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平成25年中小企業経営診断シンポジウム報告

取材・文:同友館編集部

【第2回】白熱の第1分科会

取材日:2013年11月7日

平成25年11月7日(木)、東京都の東京ガーデンパレスにて開催された「平成25年度中小企業経営診断シンポジウム」。今回は、午後に行われた各分科会の中から、中小企業庁長官賞対象の事例発表が行われた第1分科会の模様を中心にお伝えします。

藤井春雄氏
藤井 春雄 氏
内藤博氏
内藤 博 氏
細野祐一氏
細野 祐一 氏
久保正英氏
久保 正英 氏

「中小企業庁長官賞」には、藤井春雄氏(愛知県中小企業診断士協会)の『中堅企業D社での"ものづくり改革・意識改革"カイゼンの基本(IE)徹底による生産リードタイムの大幅短縮⇒1/15』が輝きました。藤井氏は、モノづくり現場における基本原点に帰った改善手法を、さまざまなデータを細かく用いながら発表されました。関東地区にある中堅の製造業で経営指導にあたり、IE手法をわかりやすく現場に導入し、タイムベース競争力の向上に力点を置いて取り組まれた結果、メイン製品について改善前は約110日あったリードタイムが、1年で約20日、1年半で7日にまで短縮し、現在も7日以内で安定して推移し、客先の絶大な評価を受けているとのことでした。審査委員の講評で、特にこの企業で苦労した点について聞かれた藤井氏は、「100~200人規模の共通問題として、改善経験・改善部隊の不足・不在が挙げられる。今回は、最初は6人を選抜して徹底的に鍛え、次にその人たちが現場の指導を行い、以降も連携を取り合って一緒に改善に取り組む体制を整え、成果につなげていった」と答えられました。

「日刊工業新聞社賞」を受賞したのは、内藤博氏(東京都中小企業診断士協会)の『多様な事業承継を支援する中小企業診断士の実態を見える化』。ご自身が代表を務める「事業承継センター株式会社」での、7年にわたる実務支援の現場で磨いたノウハウと情報を体系化し、発表されました。「事業承継は、経営革新の最高のタイミング」であるとし、新時代の経営へと「挑戦する後継者を支援」することが中小企業診断士の責務、と述べられました。審査委員の講評で、後継者不在の会社での対応を尋ねられた際、内藤氏は「一番難しいのは、後継者のマッチング。その前に、まず身近に後継者がいないかを再発見することにチャレンジしなければならない。後継者が誰もいないと言いながら、企業を訪ねると、素晴らしい幹部がいるケースも多い。それでも見つからない場合は、中小企業診断協会のネットワークを使ったり、業界団体にお願いしたりしている。最近の事例では、プロパンガスの販売会社で、プロパンガスの協会にお願いした結果、力のある会社を紹介してもらうことができた」と答えられました。

「日本経営診断学会会長賞」は、細野祐一氏(東京都中小企業診断士協会)の『「知的資産経営」支援を通じて学んだ中小企業経営支援の在り方』が受賞されました。中小企業の活路が、モノやお金といった有形のものから、知的資産という無形のものに移っている先端的な動向について発表されました。シェアハウス業界最大手から従業員の意識の底上げを依頼され、知的資産を活かした経営支援を切り口として、従業員が自社の強みに気づき、ビジョンを考えて成長する場を作り、その一連の流れを知的資産経営報告書にまとめることに取り組まれました。これによって、従業員がより活動的になり、今後の成長に向けた経営施策が具体化されたとのこと。また、幅広い見識を持つプロコンと、専門性を持つ企業内コンサルのミックスによって、より充実したコンサルティングが可能、との認識を示されました。審査員から、知的資産経営報告書の対外的な活用について問われた細野氏は、「知的資産報告書を、経済産業省を通じて公表し、一部割愛して、会社案内としてお客様に配布した。今後は、その内容に基づいて、一定期間で振り返りを行い、次の対策に取り組んでいける」と答えられました。

「中小企業診断協会会長賞」を受賞したのは、久保正英氏(神奈川県中小企業診断協会)の『大手量販店への販路開拓に苦戦する中小・小規模食品企業~20社連携によるエコを切り口とした「3つの取引阻害要因解消」の事例と提言~』でした。販路開拓に苦労している中小・小規模の加工食品・菓子企業に焦点を当て、20社の会議体によるプロジェクトを発足。商品にカーボン・オフセットを導入することで、環境配慮志向を商品開発・販促企画に反映し、「環境配慮商品」というテーマの品揃えで他の売場と差別化することで、コモディティ化の進展に対応し、20社を集めて商品開発や販促企画の提案を実現するなど、中小・小規模食品企業が食品スーパーなどで新規取引開始や品揃えを実現するには、企業間連携が有効である、と示されました。審査員から企業間連携のポイントを聞かれた久保氏は、「20社すべてが好調になるわけではなく、やはり離脱しそうなところも出てくる。企業間連携に参加している担当者のコミュニティをしっかり築き上げて、モチベーションを保ち続けることが、中小企業診断士の責務」と説かれました。

第1分科会受賞者を交えた記念撮影
第1分科会受賞者を交えた記念撮影

17時からは「表彰式」が開催され、中村正士・診断協会副会長の開会挨拶後、水元明則・診断協会専務理事が第1分科会の審査結果発表を行いました。発表論文に関する「審査委員長講評」で、大江宏・審査委員長は、「藤井先生の発表は、モノづくり改善の王道であり、中小企業に限らず、幅広く適応できる汎用性と原点回帰の点で高い評価を得た。次に、内藤先生の発表は、事業承継はニッチでありながら、企業の存亡にかかわるきわめて重要な分野である。それを体系的なフレームワークとして完成されたと同時に、流れるようなプレゼンで非常にわかりやすい内容だった。また、細野先生は、分析プロセス、成果といった一連の流れを大変よく整理されており、1つのシステマティックな手法として完成されていた。また、プロコンと企業内コンサルの2つの領域の提携・協力によるコンサルの可能性に言及されたことが素晴らしかった。さらに、久保先生は、ネットワーク、企業連携の力をうまく引き出して、量販店の開拓につなげている点と、これから重要になるエコの観点を切り口にされていた点が評価につながった。今年は本当に僅差の審査結果であり、どれも素晴らしい発表だった」と締めくくられました。

その後、各分科会の発表者に表彰状が授与され、シンポジウムは盛況のうちに幕を閉じました。なお、当日は荒天の中、中小企業診断士、来賓、行政支援機関関係者、一般の方など354名の方々が参加しました。

(おわり)