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中央大学大学院公共政策研究科委員長 細野 助博さんに聞く

取材・文:村橋保春

【第3回】オフ・キャンパスで地域とつながる

取材日:2008年10月2日

オフ・キャンパスの意義と発展

― ネットワーク多摩の誕生は極めて戦略的だったのですね。

いまでは、いろんな活動をしています。多摩の大学に来るとこんないいことがあるんだということをわかってもらうことが大切です。

経済情勢が厳しくなってきていますから、それぞれのご家庭はできれば自分達の子供は自宅から通ってほしいと考えますね。交通網は都心を中心に放射状に整備されています。そのため、埼玉や千葉の家庭の学生さんは都心の大学へは通うけれども、多摩には来てくれない。

そこで我々は考えを進めたわけです。大学生にとってキャンパスだけが教室ではないのだ。むしろ教材はまちにたくさん転がっており、まちがこれからの教育の現場であると考えましとか。こうしたことを「オフ・キャンパス」教育というんですね。

― オフ・キャンパスですか。

そう、オフ・キャンパスです。われわれはオフ・キャンパス教育こそが、これからの大学のあり方だと考えました。そうすると大学の先生だけが教育するのではなく、まちの人たちにも教育してもらおう。つまり、社会人基礎力というものがありますが、挨拶をしてみたりとか、ちょっと勇気を持って聞いてみたりとか、まちのイベントに参加してみたりとか。こうしたことは大学の先生より、まちの人たちのほうがしっかり教えてくださる。

そこで、学生をインターンシップさせるように考えたのです。

もうひとつ考えたのが大学での勉強のあり方です。偏差値教育で大学に入るための勉強を重ねてきたけれど、大学に入ってもっと深く勉強してほしい、そうしたことに気づいてほしいと考えました。このために、例えば、マスコミの第一線で活躍している人たちから話を聞く講義の場合、これを受講するのは中央大学の学生ばかりでなく、多摩地区のほかの大学も聞くことができる。インターネットを使って講義室には来られない学生も聞くことができる。質問がある場合にはコンピュータや携帯を使って対応できるようにしている。そうすると、偏差値の低いとされている大学の学生が、こんないい質問をするのか、といった経験をすることが生まれる。これはいわば教育革命ですよ。

― 偏差値で人を判断してきた学生の方々にとっては、根本的に考えが改まることになるのですね。

そうです。その上、単位互換協定も結んでいます。そうすると、あそこの大学の先生はいい事業をやっているのでぜひいってみようということになり、大学の先生の側もいろんな刺激を受ける。大変いいことなんですね。

大学の先生も大学の名前で仕事しなくなる。当たり前のことですが、これまで以上に勉強しなければならなくなる。いいことでしょ。競争原理が働くわけです。

― ネットワークを活かすことにより、関係者の活気が生まれてくるわけですね。

大学職員の活性化にも役立っています。

大学というところは教員が決定権を持っていますが、情報は職員が持っています。

ネットワーク多摩では、発言権に関して言えば教員と職員がともに一票ずつの持っているのと同じなのです。縦の系列の組織に横の連携ができてくる。そうすると、職員の能力開発にもつながってくるわけです。

― 関係者一同、動き出していますね。

多摩・武蔵野検定公式テキスト

面白いところでは、多摩・武蔵野検定(通称タマケン)というご当地検定をやっています。

生涯学習ですね。多摩を愛してもらって、魅力を再発見してもらって、といった感じで、遊びながら検定を受けてもらおうと考えています。

検定では、併せて人材のデータベースを作って、各自治体に紹介ができるようにしています。多摩を再発見してもらうとともに、多摩にいる人材を再発見することも狙いとして行なっているのです。

― いろんな仕掛けを織り込んでおられますね。

そうです。多摩武蔵野検定では、3級は一般向けですが、2級、1級は実は行政人向けなんです。

多摩地区は30の市町村があります。私は自治体の数が多すぎると思うんです。多摩地区全体で四百万人住んでいながら、最大の都市が八王子の56万人で、百万都市がひとつもないのはおかしいと思います。一つ一つの自治体の規模が小さすぎるのです。やはり臨界的な都市規模というのがある、一つの自治体の規模は20万人とか30万人とかが理想かもしれません。

少なくとも、現在の規模の自治体の中で、オレは自分の市のことは知っているが隣ののことは知らないということはふさわしくない。多摩武蔵野検定を受けることで、隣接する自治体のみならず多摩地区全体についての理解を促す。広域行政の素を培っているわけです。

大学もナショナリズムに走るのではなく、ともに智恵を出し合って多摩を良くしていく。各大学から優秀な人を出してもらって、人智を結集して多摩学という地域に特化した学問を作っていく。これから学術会議を作っていくのですが、こうしたことで地域の抱える問題を積極的に解決していこうと考えています

だから、88団体も加われば何でもできるわけです。

(つづく)

細野 助博さん/中央大学大学院公共政策研究科委員長、同大学総合政策学部教授

細野 助博(ほその すけひろ)/中央大学大学院公共政策研究科委員長、同大学総合政策学部教授として、専門分野である公共政策、都市政策を中心に研究。
所属学会は、日本公共政策学会元会長、多摩ニュータウン学会会長、日本計画行政学会常務理事、公共選択学会理事等。公的役職につきましても、財務省財政制度等審議会たばこ等事業分科会長代理、元八王子市教育委員、(財)流通システム開発センター理事、(社)学術・文化・産業ネットワーク多摩専務理事、ほか多数の要職を歴任。主要著書として、『科学技術の公共政策』、『中心市街地の成功方程式』、『政策統計「公共政策」の分析ツール』、『実践 コミュニティービジネス』、『スマートコミュニティ』など著書多数。