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診断士に向けた熱いメッセージ

中小企業診断士に期待する

多摩大学ルネッサンスセンター教授 原田保さんに聞く

取材・文:鈴木佳文(中小企業診断士)

【第1回】人材育成にかける想いと中小企業診断士との出会い

取材日:2007年4月25日

原田保さんは、多摩大学ルネッサンスセンターで、大学院など幅広く社会人の教育・育成に力を注がれています。日本経営診断学会の理事でもあり、中小企業診断士に対しては辛口のご意見をお持ちです。第1回では、現職での活動や中小企業診断士との出会いについてお話を伺いました。第2回では、中小企業診断士資格の活用に関しての熱い期待を伺いました。

(株)同友館からの出版を契機に中小企業診断士と出会った原田さん、出会った当時にバリバリ稼いでいた方々の印象も強いようです。現在は社会人の育成を手がけていらっしゃいますが、学生への接し方についての考え方は、コンサルティングにおけるクライアントとの付き合い方に繋がりそうです。

原田保さんご縁の積み重ねが転身のきっかけ

― 原田先生は西武百貨店取締役、香川大学経済学部教授などを経て、現在は多摩大学ルネッサンスセンターで教授をされていますが、現職に就かれるにあたっての「きっかけ」「ご縁の繋がり」をお聞かせください。

やはり「縁」というのはとても大事ですね。仕事とか職業は縁というのが重要な意味をもっているなと思います。私の場合には、西武にいるときに企画の仕事を長くやっていたものですから、会社の外に出ていろいろなノウハウや知識を他の会社とか他の業界から社内に入れてくるということをやらなければいけなかったし、会社の力を外にアピールしなくてはいけないという立場でもありました。

言わば、業界を融合してナレッジを内と外で行き交いさせるような仕事をしていたわけです。その中で、業界外のビジネスマン以外の人たちとのネットワークが自然に出来てきたのですね。ポジション的にもそうですし、伸び盛りの会社にいると自然と外から声が掛かってきます。立場的に外とのパイプ役を果たすことが多かったので、大学の先生方の研究会とか、有志の集まりとか、そういう所に行くようになりました。

会社を辞めることになったときに、今までと全く違ったことがやりたかった。そこで、社外での活動を通じて知り合った先生方に相談をしたところ、香川大学が教官を公募していることを教えてくれました。幸いにも、それまでの10年ぐらいの間で先生方に依頼されて著書や論文を書いていましたので、研究業績もあるということで採用されることになったわけです。

別に好きでやったわけではなく、頼まれて土日に、どちらかというとしかたなく執筆していたのですが、後から考えると非常に有益だったということで、それが「きっかけ」でしたね。香川大学から多摩大学に移るときも知り合いからお誘いの声を掛けてもらいました。まぁ、私だけでなく全国どこでも誰でもこういう縁の繋がりはあると思います。

人の成長をサポートする喜びと夢

― 現在のお仕事で感じておられる「やりがい」はどのようなものでしょうか。

ここ(多摩大学ルネッサンスセンター)は、社会人が何らかの目的をもって勉強しに来るところです。私が関わった人たちが勉強したことによって以前より、より良くなってくれる...教えた人間が使用前・使用後でイキイキしたり、仕事を替わって飛躍したり、ポジションがあがるとか、変化が良い方向にでた時にうれしいわけですから、そういう変化を生み出すようなアプローチが出来ればいいなと思っています。

ただ、軽率にやってはいけないと思っています。「転職したほうが良いよ」なんて言っても責任取れませんから。だから、本人が自分自身で決断していくことを後から後押しして勇気を出させてあげる...それで一人ひとりが変わっていくと、とてもうれしいなというふうに思っています。社会で羽ばたいてさまざまなところで社会に貢献する、活躍しているという人をたくさん育てたいですね。私がお手伝いした人が自己実現を果たして、社会に貢献して、人からも評価されるという人間になってくれればうれしいし、そういう人たちが一人でも多く輩出してくれるのが私の願いですね。

― 自己実現を果たして活躍する人をたくさん育てるのがやりがいでもあり夢でもあるということですね。

もう私はビジネスの前線から引退した人間ですから、何かを具体的に創り上げるというよりも人を育てたりサポートしたりする立場にいるわけです。自分がやるよりどちらかというと人に夢を託すといった形ですね。

ただ、プライベートにはけっして立ち入らないように受講生との距離感には気をつけています。それでないと間違って誘導する可能性もありますから。自分自身で気づいてもらう、きっかけを与えるだけに留める必要があります。

社会人が社会で活躍できるようになるために、自分では気がつかない足らないものや、自分では知りえない新しい知見などに、できるだけ自ら取りにいけるようにファシリテートする。それぞれとの距離感を変えて接するのが大切だし、それが一番難しい。そこに気をつけています。

稼げる中小企業診断士との出会い

原田保さん

― (社)中小企業診断協会の50周年記念大会でもパネラーを務めてくださいましたが、中小企業診断士との出会いについてお聞かせください。

きっかけは(株)同友館の今の山田富男会長に出会ったということですね。私が会社を辞めて初めて本を出したいと考えたときに紹介を受けて当時の山田社長にお会いして、なぜか気に入ってもらって最初の単著『デジタル流通戦略』を出させてもらったんですね。それで、当時の(株)同友館が日本経営診断学会の事務局をやっていたものですから、(社)中小企業診断協会から参加されていた新井信裕さんと知り合うようになったということが、ひとつの大きな出会いでした。もうひとつは、いろいろな研究会に関わる中で、多摩地区の中小企業診断士の方たちと本を出すことになりまして、そこで高島利尚さんとか野村廣治さんとか、さらには新井信裕さんとか、今の診断協会のリーダーの方々みんなと知り合いになりました。

(株)同友館が(社)中小企業診断協会の50周年の記念出版(『コンサルティング イノベーション』)を請け負ったこともあって私に声が掛かったわけです。

― 長い付き合いなのですね。私たちのような若手診断士から見ると相当個性の強い方ばかりですが...。

そうですね。非常に強いアイデンティティを持っている、ある意味非常に古いタイプの人かもしれないですね。3人ともやはりキャラクターでもっているから、若いときは別として何の資格も要らないですよね。初めて会ったときから、「この人たちは自立して食っている」というオーラが出ていましたよね。存在感が違うんです。同じ年齢でも独立して食っている人と社内にいる人では全然違っている。中小企業診断士であるかどうかよりも、独立しているか会社にいるかということのほうが大きいと思いますよ。まぁ、彼らは押し出しが強いよね。あそこまでやらないと強いアイデンティティを持てないんだろうけど...そういう意味ではこれからどうなるか・・・次の世代はあのスタイルでは出来ないだろうし、逆にどうしたらいいか難しい時期に来ていると思います。

原田 保さん:多摩大学ルネッサンスセンター教授

原田 保(はらだ たもつ)/1947年生まれ。1971年、早稲田大学政治経済学部卒業。㈱西武百貨店取締役、香川大学経済学部教授を経て、現在、多摩大学ルネッサンスセンター教授。主要著書に『デジタル流通戦略』『戦略的パーソナルマーケティング』『ソシオビジネス革命』『21世紀の経営戦略』『場と関係の経営学』『コーディネートパワー』などがある。