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長野市中心市街地活性化協議会タウンマネージャー 越原照夫さんに聞く

取材・文:村橋保春

【第2回】まちづくりにおけるマネージャーの役割

取材日:2008年9月9日

タウンマネージャーが果たす役割

― まちづくりの取組に関して参考となるヒントを数多くお聞かせいただきました。誠ににありがとうございます。

 それでは、まちづくりにおけるマネージャーの役割についてお話を伺いたいと存じます。まちづくりの成功事例として取り上げられる都市は、必ずといっていいほどご活躍されているマネージャーがおられます。言い換えれば、まちづくりの成否はふさわしいマネージャーにいかに活躍してもらうかと言うことかもしれません。

 越原さんは経済産業省の中心市街地活性化に関わる委員会をはじめ、国や自治体などでまちづくりのマネージャーの役割、あり方についてご意見を述べられておられます。越原さんがお考えになるマネージャーの役割とはどのようなものでしょうか。

越原照夫さん

私は、長野市でタウンマネージャーという仕事に就く前は、民間の流通企業で、店舗の開発運営はもとより、関係会社の管理や新規企業を立ち上げ、軌道に乗せる事業など経営に関わる業務を数多く関わってきました。こうした経験はタウンマネージャーとしての業務に関して、本当に役立っています。 実際のマネージャーの役割を、具体的に話すとなると、それは膨大なものとなります。ここでは、大きく2点に絞ってお話しします。

1つ目は合意形成です。長野市は中心市街地活性化法に基づく基本計画が認定されています。タウンマネージャーは、この基本計画に基づいて、登載された事業をきちんと進めていくことが重要な役割といえます。関係者間の合意を適切に形成していくこと。「合意形成」は言葉としては短く簡単ですがこれを的確に行うには、単なる知識やノウハウだけでなく、良好な人間関係を形作り、相互に協力し合うコミュニケーションを作り上げていく必要があります。テキストに書いてあることを、現場に持ち込んだだけで合意形成はできません。関係者間で、素直に夢を語り合うこと、そして少しずつ具体化を進めていくことが大切です。こうしたマネジメントは、現場で数多くの経験を重ね、それぞれのマネージャーが実感を持って体得していくものといえます。

2つ目は、現実の経営です。当社も、TOMATO食品館事業、ぱてぃお大門蔵楽庭事業、共通駐車サービス券事業などを実施しています。いずれの事業も従事する方々がおられ、そうした関係者に相応の事業機会や給与等を提供しなければなりません。ふさわしい売上げや利益が求められる事業であり、事業自体も成長することが期待されます。適切な経営がなされ、ゴーイングコンサーン(企業が将来にわたって永続的に活動し続けること、またそうした継続性が企業の社会的責任であること)の観点が重視されます。企業は企業として的確に活動するためには、経営概念の活用は不可欠です。まちづくりは単に理念にとどまらず現実の経営を行うものであること、その経営を担うのがマネージャーであることをしっかり理解しておくことが重要です。

タウンマネージャーに求められる人物特性、ノウハウスキルなど

もんぜんぷら座

― マネージャーの役割として、合意形成、現実の経営の2点を挙げていただきましたが、これだけでもう大変レベルの高い内容であると思います。

 こうした役割を担うためには必要な人物特性やノウハウスキルは、かなり間口が広い総合的なものであるとともに、具体的な問題解決に対応できる専門性も求められることが想像されます。

 越原さんのご経験を踏まえて、そうした人物特性、ノウハウスキルをどのように修得していけばよいか、ヒントをお教え願えますか。

まちづくりはたとえば法律だけ、建築だけ、経営だけなど、特定の専門性だけで実施できるものではありません。まちづくりは地域の生活に密着する部分が多く、業務として親しみやすく、取り組みやすいとみなされることも多いかと思います。着手することと、実際に継続して事業を実施し問題解決していくこととはまったく異なるものであると捉えることが必要です。まちづくりには数多くの人たちに積極的に関わっていただくことは何より大切です。ただし、マネージャーはそうした関係者の延長上にあるのではなく、個別の職分として捉えることが必要でしょう。

私がタウンマネージャーを実施するに当たっては、民間企業において、いろいろな業務経験をトータルで経験してきたことが大変役に立っています。店舗の開発運営や関係会社の設立運営、そうした事業を通じて多くの人たちとのコミュニケーションの場を繰り返し経験してきたことではじめて、タウンマネージャーという役割を果たすことができているといえます。人とのコミュニケーションでは、特にお客様がお考えになっていること、つまりお客様の心と同じ心でいかに感じるとるかということにに努め、謙虚に関係を深めていきました。こうした経験を重ねていないと、まちづくりにおける合意形成はできないのではないでしょうか。

まちづくりに関し不可欠なものがあります。「その街にロマンを持つ」ことです。企業と異なり組織化されておらず、関係者はいろんな考えを持って、まちづくりに参画します。思い通りにいくことはほとんどないと考えたほうがふさわしいです。そうしたときに弱音を吐かず、マイナス思考で課題にあたらないことです。ロマンを持つことで、気持ちが強くなり、関係者と共感でき、困難に立ち向かうことができます。

一方、まちづくりに関わるマネージャーの基盤は経営的センスです。目標を設定し、その目標をきちんと実現する経営が求められます。マネージャーですから自ら事業に実施するばかりではありません。マネージャー自身やることも大切ですし、関係者にやらせてみてその内容を確認し、しかるべき方向付けできることが大切です。

(つづく)

越原 照夫さん/長野市中心市街地活性化協議会タウンマネージャー

越原 照夫(こしはら てるお)
平成13年1月ジャスコ株式会社(現イオン株式会社)を退職後、長野商工会議所が設立したTMOに設立時から参加。

長野市の大型空き店舗等活性化事業の具現化等、全国のまちづくりの先進事例にも関与。現在長野市中心市街地活性化協議会タウンマネージャーとして、長野市のまちづくりを推進。