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(株)沖縄物産企業連合 代表取締役社長 宮城弘岩さんに聞く

取材・文:井海 宏通(中小企業診断士)

【第2回】(株)沖縄物産企業連合の経営手法

取材日:2007年10月13日

市場の下降局面における経営

― (株)沖縄物産企業連合の近況を教えてください。

宮城弘岩さん

沖縄ブームの流れに乗り、2003年11月に新宿、2004年5月に横浜、2004年11月に神戸市でそれぞれ店舗をオープンさせました。もともと沖縄ブームは近い将来に終わると読んだ上での出店だったのですが、実際には予想より10カ月早く2005年1月にブームがピークを迎え、その後は下降に転じました。ピーク時はパートを含めて250人の社員がいましたが、今では180人です。

神戸店などは出店からブームのピークまで2カ月しかなかったものですから、赤字幅が少なくありませんでした。今は2店舗は撤退完了しています。会社全体としては今年から本格的な黒字になる予定です。

― 市況が上昇から下降に転じて社内状況はどうなったのでしょうか?

上昇気流しか知らない人の処遇が問題になりました。会社が上昇局面の時と下降局面の時とでは、必要とされるメンバーが違います。それぞれ"人種"が違うと言ってもいい。上昇局面の時の社員を無理に現状に合わせようとすると慌てて不安定になります。追い風を受けて仕事をすることに慣れてしまって苦労を経てきていませんので、戸惑ってしまってなかなか動かない。「急げ」といえば慌てる。今では通用しない過去のやり方を押し通そうとするのです。

これは無理もない話です。何しろ、私が第三セクターの沖縄県物産公社を立ち上げ、沖縄の歴史で初めて物産が産業化されて以来、下降局面は初めて経験していることですから。

結局、経営は人の問題が大きい。事業を作りだすのはそれほど難しくはありません。時代の変化の中で次々に事業を生みだし、いかに人々を適合させていくかというのが重要です。会社の状況が変わっても守旧派が中途半端にしか適合しないのです。"イケイケドンドン"型の人は努力しないし苦労をしたがりません。新規の採用をしない状態で古い人が自然に退職していき70人くらい減りました。

人を管理せず仕事を管理する

― 社内の管理はどのようにされているのでしょうか?

宮城弘岩さん

3年前からは「指導(lead)」という概念を取り入れています。人は命令で動くとは思いませんし、やらないと叱られるから動くとも思っていません。あくまで自主的に動く人をまとめるのが大切です。そして、それを間違わない方向に引っ張って行くのが経営者の仕事だと考えています。

その実践として、社内のキーパーソンに部下を指導させています。具体的には、部下と一緒にお客様を訪問させて共通の価値観を創造させるように仕向けています。社員は命令しても自発的に動くものではありません。情報を流しただけでも動きません。方針や流儀といったものについて共通認識を持って初めて、人は自分から動きます。

― 地元のメーカーとの折衝方法も変わってきたのでしょうか?

去年から"選択と集中"を推し進めています。その際、社員には、商品で判断せず経営者で判断するように言っています。経営者で判断するというのは、その理念、姿勢、生き方を評価するということです。クレームがついた時に逃げたり言い訳したりする経営者は相手にしてはいけません。厳しい条件を課しながらも、それでも我々についてきたメーカーは皆儲かっています。言ってしまえば、提携先の選定を、経営者選びに切り替えたということですね。

また、これは社員の時間管理になるのですが、いかに重要な仕入先や得意先に時間を投入するのかが大切で、6月からは「儲からない相手に時間を割くな」と厳命しています。

人間が人間を管理することはできません。しかし、人間が仕事を管理することは可能です。仕事を与えて仕事を管理する。例えば進捗状況や時間配分などです。

― 最近ではIT化にも力を入れておられるようですね。

IT化は3年前から手掛けていて、そろそろ完成に近づきつつあります。売上が増えると正比例して受発注の人間が増え、回線や用紙が増えていきます。また、従来は、発注管理が不十分であったため、一社員の独断で無駄な発注を掛けてしまったり、IT化が遅れていて月次決算ができていなかったので、損益を無視して賞与を出してしまったりしていました。そういった問題を解決するために、IT化に取りかかりました。

まず、人や物が動くと、それが損益計算書に即反映されるように基幹システムを構築しました。その結果、損益の情報が日次で得られるようになりました。また、紙の請求書をなくしました。従来は仕入先からの二重請求などが多かったり、いつも末日になると資金が足りなくなったりしていましたが、IT化によって売掛・買掛の管理が正確にでき、毎日の資金繰りが見えるようになりました。

あとは、ロジスティクスにITを活用しつつあり、9割方完成しています。2年前までは県内大手製造業は弊社への対応に最低2人の担当者を配置する必要がありました。注文手段も電話やFAXなど様々であり、在庫の有無に合わせてやり取りも増えてきました。あまりにも非効率なので、電子化を進めてきました。今では注文ルートはEDIに一本化され、メーカーの負担が大幅に減っています。

この次の段階としては、マーケティングにITを活用したいと考えています。

― 今後の事業展開はどうお考えでしょうか?

この業界は、新しい事業を次々と起こしていかないと失速していきます。今後は自社の事業ドメインは守りながらも、いろいろなことをやっていきます。最近は例えば、他地域と提携することが増えました。北海道や山形などは地理的に離れているので、沖縄とは競合しません。そういった地域との相互乗入のお店や、台湾における秋田や岩手のコメの販売代理を進めています。

"外部"については事業の流れを読んで状況変化に対応し、"内部"については指導によって組織を変えていく。その両方でもって再び上昇に転じたいと考えています。

宮城 弘岩さん:(株)沖縄物産企業連合 代表取締役社長

宮城 弘岩(みやぎ ひろいわ)/1940年生まれ、沖縄県南風原町出身。早稲田大学、国立台湾大学経済学研究所(修士)卒業。国際監査法人プライスウォーターハウス、(株)山崎鉄工所(ロボットメーカー、現ヤマザキ・マザック、在名古屋)、(社)沖縄県工業連合会専務理事、同副会長、(株)沖縄県物産公社代表取締役専務を経て、現在、(株)沖縄物産企業連合代表取締役。(社)中小企業診断協会理事、同沖縄県副支部長、中小企業診断士。著書として、『沖縄の物産革命―わしたを超えて―』『沖縄自由貿易論』など多数。

会社名 (株)沖縄物産企業連合 代表取締役社長
設立 2001年7月13日
資本金 3億1,075万円
売上高 30億円
従業員数 180名
本社所在地 沖縄県那覇市田原2丁目7番7号 パークサイド上原
ホームページ http://www.okinawa-takarajima.com/