「(3)PR不足」をご指摘いただきました。まさに的確なご指摘で、自身も心がけていかねばと感じました。本日はありがとうございました。

(おわり)

瀬戸山 隆三(せとやま りゅうぞう)
ダイエー入社後、福岡ダイエーホークスに出向し、1996年より球団本部長、1999年には球団代表に就任。下位低迷を続けていた球団を、南海ホークス時代以来、26年ぶりのリーグ優勝、35年ぶりの日本一へと導いた。また、王貞治監督をダイエーホークスに招へいし、日本シリーズでのON監督対決への功労者となる。2004年に千葉ロッテマリーンズの球団代表、2006年より同球団社長に就任し、こちらでも31年ぶりの日本一を達成。2011年より千葉商科大学大学院客員教授となり、中小企業診断士養成コースで教鞭をとる。2012年11月より、オリックス・バファローズ執行役員 球団本部長補佐に就任。