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診断士カレイドスコープ

ダブルライセンスによる診断士資格の活かし方

取材・文:木下 綾子(中小企業診断士)

【第1回】弁理士×診断士 東北大学産学連携推進本部知的財産部 特任准教授 木下 忠さん

取材日:2013年11月23日

今回は、士業と呼ばれる国家資格を2つ以上持つ、いわゆるダブルライセンスの方々に、診断士資格を取得したことのメリットについてお聞きしました。1回目は、弁理士資格と診断士資格を持つ木下忠さんです。

差別化を図るために診断士資格を取得

― これまでのご経歴を教えてください。

木下 忠さん

大学の博士課程まで進学した後、同じ大学で講師(ポスドク※1)をしました。その後、特許庁の任期付審査官を6年間務め、現在は大学の産学連携を推進する部門で、特任准教授として勤務しています。

― 特許庁では、どのような業務をされていたのでしょうか。

主に特許出願の審査です。発明者からの特許出願について、特許権を付与できるか否か、先行技術文献を調査したうえで、できるだけ客観的に判断します。

― 診断士資格を取得したきっかけをお聞かせください。

任期付職員でしたので、任期後の転職が前提でした。任期後は、基本的に弁理士として活動しますが、弁理士も近年、試験合格者が増加しており、単に資格を持っているだけでは稼げない時代になりました。弁理士としての専門性に加えて経営的な視点も持ち、クライアントのニーズに対応しないと生き残りは厳しいと考え、診断士資格の勉強を始めました。

― 弁理士資格については、どのように取得されたのですか。

特許庁に勤務すると、試験科目が免除になる制度があります。5年間在籍すると主要科目が免除され、9年間在籍すると完全免除となります。私の場合、1次試験は自力で合格しましたが、2次試験は免除規定を使って資格を取得しました。

入庁から9年で、自動的に弁理士資格を取得できますので、あわてて取得する必要はないと考える友人もいました。しかし私は、いつどこから声がかかるかわかりませんので、資格は早めに取得したほうが良いと思い、最短で弁理士資格を取りました。準備をしておいて、チャンスが来たらすぐに"女神の前髪をつかむ"というのは、中小企業診断士のコミュニティでは普通ですよね。

― 現在、大学ではどのような業務をされているのでしょうか。

産学連携部門に所属し、大学の研究成果のシーズを民間で活用するために活動しています。私の業務は、どのように特許権を取得し、どのようにライセンス化するかという知財戦略や、大学の共同研究プロジェクトのサポート、企業との契約交渉、などです。特許権の権利化以外はまだ手探りで、少しずつ経験を重ねていきたいと思っています。

診断士資格が気づかせてくれた「信頼関係の重要性」

― 弁理士の業務の中で、診断士資格はどのように活用されていますか。

木下 忠さん

以前に私がいた理系中心のコミュニティでは、論理的に正しいことを言っていれば、必ずそれを理解してくれる人がいました。いま思えば、恵まれた世界でした。

しかし、中小企業診断士の世界は、それだけでは足りません。正論を言っても、相手がそれを理解できなければ、コンサルタント失格でしょう。どのようにすれば相手が納得するように伝えられて、どのようにすれば聞いてもらえるか。そしてさらに、それを行動に移してもらわなければなりません。そのためには信頼関係が必要で、正論を話すよりも何倍もの時間をかけて準備をし、信頼関係の土壌を作ることが重要と感じました。

大学の産学連携業務は、さまざまな人との連携をスムーズに行うことが大切です。現在の業務において、診断士資格を直接的には活用できていませんが、診断士資格を取得する過程やその後の活動で得たことは活きていると思います。

― 今後の展望についてお聞かせください。

大学では、知財以外の業務も行っていきたいですね。最近、大学の研究成果を事業化するためのさまざまな大型プロジェクトが立ち上がろうとしています。私は主に、知財面でのサポートを期待されていますが、いずれは経営面をサポートする仕事もやってみたいです。

また、2年前に設立したビジネスモデルを研究する研究会(中小企業政策研究会「ビジネスモデルカフェ」)にも力を入れていきたいです。良いビジネスモデルのアイデアは、業界の垣根を越えて存在し得ますので、議論する際は、さまざまな業界の人と議論したほうが、アイデアが豊富に生み出されます。診断士業界は、多くの業界から人が集まりますので、ビジネスモデルの研究には最適です。今後は、ビジネスモデルの視点で何か新しい提案ができるようになれば、と考えています。現在はまだ、研究会活動を本業に活かせていませんが、いつチャンスが来てもいいように準備をしている段階です。

― きちんと準備をしているからこそ、チャンスをつかめるのですね。本日はありがとうございました。

※1 Post-Doctoral Fellowの略で、博士課程を修了し、常勤研究職になる前の研究者のこと。

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(つづく)

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