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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部 客員教授 竹内利明さんに聞く

取材・文:高橋 美紀(中小企業診断士)

【第3回】実務を知れば世界が広がる

取材日:2007年12月12日

電通大の客員教授であるとともに、「ビジネス支援図書館推進協議会」の会長でもある竹内利明さん。図書館におけるビジネス支援を切り口に、中小企業診断士の自己研鑽にまでおよぶお話は、示唆に富んだものでした。

ビジネス支援図書館と中小企業診断士

竹内利明さん

― 先生は「ビジネス支援図書館推進協議会」の会長もされていますね。

「公共図書館でビジネス支援を行う」という取り組みを、2000年末から行っています。図書館には膨大な蔵書、情報があります。図書館なら、その蔵書、資料を提示しながら相談に乗ることができます。図書館で相談会を行うことによって、知的基盤を広げていくことができます。

従来はビジネス支援、創業支援と言えばまず商工会や商工会議所の窓口でした。しかし、一般の方にとっては敷居が高い。その点、図書館は土日も開館していて、誰でも入りやすく、親しみがあります。たとえば、ビジネス支援に力を入れている広島市立中央図書館は年間40万人、広島市立図書館全体では年間約300万人が来館しています。広島は100万人都市ですが、これだけ集客できる施設は他にはないでしょう。少なくとも商工会には10,000人も来ないと思います。

このように、図書館は商工会や商工会議所に来る層と違うところにアプローチできますが、内容に関しては、図書館は「入り口」部分しか対応できません。商工会・商工会議所との連携が大切です。図書館は、商工会・商工会議所の営業のお手伝いをしているとも言えるでしょう。

現在、全国でビジネス支援を実施する図書館は200館程度です。図書館は全国で3,000館あり、全体からすればまだ1割にも達していませんが、これからだと思います。

― 中小企業診断士が図書館で相談に乗る機会も増えているようですね。

中小企業診断協会とも連携しています。東京都内では、都立中央図書館、新宿区立中央図書館、新宿区立角筈図書館、三鷹市立駅前図書館で、中小企業診断士の方が無料の相談会を行ってきました。地方では、熊本県立図書館、広島市立中央図書館が同様の取り組みをしています。また、新潟市立中央図書館でも2月20日(水)より実施することになりました。ご協力をいただける中小企業診断協会の支部長さんには、訪問してご挨拶させていただいていますが、今後も積極的にタイアップしていきたいですね。図書館での相談は、中小企業診断士の実務従事のポイント付与という意味合いもありますが、それだけでなく、もっと活躍していただくために、中小企業診断士にもPRしていく場を作って欲しいと、中小企業診断協会にお願いをしています。

アメリカではリタイアした企業経営者らが無料でビジネスコンサルティングを行う「SCORE(スコア)=the Service Corps of Retired Executives)」というものがあるのですが、日本では中小企業診断士が対応すればいいのではと考えています。現在は無料での相談ですが、評価が上がれば、有料化してでもやろうということになるでしょう。

中小企業診断士自らがサービスを使いこなせ

― 図書館にはさまざまな可能性があるのですね。

国立国会図書館も科学技術・経済情報室を中心にビジネス支援に取り組んでいるのをご存知ですか?国会図書館は国内で出版されたすべての出版物を収集・保存していますが、事前に利用者登録したうえで、インターネットで欲しい資料の複写を申し込むと、そのコピーを郵送してくれるサービスがあるのです。特に雑誌は、その特集単位でデータベース化されているので便利ですよ。何しろ、一度も行かなくてもサービスが利用できるのですから。コピー代は必要ですが、数百円から数千円程度で相当の情報を得ることができます。まさに自分の書斎ですね。

― それは便利です。中小企業診断士としても、そういう情報を知っているのとそうでないのとでは差が出そうですね。

情報が不足しがちな地方にいる中小企業診断士ほど、このようなサービスを利用して欲しいと思います。逆に、中小企業診断士がこういうシステムを知らずに仕事をしているとなると、その程度の仕事しかしていないのではないか、と評価せざるを得ません。

商工会の相談員をしている中小企業診断士の方に、データベースの必要性についてお尋ねすることがあります。すると、「うちの地域の中小企業はデータベースなんて使いません、ニーズはありませんよ」と言われます。そのような方には逆に、「あなたはそのデータベースを使ったことがありますか?」と聞きたいですね。自分自身が使ったことがないから、中小企業にも勧められないのではないでしょうか。

― まず中小企業診断士自身がこのような情報を使い、それを中小企業に広めていければ、社会にもお役に立てますね。

中小企業診断士にとっても知的基盤が広がりますよ。中小企業診断士試験も、古めかしい経営理論よりは、このような実務を問うようにした方がいいかも知れません。同じ時間を費やすのであれば、そちらの方が役立つのではないでしょうか。

国会図書館のこのようなサービスについてお知らせすると、「そんなよいサービスがあるのに広報が悪いから知らなかった」と言われることが多いのですが、広報は相手がその情報を欲していなければ、いくら広報しても素通りしてしまうものです。まず、中小企業診断士がサービスの利用者になって、それを伝えていけるようになっていただきたいですね。

経営者と会話のできる中小企業診断士に

― 多岐に渡って活躍されている先生ですが、これまでどのような道のりを歩んでこられたのか、興味深いところです。

竹内利明さん

私の社会人としてのスタートは自動車の二次下請企業の二代目です。高校・大学時代は、学校が休みの日は会社で仕事をしていました。今でもプレス金型のセットや溶接やロウ付けは、下手ですができますよ。ちょうど高度経済成長の時代で、お客様の生産台数の伸びにも引っ張られ、15年ほどで社員数は4倍以上になりました。その後、独立して本当は自分でものづくりの会社を作りたかったのですが、資金的な問題で実現できず、一方でいいご縁に恵まれてコンサルタントの道に入りました。

大学に来たのは、産学連携の重要性が叫ばれるなかで、お声をかけていただいたからです。もともと教育の仕事にも興味があり、企画を提案していったらいつの間にか専任になっていたという感じです。個別企業のコンサルティングは時間がなくてできなくなりました。

― もっとも、大学でもまた別の形で企業と関わっていますね。

私の専門は「中小企業論・ベンチャー論」で、基本的にはものづくり系企業の研究です。年間何十社かお邪魔する機会がありますが、素晴らしい経営者に出会うことができ、多くの感動する機会に恵まれて、とても幸せだと感じています。

先日も地方に行き、とある会社の経営者の方と2時間以上話しこんでしまいました。これだけ話ができるのは、お互いに得るものがあったからだと思います。経営者から学ぶものはたくさんあります。100人の経営者がいれば、100通りの成功の法則がありますからね。だから中小企業診断士ももっと中小企業に出かけて、現場の声を聴くことを心がけて欲しい。それによって実務が分かるようになります。もっとも、中小企業診断士の側も聴くだけではだめです。忙しい経営者が、自分の時間を割いてでも「この人と話をしたい」と感じさせるものがなければ迷惑になります。

ただ、優秀な企業経営者とお会いする機会がないという中小企業診断士もいるでしょう。そういう方は、大学が主催する中小企業経営の研究会に入ることをお勧めします。私も参画している法政大学の「経営革新21」は、毎月優秀な経営者との交流や見学会を開催しています。

また、電通大のインキュベーションマネジャーへのご応募、お待ちしています。現段階では候補者のリストアップという段階ですが、メールで連絡いただければ時間を作ってお会いしていきたいと思います。私達も、意欲的なコンサルタントを育てるお手伝いをしたいと思っています。

― ありがとうございました。そして、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

竹内 利明さん:国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部 客員教授

竹内 利明(たけうち としあき)/1952年生まれ。1976年青山学院大学理工学部卒業。自動車部品メーカー勤務を経て、1991年に陽明エンジニアリングを設立。2000年より電気通信大学共同研究センター客員助教授に就任、2003年に客員教授に就任。2005年より特任教授を経て2007年より現職。法政大学大学院イノベーション・マネージメント研究科客員教授を兼務。ビジネス支援図書館推進協議会会長、多摩起業家育成フォーラム企画広報委員長、特定非営利活動法人全国異業種グループネットワークフォーラム理事。中小企業政策の各種委員会の委員、委員長を歴任。

【国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部】
http://www.uec.ac.jp/corpo/commu.html
【ビジネス支援図書館推進協議会】
http://www.business-library.jp/