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診断士カレイドスコープ

海外のいまを知る―ミャンマー編

文:秋島 一雄田中 聡子七田 亘村上 知也(中小企業診断士)

【第2回】アジア最後のフロンティア、ミャンマー

アジア最後のフロンティア、ミャンマーの訪問記をお届けする第2回。できるかぎり回った現場の様子とともに、今後の課題と展望もお届けいたします。

庶民市場VS高級市場

市場の様子

私たちは庶民市場の代表格として、マンダレーのゼェギョマーケットを訪問しました。ここは、一般的なミャンマー人が利用する小さな市場で、パパママストアが所狭しと並びます。パパママどころか、家族みんなが市場で出店しながら食事をし、そこで生活を営んでいます。通路は狭く、衣料品や雑貨、医療品等が山積みです。特に、民族衣装のロンジーやサンダルの売場は同業種が固めて配置されているため、何十軒と連なって圧巻でした。しかし、物量とは対照的に顧客の姿は少なく、お店側の人が多い状況でした。

一方で、ヤンゴンにある高級ショッピングモールは、日本にあっても見劣りしない佇まいです。海外ブランドコーナーには、タイからの輸入品で、価格がバーツ表示のものもありました。東南アジアに強い衣料メーカーのGIORDANOはここでも人気で、現地ガイドの方によると、「ミャンマーで一番人気のあるブランド」とのことでした。また、ヤンゴン市内で見かけた女性は皆、ロンジーとサンダル履きでしたが、ショッピングモール内では、ミニスカートにハイヒールといった姿もちらほら見受けられました。ミャンマーでも、ASEAN諸国同様に貧富の差は大きく、拡大傾向にあると感じました。

ヤンゴン市内の工場視察

ヤンゴン管区には、約20の工業団地があります。そのうち、ヤンゴン東部のEast Dagon工業団地の自動車組立工場と、ヤンゴン北部のHlaing Thar Yar工業団地の縫製工場を視察しました。

自動車組立工場

自動車組立工場
自動車組立工場(SSS社)

ヤンゴン中心部から車で1時間ほどの場所に、East Dagon工業団地があります。その中に、Super Seven Stars Motors Industry社(以下、SSS社)の自動車組立工場がありました。同工場は2009年に設立され、ライトバン、マイクロバス、トラックを生産しています。主に溶接、塗装、組立、検査ラインがあり、工員は530人です。中国企業と技術提携をしていますが、塗装工程は大手日系企業の技術支援を受けています。

訪問時は、ほとんどラインが動いていませんでしたが、背景には政府の生産割当が工場の生産能力を著しく下回っていることがあります(政府の生産割当以上の生産は不可)。また、部品はすべて中国からの輸入に頼っています。今後は部品の現地調達が課題で、SSS社の幹部も、日本企業(特に部品を製造する中小企業)との提携を強く希望していました。

縫製工場

縫製工場
縫製工場(OPAL社)

ヤンゴン中心部から車で1時間ほど北へ移動した場所に、Hlaing Thar Yar工業団地があります。この工業団地は1995年に造成され、すでに多くの工場が進出しています。その一画に、OPAL社という韓国資本の縫製工場があります。訪問時は、韓国への輸出用冬物衣料生産のピークで、約2,000人の工員(ほとんど女性)が、1人あたり月1万円程度の賃金で働いていました。

彼女たちは、私たちを少し気にかけつつ、黙々と手を動かしています。私語一つなくミシンに向かう姿を見て、ミャンマー人の真面目さを感じました。このような気質は、日本人とも通じる点があり、日本人とミャンマー人の相性が合う部分ともいえそうです。

今後の課題と展望

商環境の整備

現在、徐々に商環境は整ってきていますが、外国人が土地を所有して工場を建て、ビジネスができる状況にはまだ至っていません。外貨の保有額が少ないため、天然資源や水産物等の輸出で得た外貨をもとに、必要なものを輸入するといった段階です。しかし、財閥系の一部の人々は、シンガポールに別口座を持ち、L/C(信用状)もシンガポールから出ていることが多いといわれています。

 また貿易を行うには、現地通貨(チャット)と米ドルとの為替レートをもとに、採算を考えなければなりません。この点は、4月から為替レートが公表され、クリアになりました。

同時に、同国を取り巻く外部環境も大きく変化しています。ミャンマーの位置する場所は、軍事的にも中国への牽制の意味を持ち、ASEAN諸国のみならず、米国も取り込みたい国であることは間違いありません。米国の制裁緩和への流れ、ASEAN諸国による同胞国としての取り込み、欧州による融和策等のトピックが、新聞紙上をにぎわしています。

また国内の動きとしても、ミャンマー政府は民族の融和政策や経済発展を政策の柱としています。こうした政府の姿勢から、ビジネス環境は整いつつあります。為替レートの統一以外にも、国営銀行3行の海外支店開設に向けた動き、借地権のライセンス制の整備、外資導入への制度の整備等が具体策として挙げられます。ミャンマー本国からのL/Cを邦銀が買い取る―といった時代も、もうそこまで来ている感じがします。

人材教育の必要性と可能性

子どもの僧

今年1月末の現地英字新聞一面では、全面記事で副大統領が、Human Resources Development Projectについて言及しており、人材教育に対する意識は高いものがあります。

ミャンマーではもともと寺小屋教育が盛んで、識字率が高く(寺院が「寺」小屋として機能する)、人間性も素直でフレンドリー、かつ勉強熱心です。適切な教育を行うことで、優秀な人材を多く輩出する可能性を秘めた国という印象を受けました。また、かつては英連邦だったため、ほとんどのビジネスシーンで英語が通じるというアドバンテージもあります。

さらに、私たちにとってありがたいのは、日本語への関心が非常に高いことです。大学で第二外国語として日本語を学ぶ学生も多く、日本語検定への試験熱も高いと聞きました。また企業訪問時も、経営陣で流暢に日本語を話す方に何人もお会いしました。

ヤンゴンの商工会議所では、人材教育関係の担当者が、私たちとのミーティングにも参加しており、多くの質問を受けました。日本が、ASEAN諸国に行っている人材教育面の支援を、ぜひともミャンマーでお願いしたいとのことでした。

また、訪問した企業との打ち合わせでは、必ず人材育成の話題が出てきます。工場にマンパワーは集まるが、教育が追いついていないといった悩みも、マネジャーから打ち明けられました。特にマネジメント層の不足が深刻で、軍隊や一部財閥には人材が集まったものの、それ以外に人材が集まりにくく、マネジメントに関する教育も施されていないといいます。

一方で、ミャンマーの大学でもMBA制度を整備しています。まずは大学を卒業し、その後、企業での実務経験2年を経てからでないとそのコースに入れないという、実務的な制度です。ちなみにマンダレーの商工会議所には、MBA通学中の方が2名もいらっしゃいました。

また、ヤンゴン市内の書店には、入口近くに英文の教育書が並んでいました。2列あった棚の1列は、児童向けの算数等のテキスト、もう1列はマネジメント、マーケティング、アカウンティングといったビジネスマン向けの経営書でした。入口すぐの好立地にかなりの面積を占めて置いてあることからも、教育や自己啓発への関心の高さを感じました。

今後の展望

今回の訪問を通じて、ミャンマーは日系の特に中小企業の進出を望んでいるが、現地での工場建設や事務所設立には、あと2年ほどはかかるといった感触を得ました。中小企業が求められる理由は、大規模な投資をして最新鋭の機械を導入するより、確実にミャンマーの経済基盤を支える中小企業と協力できる企業のほうがありがたい、との現場の声を多く聞いたためです。ヤンゴンの商工会議所でも、何よりも日本の中小企業支援策への質問が多く、同会議所ではそれを参考にしたいとのことでした。

同国へは、中国や韓国はすでに、リスクを覚悟で進出しています。韓流ブームの影響で、日本の化粧品よりも韓国の化粧品のほうが人気は高いという声も聞きました。またミャンマーの実業家からは、「日本はNATOだからね」といった指摘もされます。これは、「NO-ACTION、TALKING-ONLY」の略であり、恥ずかしながらよく的を射た表現だと思います。

しかし、大手コンビニエンスストアがミャンマー進出を発表し、食品メーカーも稼働再開を表明、通信インフラ企業も子会社の設立を発表するなど、今年の日系企業は「ACTION」もかなりはじめています。意思決定のスピードに関しては大企業に決して負けない日本の中小企業が、進出に向けた英断をする時期を真剣に探る時期だと思います。そして、いまから2~3年後に、そのピークが来ると考えています。

おわりに

私たちは現地で、記事にした以外にも、さまざまなリクエストや日本の中小企業政策に関する質問をいただきました。いままで国内で培ってきた官民双方のネットワークや、中小企業支援の現場で得た経験が、海外の方にも有益と感じていただけるのであれば、これほど嬉しいことはありません。はじまりは小さい歩みでも、後に振り返った時、「あの年が実は大きな一歩だった」と思えるよう、今後もミャンマーはじめ東南アジアで「ACTION」を積み重ねていきたいと考えています。また続編の報告ができますように!

(おわり)

※本稿は、秋島一雄、田中聡子、七田亘、村上知也によるレポートです。

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