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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部 客員教授 竹内利明さんに聞く

取材・文:高橋 美紀(中小企業診断士)

【第1回】中小企業が変わるには優秀なコンサルタントが必要

取材日:2007年12月12日

あるときは「中小企業・ベンチャー論」を専門とする大学教授として、またあるときは起業家を支援する立場で、中小企業や中小企業診断士と関わっている竹内利明さん。中小企業診断士に対する思いや、プロのコンサルタントが活躍できる土壌作りの必要性を語ってくださいました。

中小企業診断士の印象は

― まず、中小企業診断士にはどのようなイメージをお持ちですか?

竹内利明さん

非常に難しい仕事だと思います。コンサルタントは、企業の経営者と信頼関係ができてはじめてスタートできるもの。定例的な業務があって、その受注をきっかけにコンサルティングに繋げることができる税理士や社会保険労務士などとは大きく違います。優秀な方も多いと思いますが、試験に受かって資格を取ったからといって、すぐにコンサルティングができるわけでもないので、ハードルの高い仕事だと思います。

もう一つ思うのは、名前と実体の違いです。名前が「中小企業」診断士でありながら、現時点での活躍のフィールドは大企業の方が多いのではないかと感じています。実際に多くの中小企業診断士の方は大企業出身で、独立後も大企業のプロジェクトや企画の一部を請け負う形で活躍している方が多いのではないかと推察します。大企業にとっても、ノウハウの活用や人件費の節約という点でメリットがあるのでしょう。ただ一方で、中小企業に対して力を発揮している中小企業診断士の方は限られているように思えます。

― 確かにその通りだと思います。その背景にあるものは何でしょうか?

大企業と中小企業では、仕事の進め方が全く違うのです。かつて日本の中小企業は「下請」が成功モデルでした。1980年代までは、親会社の指導を受けて、下請に徹することが成功する中小企業のビジネスモデルでした。したがって、外部のコンサルが活躍できる余地はほとんどありませんでした。

ところが、1980年代に日本が欧米に追いつき、「キャッチアップ経済」から「フロントランナー経済」に転換するなかで、従来の下請構造の一部が崩壊して、中小企業は独自の技術や商品を持ち自立化する必要に迫られました。すなわち、自立型の中小企業を目指すなら、親会社という「上得意」に頼ることが出来なくなり、生産管理、品質管理、開発等を自分達で行わなくてはならなくなったのです。親会社に頼れなければ、経営資源が不足しがちな中小企業としては外部のコンサルタントの力を借りる必要が出てきます。今まさに、多くの中小企業が、「失われた90年代」を経て、この方向転換の必要性に直面しているのです。

― そこに、中小企業診断士のビジネスチャンスもあるのですね。

ただし、まだ日本の中小企業はコンサルタントを使いこなす、というレベルに達していません。これまで親会社が無料でコンサルティングをしてくれていたので、中小企業自身が知的なノウハウに対してお金を払う意識がないのです。だから、中小企業をコンサルティングできる人材も育たない。

ただ、中小企業が、自らの足りない経営資源を補完していかないと生き残れないことは明白です。企業同士の連携であったり、産学官の連携であったり、コンサルティングという形での知的基盤の支援を受けることが重要なのです。中小企業の経営者の多くは、まだそれを認識できていませんが、良いコンサルタントが入って、それを打破してくれることを祈ります。

幸い、中小企業創造活動促進法、中小企業経営革新支援法、中小企業新事業活動促進法といった国の施策によって、日本の中小企業の開発のレベルは相当上がってきました。あとはその開発を事業のなかでどう活かすか、ビジネスモデルの構築が重要です。国、自治体には、たとえば「中小企業が無料でコンサルティングが受けられる」というような施策を再検討してもらって、「中小企業のコンサルティング=無料」というイメージを払拭したいですね。中小企業診断士側にも無料だからという甘えがあるように感じることがあります。

中小企業、中小企業診断士、政策、それぞれが変わってはじめて、日本でプロのコンサルタントが活躍できるような土壌が作られるのではないでしょうか。

「インキュベーションマネジャー」を募集します

― 非常に重要なことですね。ただ、若手の中小企業診断士を中心に、なかなか経験を積む場がないことも事実であり、悩むところです。

ここで、電気通信大学(以下「電通大」)の取り組みをご紹介します。来年度(平成20年度)からインキュベーション施設を設置してベンチャーの育成に取り組もうと、現在、最終的な調整を行っているところです。そこで、中小企業診断士やMBAホルダーの方などをインキュベーションマネジャーとして受け入れたいと思っています。気持ちの若い、独立志向の強い中小企業診断士が採用できればいいですね。

フルタイムではなく、たとえば週40時間のうち20時間を大学に来てもらい、あとは外のお仕事をしていただくということを考えています。これは、「あなたのエネルギーのうち半分を大学のために費やして下さい」という意味です。大学の中で仕事をするのは、中小企業診断士にとってもよい経験となるでしょうし、信用にもなります。一方、外部での経験も大学にフィードバックしていただきたい。1年契約での更新を想定していますが、外の仕事が忙しくなったら「卒業」して、次の方にバトンタッチしてくれればいい。そして、今度は専門家という形でネットワークが構築できれば嬉しいです。

これは、アメリカの「Small Business Development Center」(SBDC)という中小企業政策をヒントにしたものです。アメリカでは、MBAホルダーがまず安い給与で大学に雇用されて、経験を2~3年積んだ後、他の企業にヘッドハンティングされていきます。大学で経験と実績を積むことで、現場の思いがわかる優秀なコンサルタントが育っていっています。それを日本でもやりたいですね。手を挙げてくれる中小企業診断士がいることを願っています。

中小企業診断士も中小企業と同じ!?

― 中小企業診断士にとっても、選択の幅が広がるのはありがたいです。あとはそのチャンスを中小企業診断士がどう活かすかが課題ですね。

竹内利明さん

そのためには、それぞれの中小企業診断士が絶対的な強みを持つことが大事だと思います。中小企業診断士が自己紹介で、「何でも相談してください」と言うケースが多いように思います。そう言われた瞬間に、「あぁ、この人には頼みたくない」と思ってしまいます。おそらく「食べていくために何でもやらないといけない」という意識が染み付いているのでしょうが、これは一番使ってはいけない言葉ですね。自分には強みはありませんよ、と言っているようなものです。

少なくともこれからは「何でも屋さん」ではやっていけないと思います。私も若い頃、コンサルタントの仕事をしていたときは、お客様からの質問にその場で答えられなかったら一晩で調べてあげて翌日は、あたかもその分野の専門家のようにお話しする、ということを経験しています。確かにそのような努力は大切ですが、それも限界があります。

中小企業がニッチなところで生きていかなければならないのと同じで、中小企業診断士も絶対的な専門性を確立しなければなりません。「この分野なら絶対に負けない!」というマーケットを持たなければ生き残れないでしょう。逆に、そんな中小企業診断士同士が連携したら、こんなに心強いことはありません。

― 中小企業診断士も中小企業と同じですね。

そうです。なのに、「仕事のできる親分にくっついて、何でも言うことを聞く」のが、仕事を取れることだと信じている中小企業診断士もいるのではないでしょうか。「大企業と下請」というかつての日本の企業構造と同じで、変わらなければなりません。

竹内 利明さん:国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部 客員教授

竹内 利明(たけうち としあき)/1952年生まれ。1976年青山学院大学理工学部卒業。自動車部品メーカー勤務を経て、1991年に陽明エンジニアリングを設立。2000年より電気通信大学共同研究センター客員助教授に就任、2003年に客員教授に就任。2005年より特任教授を経て2007年より現職。法政大学大学院イノベーション・マネージメント研究科客員教授を兼務。ビジネス支援図書館推進協議会会長、多摩起業家育成フォーラム企画広報委員長、特定非営利活動法人全国異業種グループネットワークフォーラム理事。中小企業政策の各種委員会の委員、委員長を歴任。

【国立大学法人電気通信大学 産学官等連携推進本部】
http://www.uec.ac.jp/corpo/commu.html
【ビジネス支援図書館推進協議会】
http://www.business-library.jp/