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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

静岡県 焼津信用金庫 八木利樹 顧客相談部長にきく

取材・文:菊間 範明(中小企業診断協会静岡県支部支部長)

【第1回】診断士との連携でベストの相談サービスを目指す

取材日:2007年4月18日

中小企業診断協会静岡県支部では、2~3年ほど前から、県内の金融機関と業務連携し、金融機関の取引先中小企業の診断、相談、セミナー(ビジネススクールなど)の講師派遣、職員の研修講師、金融機関が取引先等に発行するFAXマガジンの原稿執筆など、さまざまな事業を連携して行わせていただいております。現在、当支部では、地銀1、信金10、公的1の12金融機関と提携覚書をかわし、信用保証協会とも実質的に事業協力をさせていただいています。
  さて今回は、その中で、比較的早くから連携し、活発に事業を行わせていただいている焼津信用金庫様(静岡県焼津市)におうかがいし、一連の連携事業の窓口になられている八木利樹顧客相談部長に、お話をうかがいました。ちなみに、八木部長自身、中小企業診断士の資格をお持ちです。

「ベストの相談サービス」を追求し専門家との連携へ

社屋

― まず、業務連携の経緯からおきかせください。

焼津信用金庫は来年、創立100年を迎える地域金融機関です。地元では「まるせい」の愛称で親しまれています。「まるせい」の由来は明治41年当金庫の前身である焼津生産組合の「生」をマルで囲んだ マークからきています。静岡県中部地区が営業エリアですが、特に政令指定都市静岡市の西側に隣接する志太地区といわれる焼津市、藤枝市を主な経営基盤としています。志太地区は水産加工業、自動車や家電関連の金属、樹脂加工業など多様性に富んだ中小製造業が集積する地域です。

当金庫は創立以来、地元企業に関わり地域産業の活性化を支援してきました。平成13年に経営相談の専門部署として、顧客相談部の前身である「お客様相談室」を設置し、支援の強化を図りました。当時、「お客様相談室」が目指したのは、「お客様にとってベストの相談機能(サービス)」を提供することでした。

「ベストの相談サービス」を追求すれば、専門家との連携は自然の流れだったと思います。ただし、当金庫は「面倒見が良い」を長年実践してきましたから、相談案件を専門家に丸投げするようなことはせず、たとえばコンサルの場合、中小企業診断士に取り次ぐ前に金庫職員がプレ診断を行うとか、作業を中小企業診断士と分担するなど本格的な連携を行いました。

結果的に、個別案件におけるこうした連携が中小企業診断士と金庫とのパートナーシップを生み、中小企業診断協会静岡県支部と業務連携するベースになったのだと思います。

焼津信金八木顧客相談部長(左)と菊間支部長

具体的に中小企業診断協会静岡県支部と業務連携に至ったのは、平成17年1月の「まるせいビジネススクール」の講師陣派遣ですが、ビジネススクール立ち上げの準備期間が約1年ありましたから、実質的な業務連携の動きは平成16年からです。私たち支援業務の現場サイドは個別案件の連携において、中小企業診断士は企業の抱える課題解決に有効な「知的資源」であることを認識していましたから、組織単位で取り組めばもっと大きな成果、地域経済の役に立てることがあるはず、という考えがありました。

また、「知的資源」を掘り起こし、活用するのは信用金庫の地域に対する役割の一つ、という理念が当金庫役員にありましたので、中小企業診断協会静岡県支部との業務連携はスムーズに進みました。

ビジネススクールでは「現場主義」を重視して診断士と連携

― 業務連携の概要をあらためておきかせください。またお客様などの評価はいかがですか。

中小企業診断協会静岡県支部と業務連携して進めている事業は、主に「まるせいビジネススクール」と「チャレンジ事業評価サービス」の2つです。

まず、「まるせいビジネススクール」です。

このスクールは、2年間22回(毎月1回夜間に開催)にわたる本格的な研修です。2つの講座を設けていますが、ひとつは、若手(45歳以下)経営者や後継者などを対象に、戦略・財務などのマネジメント実務、ビジョン構築やコーチングなど経営者に必要なスキルを習得していただく「みらい経営創生講座」です。

もうひとつは、工場管理者やその候補者を対象に、生産管理や問題解決能力を養っていただく「ものづくり管理者養成講座」です。特に後者を設けたのは、地元経済を支える製造業支援に力を入れているためです。

地元の製造業は平均的に「ものづくり」そのものに関しては非常に熱心、真面目なのですが、儲けを生み出すためのマネジメント力が不足している感があります。熱心さに見合う儲けを得ていただきたい、という思いもあり製造業のマネジメント力を養成する講座を設けました。平成17年・18年の2年にわたる第1期が修了し、平成19年1月から第2期がスタートしています。

このビジネススクールの講師陣を中小企業診断協会静岡県支部に委託し、現在は各コース4名ずつの静岡県支部会員の中小企業診断士に講師を務めていただいています。こうしたビジネススクールの講師は、よく大手のコンサル会社に丸投げしがちですが、当金庫が中小企業診断協会・中小企業診断士に委託したのは、「現場主義」を重視したためです。「現場ですぐ使えるスキルの習得」が当スクールのコンセプトなので、研修内容は理論の一方的な講義ではなく、演習やグループ討議を毎回取り入れた参加型学習が中心になっています。

こうした研修内容を提供できるのは、やはり、日頃から現場の第一線でさまざまな経験をし、現場目線で課題解決ができる中小企業診断士です。また、地元の経済環境や風土、現場の苦しみや喜びがわかる、いわば「泥臭さ」も備えているのは中小企業診断士であると思い、中小企業診断協会静岡県支部にお願いしたわけです。

セミナー風景

ビジネススクールスタートまで約1年の準備期間を費やしたわけですが、これは他にはないオリジナリティに富んだカリキュラムの作成や出席率向上の仕組み作りにこだわったからです。講師の先生方にはスタート前から大変なご苦労をかけました。

お陰様で出席率も非常に良く、年1回の合宿では受講者同士の交流も図られました。受講者には、毎回アンケートをとり、講座内容や進め方に活かしていますが、「実務に役に立った」「現状を見直すきっかけになった」といった声が多く、概ね高い評価をいただいています。しかし、改善すべき事項もまだたくさんあります。特に、受講生同士の交流を活性化させること、また修了後も交流を保てるようにすることや、講師を務められた中小企業診断士の先生方を、もっと各企業で活用する仕組み作りをしなければならないと思っています。

診断士による新事業の評価・助言が好評

次に、「チャレンジ事業評価サービス」です。
 昨今、経営革新計画の承認を県知事から受け、支援施策を活用する企業が増えています。
 ただ、そうした経営革新ほどでなくても、その企業自身にとって新しい取り組み、たとえば既存商品とは違うカテゴリーの商品を販売する、既存商品の新用途を見つけて新市場へ進出するなど、既存の殻を破って一歩前に出ようとする中小企業の新しい事業内容を客観的に評価し、助言する業務を平成19年の1月から始めました。

新しい事業にチャレンジする中小企業は、焼津信用金庫の営業店ならびに本部を経由して、中小企業診断協会静岡県支部にその評価・助言を委託するものです。支部はあらかじめ本事業のために登録された中小企業診断士14名、その多くは企業内診断士(実務経験になる)ですが、1件1名で担当し、現場ヒアリング、報告書作成、報告会などを行うものです。この2~3月ですでに7件実施され、年間では20件以上の実施が見込まれています。

個別の企業にとって新たな事業の取り組みはリスクが大きく、腰が引け、夢で終わってしまうケースがあります。逆に、やみ雲に突っ走って大きな痛手を被ることもあります。第三者、特にその分野の専門家である中小企業診断士の評価は、企業の背中を後押ししたり、手綱を締めることになるので、非常に有益なことだと思います。マクロ的には、地域内の創業あるいは第二創業の活性化につながる事業だと思っています。

本来はこうした評価は金庫職員が行うべきなのかもしれませんが、職員は中小企業診断士の資格を持つ者を含めて、財務や戦略面の助言はできても、現場の専門的なこととなると限界があり、専門性の高い中小企業診断士に任せた方が良い結果が期待されます。

すでにサービスをご利用いただいた取引先企業からは、「新たな気づきが生まれた」「新事業を成立・実現するために考えるべきこと行うべきことが明確になった」など、概ね良好な評価をいただいています。なかにはこのサービスを契機に中小企業診断士の能力の高さを評価いただき、継続してコンサル契約をされた企業もあります。

次回は、中小企業診断士に対するイメージや期待するものを、あらためておうかがいしたいと思います。

八木 利樹さん:焼津信用金庫顧客相談部長

八木 利樹(やぎ としき)/1980年 焼津信用金庫入庫、2001年 業務部お客様相談室課長、2005年 顧客相談部副部長、2006年 顧客相談部長(現任)。1996年 中小企業診断士登録(工鉱業部門)。