経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

診断士カレイドスコープ

異色の“デザイナー診断士”に聞く

文:平井 彩子(中小企業診断士)

【第2回】踏み出した独立への一歩

中小企業診断士登録とともに、独立を果たした影山さん。今回は、独立までの道のりと、地域の産業支援を行った実績についてお聞きしました。

診断士資格を取得して、「さぁ、どうしよう」

― 診断士資格を取得された当時は、札幌で働いていたとお聞きしましたが。

影山大祐さん

前の会社に勤めていたとき、次は東京ではない場所で働きたいと思ったんです。出身も埼玉で、東京にはすぐに出られますし、何よりさまざまな土地があるのに、自分は全然知らないな、と。そこで、思い切ってほかの土地で仕事を探して、たまたまそれが札幌だったんです。

― フットワークが軽いですね。診断士資格を取得して、何か変わったことはありますか。

考え方に変化はあったかもしれませんが、特に意識はしていませんでしたね。

― 自分の意見に変化が出てきたとか、相手の意見に裏づけができるようになったとか。

あったかなぁ...。やっぱり、当時はあまり考えていなかったかもしれません。試験に合格してから、中小企業診断士登録をするまでに2年くらいかかってしまったんです。

資格の勉強をする中で、さまざまな知識はついたのですが、広く、浅くだということは自覚していました。そして、自分が中小企業診断士としての知識を活かすには、何か専門分野の知識をつけなければ、コンサルティングをしても相手には効果がないと思ったんです。そんなわけで、「さぁ、どうしよう」と。

― でも、中小企業診断士登録をすると、独立してしまった(笑)。

はい(笑)。中小企業診断士登録後も、デザイナーとしては仕事を続けるつもりでしたので。いろいろと考えましたけれど、考えて答えが出るものではありませんので、とりあえずやってみようと。

― ということは、何か仕事があったのですか。

いえ、ほとんどなかったのですが(笑)。実際、独立を決めた段階では、年間10万円くらいの仕事しかありませんでした。でも、独立するときって、そんなものじゃないかなと思うんです。

― 何が影山さんの背中を押したのですか。

背中を押されたというか、たとえば、経験のないことは難しく感じるけれど、やってみると、意外と大したことはない場合も多いじゃないですか。だから、独立してから悩もうと思ったんです。

新しいブランドづくり

二重焼
二重焼(大堀相馬焼協同組合
公式ホームページより)

― さて、これまでクリエイティブの分野で多くの受賞をされていますが(読売広告大賞入賞、BtoB広告賞銅賞、SBSラジオCMコンテストグランプリなど)、最近では、デザインしたカップが福島県の「八重セレクション」に選ばれたそうですね。

福島県浪江町で生産される陶器に、江戸時代から300年続いている、国指定の伝統的工芸品の「大堀相馬焼」というものがあります。特徴は、「走り駒」と呼ばれる馬のデザインと、全体に広がる「青ひび」、そして「二重焼(ふたえやき)」という二重構造で、ここにしかない技術なんです。

ただ、技術はあっても、時代の流れとともに窯元は減少しています。地場産業の衰退など、地域の課題を解消するには、人を連れてくるだけでなく、まずはその土地の魅力を強化し、広く伝えていく必要があります。そこで、ここにしかない「二重焼」の技術を活かしたブランド「futae」を立ち上げ、若い世代へ向けた商品の製作を進めています。

― たしかに、「若い世代へ向けた」というキーワードは重要ですね。

これまでの商品は、あまり若い世代の生活に合うものがなかったんです。でも、若い人が興味を持ってくれないと、後継者も育ちませんからね。伝統技術が廃れていくのには、そういった理由もあると思っています。

― 「futae」という名前は、当初から決まっていたのですか。

それは、私が考えました。「二重焼」は大きさの違う2つのカップを重ね、飲み口部分でくっつけた構造になっています。そのため、間が空洞になっており、持ったときに熱くないのが特徴です。引き出物などにもおすすめですね。

― カラーバリエーションも、影山さんが考えられたのですか。

もともとは、グラデーションを考えていました。良い商品ができても、「どう売るか?」という問題は必ず生じます。でも、八重セレクションに認定されれば、販売する際、福島県にバックアップしてもらえます。八重セレクションのテーマカラーがピンクと黒でしたので、その色に合わせたんです。ある程度売れてきたら、もともとのグラデーションのものも発売したいと思っています。

― 売れるまでの道筋を考えるのは、中小企業診断士としても重要ですよね。

どんなに良いものを作っても、売れない場合も多いですからね。中小企業診断士として、デザインの力も使って地域の産業を支援する活動は、これからも積極的に取り組んでいきたいです。

― 中小企業診断士登録とともに、独立を果たした影山さん。独立前の実績も豊富ですが、独立後も商品デザインなどで実力を発揮されています。次回は、影山さんの考える「デザインの力」についてお聞きします。どうぞお楽しみに。

(つづく)

影山 大祐(かげやま だいすけ)
アートディレクター/デザイナー
1982年生まれ。2012年中小企業診断士登録。(一社)東京都中小企業診断士協会フットサル同好会所属。(株)メタモ、(株)パラドックス・クリエイティブなど、デザイン事務所や広告代理店に約10年間所属。その後、2012年9月に独立。広告、ロゴ、パンフレット、装丁、パッケージ、店舗ツールなど、さまざまな業種・ジャンルのデザインを制作。また、福島県の伝統的工芸品である大堀相馬焼の新ブランド立ち上げにも携わる。http://www.md-tokyo.com/