経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

宮坂醸造株式会社執行役員 マーケティング部長・地域活性化担当 杉浦孝則さんに聞く

取材・文:鈴木 佳文(中小企業診断士)

【第2回】理論では通じない世界があると認識してほしい

取材日:2011年7月4日

中小企業診断士には、泥臭い支援をしてほしいという杉浦さん。ご自身は、大豆を中心にしたさまざまな活動の中で、深い人間関係を築いています。飾らずに現場に飛び込んでいく姿勢からは、中小企業診断士も学ぶことが多いでしょう。現在は、地元商店街とのかかわりをきっかけに、東京都中野区と連携した取組みを展開しているほか、各地を駆け回っています。今回は、経営者としての視点から、中小企業診断士に対する印象をうかがいました。

ロジックだけでは物足りない

― 中小企業診断士や経営コンサルタントに対しては、どのような印象をお持ちですか。

圃場にて
圃場にて

経営コンサルタント全般というくくりでは、どうしても「ロジカルシンキング」のイメージが強いですね。もちろん大切なことなのですが、現場はロジックで割り切れるほど単純なものではありません。特に、自然相手の1次産業従事者との絆は、ロジックだけではつくれません。6次産業アドバイザーの研修会に参加していたときも、実務家のメンバーは、理屈だけの先生には厳しかったですよ。ときには、まったく授業が進まないこともありました。やはり、肌で体験しているのは大きいですね。そういう意味では、パートナーとして物足りなさを感じるだろうと思います。不作のときはともに嘆き、豊作のときはともに喜び合う姿勢が大切なんです。

― 厳しいですね。実際には、現場に足を運び、泥臭い活動をしている人たちもたくさんいるのですが、どうしても「一緒に汗をかかない」印象が強いようです。

そうですね。「一緒に汗をかかない」という言葉は、ぴったりだと思います。大企業の中で効率化を進めていくうえでは、ロジカルシンキングも大切だと思います。客観的に状況をとらえ、問題を発見していくようなときには役立ちますが、理屈の上では正しいことであっても、たとえば自然を相手とする現場でうまくいくとは限りません。そういうときこそ、人と人とのつながりのようなものを無視できないはずなのですが、「コスト」や「効率」に目が向いて、「人」をないがしろにしてしまいがちじゃないですか。

― そういった見方をされているのは寂しいです。ただ、商店街の支援に入るときにも同じことを言われましたから、「理屈だけ」というイメージが強いのでしょうね。

いやいや、そこまでは(笑)。ただ、現場の視点から言うと、ロジックだけでは物足りないと思います。ロジック優先は利益優先になりがちなので、悪くなったときには切り捨て優先で、継続や乗り切りのための知恵をひねり出す方向に行かない場合が多く見受けられます。6次産業的観点から言えば、農家の人は不作でも切り捨てるわけにはいかないのです。1次産業従事者の苦労を知ることで、加工や販売の形を変化させる知恵が出されるようになります。

― 御社でもコンサルを入れて、効率化を推進されていると聞いていますが、その中で採算に合わない動きをされるのは、風当たりが強いでしょう。

かなり厳しいことを言われています(苦笑)。ただ、いまは1社だけが利益を上げる時代ではありません。震災で露呈したように、原料がなければ工場が動かず、小売店も販売できなくなることを再認識すべきです。いろんな人が取り柄を持ち寄って、全員がよくなる視点で考えないと、いずれは行き詰まります。敵とか競合とかでなく、地域や国益を考えて協力し合うことが大切です。元経営者として、孤独には慣れていますし、現場に仲間がたくさんいますから、少々の風当たりには動じません。とは言え、会社に所属している立場でもありますから、やはり容認してくれている社長には感謝しています。

多様性の獲得が変化に強い組織をつくる

― 大豆100粒運動や宇宙大豆をきっかけに展開している食育の動きは、外部から見ると、御社のイメージを相当向上させていると感じますが。

商店街の炊き出しイベント
商店街の炊き出しイベント

それが、社内ではなかなか評価されていないんです(苦笑)。宇宙大豆なんて、金食い虫ですからね。効率化とは正反対のことをしているわけですから、厳しい目を向ける人も多いですよ。食育・教育をベースにした6次産業化事業構想は、無数の異業種間のコラボであり、それぞれの経営者が「協働」体制で結果を出していく作業なので、お互いがまとまるまで正確な数値化ができない点がネックとなります。この部分が、「荒唐無稽」と酷評されたりする所以となっています。

― 社内の突き上げも厳しいのですね。御社には、中小企業診断士はいないのでしょうか。広い視野でサポートできると思うのですが...。

銀行を退職されてきた役員の方が中小企業診断士ですが、どちらかと言うと、効率追求・利益最重視の立場のようです。

― それは、「夢づくり」的立場からすると厳しいですね。では、今年が成果を見せていく正念場ですね。

そうですね。社長も、成果を見せない動きをいつまでも容認するわけにもいかないでしょうから。私としても、着実に結果を積み重ねていきたいと思っています。おかげ様で、中野区さんと連携したさまざまな動きが出てきていますし、そうした種が芽吹きそうな気配もあります。

来年は、宇宙大豆を育てた各地の子どもたちを中野区に招待し、全国宇宙大豆サミットを開催する方向で動いています。また、中野観光協会の立ち上げに関与し、東京の地大豆を原料としたB級グルメや、来年3月をメドに限定土産品を企画・開発中です。

― お話をうかがっていると、杉浦さんの動きを容認していることで、企業として変革に耐える多様性を獲得しているように思えるのですが。

実際には、まだ多様性というところまでは行っていません。私の活動をきっかけに、多様な価値観を包含できるような体制になれば、さらに強い組織に成長できそうですね。最澄の言葉に、「一燈照隅(いっとうしょうぐう)」という言葉があります。私の活動が、一燈の光になれば嬉しいですね。

― 次回は、社内外での活動経験を踏まえて、中小企業診断士にどのようなことを望むのかをおうかがいしたいと思います。

(つづく)

圃場にて

杉浦 孝則(すぎうら たかのり)
宮坂醸造株式会社執行役員 マーケティング部長・地域活性化担当
(株)ピタルドール六本木を設立。(株)セブン-イレブン・ジャパン(株)と専用クッキーギフトを開発。その後、(株)銀座シェルシェを設立し、菓子ギフト事業を拡大。
大学の先輩が経営者というご縁で、食品加工全般に事業展開を広げる構想が一致し、宮坂醸造(株)に入社。創業350周年事業に向けた新規事業の企画、開発、販売に着手。辰巳芳子先生と出会い、大豆自給率の低さに着目。事業展開の中心的テーマを大豆とし、自給率向上、味噌文化の普及活動を開始。現在は、みそソムリエの資格を取得。小学校で味噌「仕込み教室」を実施するかたわら、「具沢山の味噌汁普及」の伝道を行う。農林水産省認定の6次産業推進化プランナーとして登録。現在は大豆の自給率向上や味噌の普及活動を中心に、広く地域活性化事業の応援活動を行っている。
【ホームページ】
宮坂醸造株式会社 http://www.miyasaka-jozo.com/
み子ちゃんおじさんのブログ http://ameblo.jp/mikochan-ojisan/