取材日:2009年6月29日
さまざまな逆風の中、日本で唯一の手話で教育をする学校法人「明晴学園」を立ち上げた立役者であり、同校の理事も務める玉田さとみ氏。その活動が評価され、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2009」リーダー部門に入賞しました。
一方、IT企業に勤務しながら、妻・さとみさんと二人三脚で活動を続け、NPO法人バイリンガル・バイカルチュアルろう教育センター(BBED:Bilingual Bicultural Education Center for Deaf Children)の代表理事を務める玉田雅己氏。中学校設立のための目標資金調達も無事完了し、さらに次のステージを目指しています。
「ろう児が明るく楽しくありのままに成長できる環境を整える」ことが、BBEDのミッションです。活動については、ホームページをご覧いただければと思います。
話は、私たちの次男の耳が聞こえないとわかったときにさかのぼります。ろう学校を訪ねて、「手話をどこで習えばいいのですか」と聞いた私たちは、「手話なんか習っても、ろくなことがない。あなたは、この子から日本語を奪う気?」と、真っ向から否定されました。日本のろう教育は、1933年から一貫して手話を禁止しているんです。
もともと、ろう者のコミュニティで受け継がれてきた独自の文法・表現を用いた「日本手話」を使えればいいのですが、既存のろう学校では、さまざまな事情から「日本手話」が採用されません。さまざまな壁に当たっていく中で、まずは社会に認められるためにNPOを立ち上げました。
NPOの設立を支援しているNPOにもお願いしたのですが、協力してもらえるのは事務手続きだけで、具体的な内容は全部、自分たちで考えなければならない。すべて、ゼロからの出発でした。
そんな中、石原都知事の講演会に参加したことをきっかけに、構造改革特区を利用して小学校を設立できる流れに乗り、ファンドレイジング(寄付金集め)で7,600万円の資金を調達し、開校にこぎつけました。
子どもたちの姿(YouTubeへリンク)を見ていると、彼らの言語である「日本手話」で教える活動が、日本中に広がってほしいと思いますね。
仲間に社会保険労務士がいて、会計事務所を紹介してもらったんです。活動を進めていくうちに、さまざまなつながりができて、「ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京」(SVP東京)と出会ったのが大きいですね。ここは、社会的な課題の解決に取り組むソーシャルベンチャーを支援する団体ですが、会計や事業計画作成のノウハウだけでなく、資金まで提供してくれるんです。ここで、(株)ファンドレックスの鵜尾氏と出会い、寄付金集めのコツを学びました。日本財団が運営するCANPANを紹介していただいたのも、大きいですね。NPOの活動をブログで発信することによって、より多くの協力者を集めることができました。
CANPANのブログ大賞(YouTubeへリンク)を受賞したことも、出会いをさらに広げるきっかけになっています。ブログから寄付を募るシステムも動き出しているので、今後は有効に活用していきたいですね。
(つづく)
玉田さとみ(たまだ さとみ)/学校法人明晴学園理事、NPO法人バイリンガル・バイカルチュアルろう教育センターディレクター
TBS情報キャスターを経て、放送作家として活躍中。日本で唯一の手話で教育をする学校法人「明晴学園」の立ち上げにかかわり、現在、同校の理事も務める。日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2009」リーダー部門に入賞。活動で得た体験をもとに、各地で講演活動も行っている。
ホームページ | 学校法人明晴学園 http://www.meiseigakuen.ed.jp/ |
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玉田雅己(たまだ まさみ)/NPOバイリンガル・バイカルチュアルろう教育センター代表理事
IT企業に勤務するかたわら、1998年のフリースクール設立構想から、「龍の子学園」の運営に携わる。ろう児に対するバイリンガル(「日本手話」と日本語)、ならびにバイカルチュアル(ろう文化と聴文化)教育の支援や研究活動に取り組む。
ホームページ | 特定非営利活動法人バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター http://www.bbed.org/what_bb_folder/ |
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ブログ | NPOろう学校をいっしょに創ろう!ブログ http://blog.canpan.info/tamatama/ |