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中央大学大学院公共政策研究科委員長 細野 助博さんに聞く

取材・文:村橋保春

【第5回】現場のマネジメントについて

取材日:2008年10月2日

マネジメントは学習する組織

― ネットワーク多摩の活動は、現場での実践が多いと思いますが、そうしたマネジメントはどのようにされていますか。

現場のマネジメントは、かなり難しいものがあります。

われわれは、得意分野をお持ちの方にその分野を任せる方針を持っています。それと、「好きこそものの上手なれ」ということだと思います。

われわれは多摩を良くしたいという目的意識を共有しています。多摩を良くしないと自分達の競争力が弱まってしまうわけですから。そうすると、加盟機関から、それぞれの機関が得意とする分野に長けた人材を、ネットワーク多摩に出向させてくれるのです。ですから、人件費はほとんどかからない組織です。経理に関わる業務は信用金庫からの出向者が、大学との折衝は大学職員の出向者が当たる。司(つかさ)、司で得意とする人たちが当たってくださっています。

組織全体のマネジメントは事務局が統括しますが、多摩検定や再チャレンジ事業などは事業ごとにそれぞれがマネジメントしています。

― 最前線の事業を担当するマネージャーはどのような人ですか。

本質的な問題ですね。どの事業もスピードが大切です。そうした観点から、民間から来ていただいた人にマネージャーを担当してもらっています。

民間からの出向者にマネージャーになってもらっています。後は民間での事業経験のあるボランティアの方ですね。新聞社におられた方や、広告代理店におられた方などが支援団体を通じてお手伝いに来てくださります。理念に賛同してご参加くださる。お金じゃないよ、といって手伝ってくださる。この部分が結構大切なのではないかと考えています。

― 確かに、これだけの人を正規に業務してもらうと相当に費用が必要となりますね。

細野さん

私は今、加盟組織を88から100に広げていこうと考えています。

これだけ大きく事業を行なっていますが、人材が何人も必要、大きな金額が必要と考えるのではなくて、みんなが少しずつ協力し合うことで事業を成し遂げる仕組みにしたいと思っています。そのためには組織のボリュームは大きくすることが大切です。

10人であればそれぞれ10の力を出さなければならないところを、100人にすればそれぞれ1の力でいい、200人なら0.5の力です。なるべくコストを安くし、効果を上げる方法を行なうことですね。

スケールを大きくするというのは、個別の負担を小さくすることと捉えてください。

それとスケールが大きくなることでいろんな人材が関わってくださることになる。そうするとなにか事業をしたいときに、柔軟に事業を組み上げることができます。先ほど申し上げたとおり、好きこそものの上手なれが実行できるわけです。一人で10の負担は受けられないとしたら、三人が協力して実行することができるわけです。

― スケールを大きくして、人材を集めて、ふさわしい事業を実施する。こうしたことは、多摩地区だからできるというのではないですか。いろんな地域では、人材難が大きな問題となっていますが......。

多摩だからというのではないですよ。

これはやりようです。ネットワーク多摩も、学習組織なんですね。いろんなことをやっていくうちに、徐々に教育されていきます。自発的に学習していく部分もあります。やっていくうちに、社会的意義を感じ、よりふさわしい方法を考え、変わっていくんですね。

一番いい例は、大学のトップですね。組織が設立された頃は、ネットワーク多摩はどんな役に立つのだろうと考えていたと思いますよ。議論をしていくうちに、こうした組織は大切なんだとしっかり認識するようになりました。

「学習する組織」であり続けることが大切ですね。

― 「学習する組織」ですね。しかし、地域では人材がいないといつも話しています。

それは違います。人材がいないのではなく、人材を作っていないことに問題があるのです。

私はぜひ人材を作りなさいといいたい。活動していくうちに、活動に参加する人たちは賢くなっていくんです。

人材がいないというのではなく、自分自身が人材になるように努めていただきたいですね。

本当の人材は教師です。そして教えることとは、教えられることでもあるのです。教えることを通じて自分自身も育つんですね。母親は子供に対する一番の教師だといいます。母親は子供を愛しながら、試行錯誤をしながらも一生懸命育てている。だから、子供からもいろんなことを学ぶんだと思います。

私もネットワーク多摩の活動において、いろんな失敗をします。若い人たちにだめですよって言われます。そんなときには素直にどうしたらいいか彼らに教えてもらいます。そうして成長していくんですね。

そうした失敗をするからこそ、楽しいんです。全てが見えている、いつも百点だったら楽しくないはずですよ。そう考えながら、人材として育っていってもらいたいですね。

まちづくりも人材と同じく常に百点満点でなく、成長過程にあり、未完成なんですね。未完成であるからこそ、ダイナミックであり、面白いんです。

京都や金沢のように、古くから成長と続けている都市は、常に新しいものに取り組んでいます。ものづくりにも熱心ですよね。こうした気持ちが大切なんです。

(つづく)

細野 助博さん/中央大学大学院公共政策研究科委員長、同大学総合政策学部教授

細野 助博(ほその すけひろ)/中央大学大学院公共政策研究科委員長、同大学総合政策学部教授として、専門分野である公共政策、都市政策を中心に研究。
所属学会は、日本公共政策学会元会長、多摩ニュータウン学会会長、日本計画行政学会常務理事、公共選択学会理事等。公的役職につきましても、財務省財政制度等審議会たばこ等事業分科会長代理、元八王子市教育委員、(財)流通システム開発センター理事、(社)学術・文化・産業ネットワーク多摩専務理事、ほか多数の要職を歴任。主要著書として、『科学技術の公共政策』、『中心市街地の成功方程式』、『政策統計「公共政策」の分析ツール』、『実践 コミュニティービジネス』、『スマートコミュニティ』など著書多数。