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海外のいまを知る―タイ編(中小企業診断士集団によるタイ・ホット訪問記)

文:山本 倫寛麻畑 紀美子加藤 ゆり姫野 智子(中小企業診断士)

【第2回】現地で見聞きした貴重な情報

「海外のいまを知る―タイ編」の第2回。私たちは、タイ最大の財閥系コングロマリット企業「CPグループ」の傘下にある不動産開発事業会社「CPランド」を訪問しました。今回は、この現地訪問レポートをお届けします。

和やかな雰囲気で進む情報交換会

CPランド社との情報交換会
CPランド社との情報交換会

ミーティング会場は、バンコク市内の地下鉄駅前に立つ大きなホテルの宴会場でした。ここは、CPランド社の手がけているホテル。高級感漂うエントランスを抜けて会場へ到着すると、「Welcome to MPA」と記載された大きなウェルカムボードを発見。温かいおもてなしに嬉しくなります。

会議の冒頭で、ミーティングをアレンジしてくださったMPA代表・秋島一雄氏が、訪問趣旨を流暢な英語で説明。続いてメンバーも、全員が英語で自己紹介を行いました。サミットのような格式ばった雰囲気に多少緊張した表情を見せつつも、そこは皆さん、中小企業診断士。次々と運ばれてくる豪勢なランチを食べながら、笑いを交えつつ、和やかに会が進みます。

CPランド社役員・サマナ氏
左側の女性がCPランド社役員・サマナ氏

今回は、CPランド社の役員・サマナ氏がミーティングの司会進行をしてくださいました。彼女は、高校1年生のときに日本の高校に進学し、23年間日本に在住していたそうで、日本語も非常に流暢。経歴も、日本の外務省やタイ政府の要人通訳、さらにはケニアに2年間駐在するなど、世界中で仕事をしてきたバリバリのキャリアウーマンでした。サマナ氏の「日本語で質問してくださってもOKです。私が訳して自社メンバーに伝えますよ」という言葉に、内心ホッとします。

アグリビジネス世界第5位のコングロマリット企業

今回訪問したCPランド社の属するCPグループは、タイ最大の財閥系コングロマリットで、特にアグリビジネス(農業関連産業)では世界第5位(World Investment Report [2009] )に位置しています。2010年の売上高規模は1兆円超と、全世界で約20万人の雇用を生む大企業グループです。

全自動養鶏設備
全自動養鶏設備

1921年に設立して、果実等の種子輸入販売から始まり、飼料の生産、鶏肉加工業等の水平的・垂直的な統合を積極的に行うなど、果実種子・肥料・農業畜産品の生産販売を中心に成長していきました。1980年代には、石油化学事業・通信事業・近代的流通業等、さらに事業の非関連多角化を進めて発展しましたが、1997年のアジア通貨危機を機に選択と集中を図り、現在は以下の3大ビジネスを中心に事業活動を展開しています。

1.アグリビジネス(農業関連産業)

現在のCPグループにおいて中核をなす事業。鶏、豚、エビ、農産物、乳製品等について、全自動養鶏設備の導入や、病気のない豚の飼育ノウハウ等、世界最先端の農業技術により、農畜産物の開発・生産から食品加工までを広くカバーした事業展開を行っています。

タイ国内のセブン-イレブン店舗の様子
タイ国内のセブン-イレブン店舗の様子

2.通信事業

CPグループの通信事業は現在、傘下のトゥルー・コーポレーション社が担っており、タイ国内において固定電話、携帯電話、ケーブルテレビの3事業をバランスよく展開し、いずれの事業でも国内で競争力を保っています。

3.近代流通事業

1988年に現セブン-イレブンとライセンス契約を行い、翌年にはタイに1号店を出店。以来、好景気を背景に順調に店舗数を増やし、現在はタイ国内に5,000店以上を展開しています。

CPグループと日本企業との提携例:CP-MEIJI

CP-MEIJIの乳製品
CP-MEIJIの乳製品

CP-MEIJIは1989年、CPグループと株式会社明治(当時、明治乳業)との共同出資で設立され、タイ国内で牛乳・ヨーグルト等の生産販売を開始しました。現在では、タイ国チルド牛乳市場の約5割のシェアを占めるトップブランドとなっています。

徹底した養鶏オートメーションに舌を巻く

会議の中盤、CPグループの企業活動が10分ほどにまとまった映像を見せていただきました。映像が流れ始めた瞬間、一同が息を飲むように静かになります。製造工程が徹底してオートメーション(自動化)されており、養鶏の様子から、チキン唐揚げの冷凍食品がパッケージされて出荷に至るまで、映像の中に人の姿が一切出てこないのです。

このような省人化農業(10万羽/人)を行うには、最高レベルの技術力が要求されるはず。この点について尋ねたところ、「常に世界中の技術進歩にアンテナを張っており、ベストプラクティスを集めている。この技術については、イスラエルのものを参考に技術導入を行った」とのことでした。また機械導入の際に、その会社のエキスパートも一緒に引き抜いたそうです。

CPグループがアグリビジネスで現在の地位を築いた要因は、この技術力と、それによって得た「安全」という品質の高さ・信頼だと確信した瞬間でした。このように、規模の経済を活かして効率化を実現している企業が、日本に進出してくる日も近いかもしれないと、少しドキドキしながら映像を見続けました。

CPランド社の不動産開発ポリシーは"SMART"

映像に驚きを隠せないMPAメンバーを横目に、サマナ氏はCPランド社の事業について説明を続けます。不動産開発事業を手がけるCPランド社は、約200人の会社。「ガルーダマーク」という、社会・国に貢献している会社のみにしか与えられない称号を国王から与えられているそうです。これまでも、開発してきた不動産がほぼ完売になるなど、順調に売上を伸ばしている様子で、現在は、環境省の許可がなければ施工できない工業団地開発にも着手しており、2013年に完成予定だといいます。

そんなCPランド社が不動産開発の際にポリシーとしているのは、SMART(Speed, Mind, Attitude, Reliability, Trust)の5つです。昨年のタイ洪水の際にも、積極的に資金や人材を無料で投資し、復興に貢献したそうです。「結果的に企業のバリューを一層上げることにつながった」といいますが、国や地域の発展に積極的に貢献する企業姿勢に共感を覚えました。

また、その後の質疑応答でも活発に意見交換が行われ、3時間を確保していた情報交換会はあっという間に終了しました。

中小企業の海外展開支援に活かしたい

ヘマラート・イースタン・シーボード工業団地にて
ヘマラート・イースタン・
シーボード工業団地にて

今回、企業訪問を行ったメンバーの約半数は企業内診断士で、残り半数は独立したプロコンサルタントです。今回の訪問は、普段から中小企業の海外展開を支援している独立診断士はもちろん、企業内診断士にとっても素晴らしい経験になりました。

中小企業の海外進出、特にASEAN地域への進出は、今後も続くでしょう。中小企業診断士として、実際に現地で見聞きした情報を交えながら、中小企業の経営者が少しでも不安を取り除いて海外展開できるよう、引き続き支援をしていきたいと思います。

(おわり)

※本稿は、山本倫寛、麻畑紀美子、加藤ゆり、姫野智子によるレポートです。

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