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パーソナルスタイリスト・久野梨沙さんに聞く

取材・文:株式会社同友館編集部

【第1回】私が起業するまで

取材日:2010年5月21日

今回は、(株)フォースタイル代表取締役で、パーソナルスタイリストとしてご活躍中の久野梨沙さんにお話を伺います。久野さんが、(社)中小企業診断協会の会報誌『企業診断ニュース』に連載中の「キラキラ診断士計画」は、読者の皆様からご好評をいただいています。

アパレル業界への思い

久野梨沙さん

― まずは、自己紹介を兼ねて、アパレル業界へ進まれた経緯を教えてください。

私は、高校生の頃から、ファッションの道へ進もうと決めていました。ただ、人と違った観点からファッションをみてみたかったので、専門学校ではなく、大学で色彩心理学・認知心理学を専攻しました。色彩が人の感情に与える影響を学び、それをファッションの世界で活かしたい、と思ったんですね。

卒業後は、(株)オンワード樫山に入社しました。この時点ですでに、将来は独立したい、という気持ちがあったので、日本のアパレル業界を俯瞰する意味でも、国内のトップを争う企業に入れたのは、幸運でした。

― オンワード樫山では、どのような仕事をされたのですか。

私は当時から、ファッションを感覚ではなく、ビジネス的にとらえることが好きだったので、デザイナーやパタンナーといった専門職ではなく、マーチャンダイザー(以下、MD)を希望していました。しかしMDは、ブランドのすべてを把握するポジションなので、一般的に新卒採用はないんですね。そこで最初は、営業職に応募しました。

ところが、面接で採用担当者から、「君は、営業には向いていない。企画職のほうが向いているから、MDで応募し直してきなさい」と言われたんです。そして、運よく当初の希望どおり、MDとして採用していただいた経緯があります。

おそらく、でき上がったものを売り込むより、新しいことを考え、それを世に出すほうが好きな私の性格を、採用担当者は見抜いていたのだと思います。

― MDとは、具体的にどのような仕事ですか。

会社によって内容は大きく違いますが、オンワード樫山では、ブランドの経営者として売上を分析し、次に何を出すかという大きな企画を立て、それをもとにデザイナーやパタンナーに指示を出すポジションです。私は退職するまでの3年半、このMDを担当していました。

― その後、リーバイ・ストラウス ジャパン(株)に入社されますよね。きっかけは何だったのでしょう。

将来の独立のためにも、一度区切りをつけて、もっと広い視野でアパレル業界をみたい、と思うようになったんですね。前職で日本企業のMDを経験したので、次は外資系を、ということで、リーバイ・ストラウス ジャパンに入社しました。

ここでもMDに配属されたのですが、外資系ということもあり、業務はさらに細分化されていました。私は、ひたすら売上を予測して在庫コントロールをする、デマンドフォーキャスティングというポジションに就きました。

― 数字と向き合う大変な仕事だったと思いますが、本来やりたかった分野から離れてしまったということはありませんか。

心理学でも統計的な実験は行うので、統計学は勉強していましたし、もともと数字は好きだったので、むしろ嬉しかったですね(笑)。当時はちょうど、「もう少し大きな数字を動かしてみたい」と考えていた頃でしたし。

― でも、ずっとMD職だった久野さんがなぜ、パーソナルスタイリストとして、起業しようと思われたのですか。

そうですね。普通の発想だと、MDの市場をみる目を活かして、ブランドを立ち上げる、といった選択になりそうなものですが、それは、オンワード樫山で十分に経験できました。

それに、仕事を続けていく中で、「こんなに商品があふれている市場に、さらに商品を生み出して、お客様に何かいいことがあるのか?」と、疑問を抱くようになって...。世の中の役に立っている、という気持ちも薄らいできて、ブランドの立ち上げ自体に興味を失ってしまったんです。

パーソナルスタイリストとの出会い

― なるほど。そこで、パーソナルスタイリストなんですね。

私がパーソナルスタイリストの存在を知ったのは、リーバイ・ストラウス ジャパンでアメリカのマーケット調査をしていたときです。日本ではまだ、ほとんど認知度がないなか、アメリカではすでに一般的な職業でした。ブランドを出し続けることが、必ずしもお客様のためにはならないことと、もう1つ、在庫商売の恐ろしさも身をもって体験していたので、需要と供給の面からみても、「これだ!」と思いました。

― 独立にあたって、周囲の方から反対はありませんでしたか。

なかったですね。私の性格を知っている人であれば、団体行動に向いていないのはわかると思いますし...(笑)。みんな、「やっぱりね」、「本当にやるんだ」という反応でした。

パーソナルスタイリスト ファッションコーディネートなら--for*style

― さて、いよいよ起業されるわけですが、当時のことを教えてください。

当初は、個人事業主としてスタートしました。最初にしたのは、HPの作成とブログの開設です。まずは、パーソナルスタイリストという職業の認知度アップを重点に、活動していきました。

起業準備としては、新たにファッションの知識を身につけるというより、HPのつくり方やSEO、集客方法などについて勉強をしました。もともと、好きだったのもありますが、さまざまなコンテンツをつくり、とにかくファッションに関する情報を発信し続けたんですね。その結果、少しずつですが、パーソナルスタイリングのお申し込みをいただけるようになりました。

― パーソナルスタイリストとは、具体的にどのような仕事ですか。

基本プランでご説明すると、最初に90分間のカウンセリングを行い、お客様のご要望をお伺いしたうえで、現状分析をします。そして、お客様の方向性に合ったショップへお連れして、お見立てをする、という流れです。さらに、お買い物の同行後は、購入した商品をお借りして撮影を行い、コーディネートブックを作成してお渡ししています。

― 心理学を取り入れたカウンセリングが、久野さんの特徴ですよね。

はい。心理学の観点からもお客様を分析していることが、最大の特徴だと思います。そのほか、MD 職の経験を活かした「人のブランディング」も、得意分野の1つですね。

ファッション業界では、「何となく、これがかわいい」、「この服が似合うと思う」といった、感覚的な言葉が多く使われます。もちろん、個人のセンスを活かすという意味では、それもいいのですが、一般の方にはなかなか伝わりにくい。皆さんの感じるファッションの"壁"は、こういう部分にあるのかもしれません。

そこで私は、わかりやすく言語化することを心がけています。感覚に頼らず、理論的にお伝えする。"壁"を取り払うには、なぜこの服が似合うと思ったのか、なぜこのアイテムを選んだのかを、あらゆる手段を使ってわかりやすく伝えることが必要だ、と思うんです。

ありがたいことに、弊社のサービスを受けた8割のお客様が、リピーターになってくださっています。その多くは、今までファッションに興味のなかった方です。

ファッション誌を読んでも、よくわからない。「いいモノ」、「カッコイイ」って、何だろう? 「さわやか」ってどういうこと?? そういう方は皆さん、言葉で理論的に説明されたいんです。私がまだアパレル業界にどっぷり浸かっていたら、このことには気づけていなかった、と思います。

(つづく)

久野 梨沙(ひさの りさ)
株式会社フォースタイル代表取締役。中央大学にて認知心理学を研究後、大手アパレルメーカーで企画を担当。現在はパーソナルスタイリスト、セミナー講師、ファッションライターとして活動中。心理学の知識を活かし、内面の魅力まで引き出すスタイリングに定評がある。

会社名 株式会社フォースタイル
設立 2007年6月
代表取締役 久野梨沙
所在地 東京都世田谷区上北沢3-5-3
TEL 03-6316-6705