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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

(株)日本経営協会総合研究所 取締役 経営人事ソリューション部長 柴野数郎さんに聞く

取材・文:宮崎 洋一

【第2回】いま研修講師に求められるものとは?

キャリアのもたらす"深み"が求められている

― 資格を持っているというだけでは研修講師の仕事は難しい、というお話がありました。いま、研修講師に求められているのは、どのようなものなのでしょうか?

今の時代は、資格を持っているから即、研修講師として通用するというのではなく、実務に精通した方なら資格がなくても独立してすぐ活躍できる、そういう時代です。T型人材とかI型人材などといいますが、そのTやIの"深み"がどれだけあるか、そこのところが問われているのです。

柴野数郎さん

例えば、研修講師になりたい、という中小企業診断士の方との面談で、「何をやってきました?」とお聞きすると営業系の方が多いのです。営業ができるというのはわかるのですが、残念ながらそれだけでは勝負できません。企業に勤務するなかで「営業という職種のなかで何をやってきたか」、また、中小企業診断士として活動するなかで「コンサルタントとして営業の何を支援してきたか」という実務経験の"深み"が求められているのです。

― そういう講師希望の方との面談は、どれくらいやられているのですか?

弊社では常時講師の募集を行っているのですが、応募してくださる方に対しては、私自身ができるだけ皆さんにお会いするようにしています。1年間でほぼ100人の方と面談させていただいている計算になります。わたしのキャリアですと、延べ人数では何人お会いしたかわからないほどです。最近では、少しお話しするだけでその方の力量がだいたいわかるようになってきました。

診断士の資格を持っておられても全員が弊社の講師になっていただけるわけではありません。そのなかで「この方だったらお任せできるな」、「この方だったら時間をかけて育成すればいいものが出てくるかな」といった方に講師になっていただく。とくに後者のような将来を期待できる方に対しては、なるべくチャンスを与えていきたいと思っています。

相手の考えを推察・推量し、仮説を立てる能力を身につけたい

― 「この方だったらお任せできるな」と思われるのは、例えば、どのような方ですか?

大前提として話術=話す能力は不可欠ですが、一方的に知識を伝えるだけの講師は、もう通用しません。なぜなら最近は、ワークショップ型の研修が増えていることもあり受講者との間にツーウェイ(双方向)のコミュニケーションが必要だからです。

そういう意味で、講師をお任せしたいと思うのは、「うちの会社をどういうふうにしたい?」、「うちはこんなことで困っているのだけれども、どうしたらいい?」というような問いかけをしてみたときに、それに対して明確な答えがポンと出てくる方ですね。

つまり、今、企業研修の講師として求められているのは、話をしているなかで相手の考えや思いを推察・推量でき、そこから仮説を立てる能力がある方なのです。逆にいえば、そういう方でないと研修講師という仕事は難しいと思います。

もちろん、中小企業診断士として独立され、経営診断やコンサルティングの経験を積んでいらっしゃる方にとっては、こういう能力は経営者との対話などのなかで当然身についていくものでしょう。そういう方は、コンサルティングの現場感覚を企業研修の仕事に生かす、というようにお考えいただければよいと思います。

― 「時間をかけて講師を育成する」こともあるというお話ですが、その場合、やはり新人研修からはじまって、だんだんステップアップされていくというのが普通なのでしょうか?

新人研修というのは、ビジネスマナーや名刺交換なども入ってきますので結構難しいのです。社会人になってのファーストコンタクトですから、どんな講師が適任であるかはかなり慎重に選ぶ必要があります。形だけのマナーを教える人でもおかしいし、マナーを教えない人もおかしい...。

だから最初は、入社2年目あたりの、少し現場をわかって仕事が見えてきた人の研修から入ってもらったほうがいいのです。「こんなことで困りました、どうしたらいいのでしょう」など、受講する側にある程度具体的な問題意識がある分、やりやすいからです。その時に、キャリアに裏付けられた"深み"があると、「そういうときはこんなふうにやってごらん」というように、的確にアドバイスしてあげられるわけです。そこが非常に大事だと思うのです。

柴野数郎さん講師にとって、人に対する興味は不可欠

― 「キャリアがもたらす深み」や「推察して仮説を立てる能力」といったものが求められているのですね。その他にはいかがでしょうか?

常に"感性"を磨いて、時代に敏感であってほしいと思います。例えば、いま企業の内部統制が話題ですね。そこで、「SOX法って何ですか?」と雑談の中で言われた時に、「こういうものですよ」と、ある程度説明できないと話になりません。やはり、いろいろな外部環境に興味を示し、これは自分の範疇外だと思っても基本的な知識は持っていてほしいと思います。

また、興味ということでは、人に対する興味は講師にとって不可欠なものだと思います。組織をどうやって成長させるか、あるいは、組織をどうやって活性化するか、などといっても、原点は人ですからね。やはり人に興味を持ってもらわないと、成り立っていかないと思うのです。

特に、診断士の先生方にとっては切実なことだと思います。最終的に会社を動かすのは誰かと言えば、そこの社員ですから...。「なぜ社員が動かないのだろう」ということに直面したときに、人に対して興味がないと適切な答えを導くことはできないと思います。

(つづく)

柴野 数郎さん:(株)日本経営協会総合研究所 取締役 経営人事ソリューション部長

柴野 数郎(しばの かずお)/1981年、社団法人日本経営協会入職。1989年、経営教育本部経営協力課に異動、企業研修の担当となり、中小企業診断士とのつきあいがはじまる。2000年、(株)日本経営協会総合研究所に転籍。2005年、取締役就任。

会社名 株式会社日本経営協会総合研究所
設立 1989年7月
資本金 6,000万円
従業員数 50名
主な事業内容 HRMの視点からの、1)経営人事コンサルテーション、2)調査・診断、3)人材育成・開発、4)人事アセスメント、の4つの事業を展開。
本社所在地 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-11-8
ホームページ http://www.noma.co.jp/