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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部 客員教授 竹内利明さんに聞く

取材・文:高橋 美紀(中小企業診断士)

【第2回】中小企業診断士に求めるのは「ビジネスモデル化支援」

取材日:2007年12月12日

電通大において産学連携を推進している竹内利明さん。今回は大学における「ものづくり」「人材育成」に関する取り組みをおうかがいしました。あふれんばかりに出てくるアイデア、そして具体的な構想。まさにこのような発想力や組み立て力が、中小企業診断士に求められていると言えそうです。

大学発ベンチャーの可能性

竹内利明さん

― さて、大学での先生のお仕事についてもお聞かせ下さい。理工系専門大学である電通大では大学発ベンチャーの創出について、どのように取り組まれていますか?

2001年に打ち出された「新市場・雇用創出に向けた重点プラン(平沼プラン)」では、大学発ベンチャーを3年間で1,000社創出することを掲げていました。「数」を公約したのです。これに対して「1,000社生まれて何社生き残るんだ」という議論はありましたが、何でも底辺を広げなければ、ピラミッドは高くならないでしょう。その点では、着実に前進していると感じます。

電通大のインキュベーションは二つのタイプを想定しています。一つは従来型の、大学発の技術シーズを実用化するもの。もう一つは、企業との共同研究型のベンチャーで、これからは後者に力を入れたいと思っています。予算的な裏付けはまだ検討中ですが、ぜひ実現させたい。

共同研究型のベンチャーについては、マーケットニーズを捉えている創業意欲の高い起業家の方で、うちの大学が技術面でお手伝いをしたら伸びると思われる方に、「電通大の教員や学生と連携しませんか」とお誘いしたいと考えています。創業、第二創業、新規事業の立ち上げなどを考えている、意欲の高い起業家や企業家とご一緒して、それら企業の持っているものに電通大の技術を付加して大きく伸ばしていきたい。もちろんそういう方は待っていても来てくれませんから、インキュベーションマネジャーに、積極的に営業に行かせます。

ここで成果が出たら、従来型のベンチャーも相当刺激を受けると思います。教員や学生にとっても勉強になるし、それが共同研究型ベンチャーにも良い影響を与える。相乗効果が得られます。

そのうち事業が軌道に乗って、大学を巣立つとき、調布周辺で開業すれば、これこそ本物の「産業クラスター」が形成されると思います。幸運なことに、電通大の近くには、マイクロソフトの開発センターがあり、インターンシップの受け入れなど、ネットワークがあります。情報系の企業が集まったクラスターが、自然発生的に形成できればいいですね。

ビジネスモデル化の支援が大切

― 大学発ベンチャーに対して、中小企業診断士がお役に立つとすれば、どのような領域でしょうか。

ビジネスモデルの組み立て支援をお願いしたいですね。中小企業のコンサルで最も重要なのは、「売る仕組み」、すなわち売れて利益の出る仕掛けづくりと販路の開拓でしょう。特に大学発ベンチャーは、この分野を苦手としています。

ただ、中小企業診断士の方でもこれを得意としている方はあまりいないように感じます。大企業出身の方は特に、ご自分でこれをゼロから作り上げる、という経験をしていないのではないでしょうか。「自分の出身企業を紹介できますよ」というレベルではコンサルにならないのです。やはり実際に現場でやってみて、問題点を拾って、ビジネスモデルを修正していく、という作業を一緒にやってくれる人がありがたいです。

― 「同じ目線で考える」ことがポイントなのですね。

実際にやったことがないのに、「こうしなさい」と指示するだけでは、信頼されません。大企業なら企画がしっかりしていれば運営は優秀なスタッフが担当してくれたのでしょうが、中小企業では、自ら企画したものを自ら中心になって担当者とコミュニケーションをとって運用して成果を挙げる必要があります。大学でも、学生の講義を企業や企業OBの方に手伝ってもらうことがあるのですが、「上から目線」でものを言う人には学生はついていきません。コンサルタントもまさに同じだと思います。

電通大のキャリア教育

― 産業界の方に大学のキャリア教育をお手伝いいただいているのですよね。

竹内利明さん

「理工系専門大学における1年生から始める産学官連携によるキャリア教育」を行っています。学生は、入学直後は非常に意欲が高いのですが、入試という目標を失ったあと、次の目標を見出せないでいると勉学に対する意欲が低下していきます。しかも、ゆとり教育の影響で、高校で学んできた絶対量が少ない。一方で、先端技術はどんどん進歩しているので、大学3年生の専門課程進学までに勉強しなければならないことが毎年増えている。漠然と過ごしたのでは、とてもついていけません。

「キャリア教育」では、1年生の最初から「将来をどうするのか」という目標を考えさせます。それによって、意欲的に大学生活を送ってもらうことを狙っています。ですので、就職活動支援とは違います。

今年で開始3年目になり、昨年度からは文部科学省の財政的支援も受けられるようになりました。現在、産業界のOB人材を中心に22名の方に、有償ボランティアをお願いしています。ワークショップでは、ファシリテーターを務めていただきます。電通大らしいのは、携帯電話を使って出席を取り、授業の質問や感想も携帯電話を利用し、ウェブのマイページにアップさせます。それを担当のボランティアが見て、質問に答えたり、アドバイスしています。このような双方向のコミュニケーションが特徴です。また、ボランティア本人の個性や価値観によって指導内容に差が出過ぎないように、複数の教員がそれを確認するようにしています。

― きめ細かく支援されているのですね。

具体的な目標を見つけられれば人は動きます。どの世界でも同じですね。

竹内 利明さん:国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部 客員教授

竹内 利明(たけうち としあき)/1952年生まれ。1976年青山学院大学理工学部卒業。自動車部品メーカー勤務を経て、1991年に陽明エンジニアリングを設立。2000年より電気通信大学共同研究センター客員助教授に就任、2003年に客員教授に就任。2005年より特任教授を経て2007年より現職。法政大学大学院イノベーション・マネージメント研究科客員教授を兼務。ビジネス支援図書館推進協議会会長、多摩起業家育成フォーラム企画広報委員長、特定非営利活動法人全国異業種グループネットワークフォーラム理事。中小企業政策の各種委員会の委員、委員長を歴任。

【国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部】
http://www.uec.ac.jp/corpo/commu.html
【ビジネス支援図書館推進協議会】
http://www.business-library.jp/