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月刊「商業界」編集長 矢作勉さんに聞く

取材・文:高橋 美紀(中小企業診断士)

【第1回】理念と技術を大切にした雑誌「商業界」

取材日:2007年8月27日

小売流通業、サービス業などの最新動向や事例を現場の方に向けて発信している月刊誌「商業界」。支援の参考にされている中小企業診断士も多いのではないでしょうか。今回はその編集長をされている矢作勉さんにお話をおうかがいしました。

矢作勉さん創業者の「思い」と環境変化

― 雑誌「商業界」は、御社の名前を冠していることからも分かるように、御社の看板雑誌とも言えます。創業者の倉本長治さんは、どのような経緯でこの会社を興したのでしょうか。

倉本は、戦後の荒廃しきった商業の復興を目指して、正しい商人道はどうあるべきかという点を掘り起こそうと考えていました。

まず、正しい商人とはどうあるべきかという「商人道」を明確にし、「店は客のためにあり」という象徴的な言葉を礎にしました。同時に、商人の心構えを十か条にまとめた「商売十訓」を理念として掲げ、全国の商業者、とりわけ中小商店主に対して啓蒙していきました。雑誌「商業界」はこの啓蒙活動をメディアとして伝えるという役割を担ってきたのです。

会社も、そして雑誌も、まもなく60周年を迎えます。この60年で商業の形も大きく変化してきました。それにあわせて雑誌「商業界」も姿を変えてきました。ここからスピンアウトした雑誌として、「販売革新」「食品商業」「飲食店経営」「ファッション販売」「コンビニ」も発行しています。

矢作勉さん

― 日本の商業とともに歩んできた雑誌、そして会社と言えるのですね。雑誌「商業界」にとって、この60年で一番大きな変化は何でしたか。

組織小売業、いわゆるチェーンストアの台頭です。ダイエーが三越を売上高で抜いたのが1972年、以来、小売業者の王者はスーパーマーケットになりました。

チェーンは規模拡大、そして一番店を目指したシェア拡大を目指しましたが、一方で雑誌「商業界」としては、自らのアイデンティティとして、中小小売業の「どういう理念を持って毎日商売をしていくのか」という問題意識に応えていかなければなりませんでした。

― そして今、変化のスピードはますます早くなっています。なかには、客にとってありがたくない変化もあります。目立つところでは、食品業界の不祥事ですね。

何のために商売をしているのかを、皆がもう一度見直すべきですね。創業者の倉本は、正札販売の重要性を訴え、いつでも、誰に対しても公平な商売をするべきと説いていました。また、かつて副社長を務めた新保民八は、「正しきによりて滅びる店あらば滅びてもよし 断じて滅びず」という言葉を残しました。どちらも、損得の前にまず善悪を考える商業者であってほしいという願いがこめられています。いつの間にか拝金主義的になってしまっている世の中に対して、われわれもメディアを通じてもっと声を上げていかなければなりません。

創業者の著作に「商店経営の精神と技術」というものがあります。理念と技術が合わさって初めて真の商人になりえるのだという考えです。今、精神つまり経営理念がおろそかになってしまっているのは残念ですね。何のために自分の仕事があるのか、その根本を見抜くことが大 事だと思います。

矢作勉さん商業界はこんな雑誌です

― さて、このような理念に基づき発行されている雑誌「商業界」。大事にしているのはどのような点ですか。

先ほども「精神と技術」についてお話しましたが、「商売の美しさとやりがいをうたい、同時に商売の技術を提供する雑誌」を目指しています。すなわち、1つの柱として「特集・年末商戦を勝ち抜くアイデアノート」というような、読んですぐ役に立つテクニックについての記事。

そしてもう1つは「この商売をやっていてよかった、小売業って素晴らしい、明日もお店を開けようよ」と商店主に思ってもらえるような、やりがいや勇気を与えるような雑誌でありたいと思っています。中小商店の店主にとって、その商売を選んだということはその人生を選んだ、ということです。だから商売が上手く行っていないと人生も上手く行っていない気がしてしまいます。この感覚は、サラリーマン的な匂いのする組織小売業の方と決定的に違います。

彼らに満足していただくために、客観的な論評ではなくもう一歩踏み込んだ内容を意識しています。また、商人たちの啓蒙とともに、商人たちの考えを広く世間に知らしめることも仕事だと認識しています。

矢作勉さん

― 読者の皆さんの反応はいかがですか。

実際に読者の方たちも、われわれのことを自分たちと同じ意識を持っていると認めてくれているので、反応も一般の雑誌よりもダイレクトではないでしょうか。きついと感じることもあります。しかし一方で「このような事例が載っていたけれど紹介してほしい」というような読者からの反応もあります。

読者の中には、10年以上購読して下さっている方も少なくありません。期待に沿わなければならないと強く感じています。

矢作 勉さん:月刊「商業界」編集長

矢作 勉(やはぎ つとむ)/1965年生まれ。大学卒業後、セゾングループの企画・編集業務を経て、ベルリンの壁が崩壊した89年、株式会社商業界に入社。現在、月刊「商業界」編集長。

会社名 株式会社商業界
設立 1948(昭和23)年8月
所在地 〒106-8636東京都港区麻布台2-4-9
従業員数 45名(2007年9月1日現在)
ホームページ http://www.shogyokai.co.jp/