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中央大学大学院公共政策研究科委員長 細野 助博さんに聞く

取材・文:村橋保春

【第1回】流通政策から考える連携の大切さ

取材日:2008年10月2日

今回は中央大学大学院公共政策研究科委員長 細野 助博先生をお伺いしました。先生は大学の中での研究、教育にとどまらず、積極的に社会の現場に出向き、実践につとめておられます。産学官の連携など、その後活躍ぶりをお伺いいたしました。

流通から学んだ連携の大切さ

― 細野先生は、大学で研究実績をあげられておられますが、国の審議会などの公的役職につかれ、その上、大学と地域社会との連携にも関わっておられます。どのようなお考えから、そうした活動をすすめておられるのですか。

細野さん

私は大規模小売店舗法の時代から流通政策に関わっていました。

なぜかと考えてみると、私自身大学院を出て企業の研究所に勤めていたんですね。コンピュータを売る会社で、研究所では産業部門を割り当てられ、私は流通業界を担当しました。

マーケティングの考え方が重要であり、そのために統計パッケージとその使え方をお教えするような仕事をしていました。だけど、それだけでは十分に意味のある仕事にはならない、日本経済はどのようになっているか、特に産業構造はどうなっているか、しっかりと把握しておくことが重要だと考えました。

当時、昭和40年代後半は外資系の流通企業が日本に上陸してくるといった話がありました。当時はジャスコ(現イオン)やイトーヨーカドーばかりでなく、ダイエーやニチイなども元気なときで、いわば流通戦国時代でした。外資にも負けない、もちろん国内のライバル企業にも負けない、各社がそんな気持ちでいましたから、たいそう活気がありました。私自身も流通業界にのめり込んでいきました。

私自身は政策マインドが強かったので、中小店と大規模店との対立図式をどのようにとらえればいいかということについていろいろ考えました。対立図式で考えるのではなく、もっと空間的に捉える、つまりまちづくりの観点で考えていくことが大切なのではないかと考えるようになりました。

商店街の中から大型店を追い出すのではなく、集客装置として捉えることが必要ではないか。空間で考えると、地域間競争、今であれば中心市街地と郊外との競合などが問題となるはずなのに、この観点をしっかり押さえない政策を考えてもあまり意味がないと考えていました。

そんな折、国から支援をもらってアメリカやカナダの大規模ショッピングセンターを見に行くことになったんです。一月半ほどかけて見てきて、これからはショッピングセンターの時代だなと感じました。1980年代から90年代にかけて、アメリカはメガモールの時代でしたから、ほんとうに多くのショッピングセンターができてきたわけです。これが日本に来たらどうなるかなと思っていましたが、実際に日本もショッピングセンターの時代が到来し、中心市街地と郊外の対立する構造が顕著になってきたのですね。つまり、日本も地域間競争の時代となったわけです。

― まさに、今日地域が抱える問題に展開していったわけですね。

しかし、私は1997年、98年とアメリカにいたのですが、その頃のアメリカではメガモール時代はそろそろ終わろうとしていました。ところが、日本ではいよいよ積極的にショッピングセンターを開発し始めていました。アメリカの状況を参考にすると、多く開発されたショッピングセンターは過当競争となり、相互につぶしあうことにあるだろうと考えました。

日本に帰ってみると、大規模小売店舗法はそろそろ店じまいし、中心市街地を重視し、活性化する方向に政策転換を進め始めていました。

― 時代を読んで、軸足を移したということでしょうか。

私は少しあまのじゃくなので、日本はこれからショッピングセンターの開発を本格的に進めていくけど、果たしてうまくいくだろうかと考えていました。

中心市街地に重点をおく中心市街地活性化法だけでこうした社会の流れを変えていくことができるのだろうか。もっと立地の観点をきちんと捉える必要はないのだろうか。ショッピングセンターは大規模なので一市町村だけに判断を任せていいのだろうか。結果を見ると、私の懸念したとおりだったといえます。

広域調整に関する考え方が弱かった、地権者に対する考え方も十分取り組んでなかったと思います。TMOも多くの場合、商工会議所の片手間的なところがあり、それでは商店街で真の意味でコンセンサスを作ることもできない。一方で、ショッピングセンターはひとつの考えでがっちりと事業を進めていくわけですから、勝ち目はないですよね。案の定、2、3年後には、期待する気持ちが地元や行政も含めて、ずっと下がってしまいました。

今度は国が直接指導する体制に変わりました。でもまだまだ不足していることがあると思います。

― 今度はどのようなことをしっかり考えておく必要がありますか。

政策の観点で考えて何が足りないかといえば、データの使い方が足りないといえます。

中心市街地活性化に関わる計画をまとめるとき、記載要件の中に人口などのデータを示してはいますが、一言で人口として取り扱っていることに問題があります。つまり、昼間の人口と夜の人口で違う、郊外の人口と中心市街地の人口も違う、年代によっても違うし、平日と休日でも違う。

政策を考えるときに着目する人口はいろいろ異なるわけです。

このようにしっかりとデータを精査した計画はほとんどなかったですね。これではだめですね。

ですから、大切なことは現実を見て、絵に描いた餅のような計画を立てないようにしなければならない。そのためには官民一体となって、現状分析を行なうデータを持ち寄らなければならないということなのですね。

― 官民連携の大切さですね。

それと、計画ができれば百人の味方を得たというような幻想を抱いたと思いますが、そんなことはないのですね。計画ができたことで、いたずらに期待するのでなく、それを現実のものにするために自分でいかに汗をかくか、が大切です。

地域活性化は他人任せにしたり、国のマニュアルどおりにまとめておけばいいなどと考えたりすることのないようにしなければなりません。

(つづく)

細野 助博さん/中央大学大学院公共政策研究科委員長、同大学総合政策学部教授

細野 助博(ほその すけひろ)/中央大学大学院公共政策研究科委員長、同大学総合政策学部教授として、専門分野である公共政策、都市政策を中心に研究。
所属学会は、日本公共政策学会元会長、多摩ニュータウン学会会長、日本計画行政学会常務理事、公共選択学会理事等。公的役職につきましても、財務省財政制度等審議会たばこ等事業分科会長代理、元八王子市教育委員、(財)流通システム開発センター理事、(社)学術・文化・産業ネットワーク多摩専務理事、ほか多数の要職を歴任。主要著書として、『科学技術の公共政策』、『中心市街地の成功方程式』、『政策統計「公共政策」の分析ツール』、『実践 コミュニティービジネス』、『スマートコミュニティ』など著書多数。