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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

月刊「商業界」編集長 矢作勉さんに聞く

取材・文:高橋 美紀(中小企業診断士)

【第2回】大切なのは「志」

取材日:2007年8月27日

月刊誌「商業界」の編集長をされている矢作勉さんにお話をうかがうシリーズの第2回。今回は、中小企業診断士が商業者を支援する際の心構えについて、示唆に富んだお話をお聞きすることができました。

矢作勉さん

執筆にあたって中小企業診断士に望むこと

― さて、雑誌「商業界」では、中小企業診断士が執筆する機会もいただいています。診断士の印象はいかがでしょうか。

私自身は約20年前に入社し、初めは「食品商業」というチェーン対象の雑誌を担当していましたが、当時は「診断士」を名乗る人が少なかったように記憶しています。後から、診断士を名乗ると報酬が安くなるからということで、あえて名乗らない人がいたと知りました。むしろどこかの大手企業に勤務経験があったという肩書きの方が、ブランド力があったようです。

それが10年ほど前から変わりました。診断士の資格そのもののステータスも上がったようですし、若い方中心に独立志向の人も増えてきたようですね。この独立志向というのは前向きなものもあるでしょうが、リストラの対策として資格を取られて独立した、という方もいらっしゃるようにお見受けしています。

有資格者が増えてくると、コンサルとしての個人の力量がより問われてくることになります。そのなかで私たちは、資格の有無よりは、商業という経済活動が社会の中で役に立つようになるにはどうすべきなのか、1つひとつの店が社会に貢献する存在になるにはどのように指導していけばよいのかという志を持っているかどうかを重視したいと思います。診断士やコンサルタントの世界でも、皆さん、志を持ってお仕事されているはずですよね。その志が私たちと同じ方向だとうれしいです。

矢作勉さん社会の役に立てる仕事を目指して

― 診断士も、商業者の方の気持ちに寄り添っていくことが大切ですね。

雑誌「商業界」が読者対象とする中小商店主は、規模を大きくしていくことだけを考えている人ではありません。もちろん、売上げを大きくする、店数を多くすることは重要ですが、そのことが他に優先してしまった瞬間から、不祥事や事故へと繋がる恐れが出てくるのです。規模を拡大したいという気持ちは理解できますし、自分の商売が社会に貢献しているのであれば、より価値を広めていきたいと考えるのは自然なことですが、第一に考えてほしいのは、自分がどうしたら社会に役に立てるかということです。こういう商業者を増やしていきたいし、診断士の方にも彼らを応援してほしいと思います。

おそらく、診断士の方が現実として中小商店主から受ける相談は、お金の工面や公的支援を受けるための書類作成の仕方などが多いのでは、と推察します。それも大事なことですが、小手先の技術だけでなく、「思い」を伝えるという使命感を持っていただきたいですね。

― 商業者も診断士も、「どうしたら皆さんのお役に立てるのか」を考える意味ではまったく同じです。

ただ、中小商店主が「志が大事だから」と言って、それに胡坐をかいて従来と同じ商売をしているのでは意味がありません。「役に立つとは具体的にどういうことか」と考えられる経営者は現時点では多くありません。「お客様の役に立つために、お客様と世間話をしています」と言って満足している経営者もいますが、もう一歩進まなければ。「これでいいのだろうか」と自分に問いかけることなくして、新たな目標設定はできないと思うのです。

何のために商売をやっているかを考えれば、商売の形も変わってくるでしょう。大きくなることではなく、社会の役に立つことが目的であれば、もしかしたら店の立地や取扱商品を変えなければならないかもしれない。いや、商売そのものを変える必要があるかもしれない。

矢作勉さん

事例を紹介します。ある花屋の経営者の話です。「私たちはピラミッドのトップを相手に、100本の花を売ることを商売とするのではなく、ピラミッドの裾野の100人に、1輪でいいから花を届ける仕事をしたい、それが私たちの理念です」。だから花は鮮度がよく、長持ちするもの、そして単価の低いものである必要がある。単価が低くなることで客数が増えれば、回転もよくなり、さらに鮮度もよくなるだろう。より多くの人に花を届けるのが使命なのだから、お店の数も増やしたい・・・理念がこのように広がれば、取るべき選択肢も増えてきます。

診断士やコンサルタントの役割は、このように、彼らが潜在的に思っていることを引き出して、明確に目標設定し、さらに選択肢を広げるお手伝いをすることではないでしょうか。

― 「理念」、「志」、いつの時代でも、どこでも、これが一番大切です。

理念を明確に持った企業が増えれば世の中が豊かになるだろうし、働く人も元気になれるでしょう。小売業、つらいことも多いですからね。小売業で働いている人が、「ここで働いてよかった」と思えるような雑誌をこれからも作っていきたいと考えています。

― ありがとうございました。

矢作 勉さん:月刊「商業界」編集長

矢作 勉(やはぎ つとむ)/1965年生まれ。大学卒業後、セゾングループの企画・編集業務を経て、ベルリンの壁が崩壊した89年、株式会社商業界に入社。現在、月刊「商業界」編集長。

会社名 株式会社商業界
設立 1948(昭和23)年8月
所在地 〒106-8636東京都港区麻布台2-4-9
従業員数 45名(2007年9月1日現在)
ホームページ http://www.shogyokai.co.jp/