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診断士カレイドスコープ

社長の、社長による、社長のための、診断士資格活用法

取材・文:弥谷 和也(中小企業診断士)

【第2回】丸善運輸倉庫株式会社代表取締役・森藤啓治郎さん

取材日:2013年11月6日

第2回目は、大阪府大東市で運輸倉庫業を営まれている森藤啓治郎さんに、お話を伺いました。

リーマンショックがきっかけ

森藤啓治郎さん
森藤 啓治郎さん

― 最初にご経歴を教えてください。

昭和39年(1964)生まれの49歳。丸善運輸倉庫株式会社という運輸倉庫業を営んでいます。大学卒業後、電気機器メーカー勤務を経て、父が創業した弊社に入社しました。社長を引き継いだのは5年前です。

― 診断士資格を取得しようと思ったきっかけは。

リーマンショックが起き、急速かつ大幅な業績悪化に見舞われました。その際、自分の頭の中の引き出しが乏しかったために、トップとして迅速な経営判断を下せず、苦い思いをしました。同時に、経営者として理論的で体系だった勉強をする必要性を痛感しました。そのことが、資格を取ろうと思った一番のきっかけです。

資格取得で得たスキルを活かして

― 資格取得時に学んだ知識で、どのようなことが経営の実践に役立っていますか。

さまざまな面で役に立っていますが、自分に決定的に欠けていた財務面の知識をカバーできたことが一番でしょうか。また、企業経営理論でCSRについて学んだことから、それまで以上に企業の社会的責任を意識するようになりました。このことがきっかけで、すでに取り組んでいた高齢者雇用を発展させ、障害者雇用にも積極的に取り組み始めました。現在、知的障害者3名、精神障害者2名を雇用しています。こうした取組みが社会的にも評価され、半年ほど前ですが、NHKの「バリバラ」という番組で弊社を紹介していただき、また、経済産業省刊行の「ダイバーシティ経営戦略」に掲載される「ダイバーシティ経営企業100選」の平成25年度の公募に応じたところ、先般1次審査を通過することができました。

― 知識やスキル以外に、資格取得を通して得られたことはありますか。

2次試験を通して、それまでの自分が主観的な物事の見方しかできていなかったことを痛感しました。自社の経営でも社外の支援活動でも、客観的かつ多面的なものの見方ができなければいけないことをつきつけられたような思いがしました。

また、実務補習も貴重な経験になりました。他社の経営実態がガラス張りで見え、経営者の本音に触れられる機会は、そうあるものではありません。経営者の真の悩みや思いを聞くにつれ、勇気づけられた面もあります。「人のふり見てわがふり直せ」ではありませんが、私たち経営者にとって、これほど活きた勉強をできる機会はありません。そうした思いから、仲間の中小企業診断士とチームを組んで、企業診断活動を始めました。もちろん、自分たちのためだけでなく、相談相手のために親身になって取組んでいます。

― 企業診断の取組みについて、もう少し具体的に教えてください。

これまで、2社に診断助言をさせていただきました。企業診断を始めたきっかけは、弊社の電気設備やそのメンテナンスを任せている会社の経営者から、得意先が不渡りを出して困っているという相談を受けたことです。一方で仲間の中小企業診断士からは、企業診断をする場がなく困っているという声も聞いていました。そこで双方に提案し、チームを組んで診断助言をさせてもらう場を整えました。双方ともに喜んでもらえ、支援先の業績も順調に回復し、その会社に引き続き安心して仕事を任せられるようになりました。2社目は、交流会で出会った方が経営されている日本語学校です。いずれのケースも、手法は実務補習のスタイルに則って行いました。現在、3社目のプロジェクトを準備中です。

人的ネットワークづくりと支援活動

― ほかにも、さまざまな支援活動や人的ネットワークづくりに精力的に取り組まれているそうですね。主な活動内容を教えてください。

まずは、「関西ビジネスサテライト」という異業種交流会への参加です。主催者の人柄に惚れ込み、私も運営にかかわらせていただくことになりました。主に個人事業主を応援する会ですが、その中で「あきんど塾」という勉強会のコーディネートを担当しています。

また、「経士会」という勉強会を主催させていただいています。あらゆる士業の方々にアウトプットの場を提供することと、経営者の知識習得と士業の方とのマッチングの場を提供することを目的に、弁護士、社会保険労務士、私の3人の幹事メンバーで立ち上げました。インプットの場としてのセミナー開催と、アウトプットの場として、参加者自らが自己開示を通して価値観を共有するためのグループワーク。この2つが、主な活動内容です。現在は、幹事メンバーが10名となり、毎回40名前後から、多いときには100名以上の参加者が集まる会に発展してきました。

― こうした活動の一番の有用性は何ですか。

すごいスピードで人とのつながりが広がっていくことですね。しかも、質を伴って。それぞれが関係性を深めることで、いざというときに相談できたり力を貸してあげられたり、お互いにサポートし合える間柄になれます。ただ単に、知り合うことを目的にしているのではありません。「一生付き合える親友を作りましょう」という思いで運営しています。経士会では、「つながることは、向き合うこと」、「新たな価値観と出会う場所」というキャッチコピーを掲げています。私自身も、さまざまな価値観に触れることで、人間としての幅を広げられたと感じていますし、これからも参加者の方々に、自身の成長や変化を体感してもらえる場にしていきたいと考えています。

― そのほかには、どのような活動をされていますか。

中小企業診断士を目指す受験生を支援する勉強会を、平成25年4月からスタートしました。内容は2次試験対策で、過去問を使って少人数単位のグループディスカッションを行い、グループごとの発表内容についてさらに議論を深めるようにしています。コーチ役として、仲間の中小企業診断士にボランティアで参加してもらいながら、本試験直前期には週2回のペースで開催してきました。

― 受験校並みですね(笑)。

いえ、それ以上かもしれません(笑)。やるからには、短期間でレベルアップを図り、多くの方に合格してもらいたいという思いがありましたので、超直前期は、平日2回+週末1回の週3回にペースを上げました。参加者数も、後半は受験生だけで毎回15~20名、中小企業診断士が多いときには7~8名参加してくれましたので、個別指導に近い対応が可能でした。

知的資産を活かす

― 大阪府中小企業診断協会の研究会には所属されていますか。

「知的資産経営」に関心を持っていましたので、大阪府中小企業診断協会の知的資産経営研究会に参加しています。自社の知的資産報告書を作成できるようになりたいと考えています。研究会では、報告書作成の支援に入ることを前提とした勉強会を中心にやっていて、実際の支援事例の報告や、それをもとにしたディスカッションを行うなどしています。

― 最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

最近、あまりにも自分にマイナス意識を持っている人が多いと感じます。良い面を持っているのに、自分に自信のない人があまりにも多くて、もったいないなと。

先ほどお話しした知的資産経営とは、自社の持つ強みを「見える化」し、それらをアピールしながら業績向上を図っていこうというものです。これは経営だけでなく、人にも言えることだと思うのです。

私は、「あなたが生きている源泉って何?」とよく尋ねるのですが、「いやぁ、何でしょうね」という答えしか返ってこない人が少なくありません。周りは優秀な人ばかりで、自分はダメな人間だと勝手に思い込んでいたりする人もいます。外から見たら輝いて見える人でも、実際には皆、大なり小なり悩みを抱えながら生きているのです。

人は人、自分は自分で、他人と比較するのでなく、思い切ってさまざまな機会に出て行って自己開示をし、自分の存在感を周りから教えてもらい、自分に価値があることを実感すべきです。自分が必要とされていると実感できれば、人は変わります。そのことに気づいて、一歩踏み出してほしいですね。それを気づかせてあげることが、自分の役割かなとも思っています。

(つづく)