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中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネージャー 藤原敬三さんに聞く

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第2回】再生支援の現場へ

中小企業診断士にとって、さらなる活躍が期待される再生支援の分野の第一人者で、今年度、新たに設立された全国組織の統轄プロジェクトマネジャーに就任された藤原敬三さんにお話をお聞きするシリーズ第2回。今回は、「小さく生んで、大きく育てる」を意識した、東京都中小企業再生支援協議会の立ち上げから約4年間にわたる取組みを中心にお聞きしました。

藤原敬三さん銀行を退職する

― 支店長時代に事業再生を経験された後は、どうなりましたか?

バブル崩壊後の景気が悪い時期で、銀行には大きな不良債権先がいっぱいありました。そこで銀行の本部に戻って、不良債権先の再生専門のセクションに配属になりました。銀行の不良債権の部門には、バルクセールのように債権を売ってしまうセクションと、事業を再生させるセクションがあります。私は審査部企業再生専任審査役として、再生を担当するセクションに行きました。銀行本部から、不良債権先の再生支援をする役割です。

― そして、再生支援の道を歩んでいくわけですね。49歳まで勤めて銀行を退職されるわけですが、退職の理由はなんだったのでしょうか?

正直に申し上げると、「疲れた」というのが本音です。銀行員時代の最後の8年間は再生関係の仕事に従事し、とても大変な日々でした。再生支援の場合は、お客様との交渉もあれば、銀行内部での交渉もある。毎日が戦いの連続です。そのような折り、たまたま大半の担当先に再生のメドがついたタイミングだったこともあり、思い切って銀行を辞めることにしたんです。

再生支援協議会立ち上げへ

― 銀行を退職してから、東京都の中小企業再生支援協議会の立ち上げに携わるわけですね。きっかけは何だったのでしょう?

再生支援協議会の立ち上げに携わったのは偶然なんです。退職した後は、自分のやってきたことを活かして、コンサルタントの道を歩もうと考えました。1社でも2社でもお手伝いしていこうと...。そこで、東京商工会議所にご挨拶に行きました。そうしたら、たまたま"中小企業再生支援協議会"が新規に立ち上がる時期で、「経験を活かしてみないか?」と言われたんです。

藤原敬三さん

― 東京都中小企業再生支援協議会の立ち上げは、大変だったんじゃないですか?

大変でしたね。新規立ち上げにあたり、最初は「20~30人は必要ではないか?」という意見もあったのですが、私自身は少人数で始めたいと考えました。ルールや手法を一から作らなければいけない。そうすると「小さく生んで、大きく育てる」ほうがいいと...。何をどうするのかを作り、検証し、固めていく...それには、少人数からスタートしたほうがいいと考えました。半年くらいでイメージを固めて、半年で実行に移して、検証していったという感じですね。人数も2003年~2006年までの4年間で少しずつ増やし、最終的には10人近くになりました。

どの程度再生できるのか?

― スタート時は、どの程度の再生支援ができると考えていたのでしょうか?

当初仕事をお引き受けした時には、10社のうち2社は潰れるという予想でした。再生支援といっても神様がやるわけではない。事業って生き物ですからね。ほっておいたらみんなダメになってしまう危険性の高い企業さんばかり扱うわけです。そんな中で、私の目標としては5割の企業に元気になってもらうことでした。2割は倒産し、3割は引き続き苦しんでいるというのが、現実的な予想でした。

― 実際に再生支援をはじめて、いかがでしたか?

2003年~2006年の4年間で最終的に再生が完了したのが61社です。結果的には、7割近くの企業が元気になりました。ダメになってしまった企業さんが1割弱くらい、2割強が引き続き苦しんでいる状態です。

― 7割というのは、すごい割合ですね。

再生のやり方にはいろいろあります。たとえば再生ファンドのように、債権を買い取り、資本も入れて、自らが主体となって再生に取組む方法もあります。産業再生機構はこの形に近いでしょう。

藤原敬三さん

私たち再生協議会の場合は、民間の調停機関のようなやり方で、あくまでじっくりと話し合いをしながらハンズオンに近い形で、事業の再生に踏み込んでいく。もちろん本当のハンズオンは、入り込んでやらなければできないので、その部分は中小企業診断士の先生にお願いしたりしています。

― 1企業の再生には、どの程度時間がかかるのですか?

中小企業の再生の場合、オーナーの意識改革・銀行交渉などは我々がやっていきます。本当に手間ひまかけてやっているので、時間はかかるんです。私どもでは、最短半年での再生を目標にしていますが、平均すると1年くらいかかっているでしょうね。

藤原 敬三さん:中小企業基盤整備機構中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネージャー

藤原 敬三(ふじわら けいぞう)/1976年、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行、支店長時代に不良債権処理を経験する。銀行の審査部企業再生専任審査役を経て、2003年3月東京都中小企業再生支援協議会支援業務責任者に就任する。2007年、中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネージャーに就任。