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診断士カレイドスコープ

中小企業診断士、次世代へのバトン―千葉県中小企業診断士協会でスキルの伝承

文:稲垣 桃子(中小企業診断士)

【第2回】診断士スキルアップ研究会の活動内容

今回ご紹介するのは、千葉県中小企業診断士協会・診断士スキルアップ研究会の活動内容です。当研究会では毎回、プロのコンサルタントとして活躍中の中小企業診断士による発表が行われています。

トップバッターは、独立して17年のベテラン診断士、今井和夫さんによる「創業支援」です。創業支援にかかわる中小企業診断士は多くいらっしゃいますが、自分以外の方のノウハウを実践的に学べるケースはあまり多くないと思います。今井さんに、実際の創業計画書を基にし、解説していただきました。

創業支援(講師:今井和夫さん)

今井さん提供の資料
今井さん提供の資料(その一部)

第1回の診断士スキルアップ研究会では、最初のテーマにふさわしく、企業のライフサイクルのうちの「創業」を取り上げました。創業支援は、中小企業診断士の仕事としても比較的多く、創業にあたっての事業計画づくり支援は、1つのパターン(フォーマット)を持っておくと便利で、いろいろと応用できます。初回は、研究会そのものに関する検討内容も多かったことから、勉強会としては実際の事例に基づき、事業計画のフォーマットについて説明していただきました。

正直、ここまで詳細な資料を提示していただいてもよいのかとも思いますが、リアルな数値資料を基にした解説は、実践的かつ貴重な経験となります。独立間もない会員診断士にとって、とても参考になったのではないでしょうか。

また中小企業診断士には、企業再生支援に取り組む方も多数いらっしゃいます。主に県内企業の再生支援に取り組む茂木俊裕さんには、ご自身の経験から、中小企業再生支援協議会が求める視点やコンサルティングのポイントについて、解説していただきました。

企業再生(講師:茂木俊裕さん)

平成15年に中小企業再生支援協議会が設立されて以来、中小企業診断士が企業再生にかかわる機会も増えてきました。研究会では、中小企業再生支援協議会に中小企業診断士が外部専門家としてかかわるケースを中心に説明しました。以下は、その抜粋となります。

研究会の様子
研究会の様子

<1.事業DDについて>

  • まずは会社全体から捉えることが大事。
  • ビジネスモデル分析は重要。儲けのポイントはどこか。一般的なものと当社の違いは何か。
  • 事業の実態を把握する。現場の確認と経営者の認識に乖離はあるか。
  • 窮境要因を捉える。さらに深掘りする。節目、兆候およびデータによる理論づけが必要。
  • 窮境要因を取り除くには、いったい何をしたらいいのか。それで本当に改善できるのか。
  • 会社の強みと弱みを捉える。会社の強みを活かすにはどうするか。
  • 事業性はあるのか。どうすれば事業性ありと言えるのか。
  • 財務DDとの整合性の確認。
  • 会社の今後の方向性を提案する。

<2.再生計画策定支援について>

  • 収益計画策定の前に、何を改善するのかをはっきりさせる。基本方針を固める。
  • 数値計画はあくまで堅めに。計画であり、目標ではない。算出根拠を明確にする。
  • 事業DDで指摘した内容が反映されているか。
  • あくまで作成主体は会社。計画を実行するのも会社。改善するのも会社。
  • 会社の強みを活かす計画になっているか。会社が改善を図る計画となっているか。
  • 誰が何をどのように改善するかが書かれているか。改善後のイメージができるか。
  • 金融機関に合理的な説明ができ、支援要請可能な計画か。3つのガイドラインの確認。
  • 計画ができた段階で再度、実績との対比チェック。いつの間にか実績から離れていないか。
  • 具体的かつ実現可能性の高い計画になっているか。その会社の計画になっているか。

茂木さんは千葉県中小企業再生支援協議会にかかわっていらっしゃいますが、中小企業診断士等が行う事業DDや計画策定支援について、何が求められているか等を聞けるのも、当研究会ならではです。

当研究会の会員数は現在、23名(2012年3月時点)です。千葉県中小企業診断士協会では大きな規模ですが、人数を少なく感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、少人数でもバラエティに富んだメンバーが在籍しているのが、当研究会の特徴です。3人目は、中小企業の「事業承継」に取り組む種山和男さんによる発表をご紹介します。

事業承継(講師:種山和男さん)

今回のテーマは、「中小企業の事業承継と中小企業診断士に求められる役割」です。

会社経営者の平均年齢は年々上昇し、現在は約60歳です。また中小企業白書によれば、後継者不在による廃業が年間7万社で、これに伴う雇用喪失は年間20万~35万人程度と推測されています。

このように、事業承継は日本経済の礎にもかかわる問題ですが、事業承継自体が現経営者の相続を連想させるため、課題の掘り起こしがなかなかできない潜在的なテーマでもあります。こうした中、平成20年10月には「経営承継円滑化法」が施行され、事業承継に前向きに取り組む企業も増えてきました。

しかし事業承継は、専門分野(経営全般・法律・金融・労務)が多岐にわたります。そのため、「課題の掘り起こし→課題整理→課題解決」の過程において、支援者(支援機関の経営指導員、士業等の専門家等)が課題を自分1人で抱え込むのは得策でなく、支援者間での連携が望ましいのです。そして、連携の中で中小企業診断士が支援する分野としては、主に「後継者教育」、「事業承継計画の作成支援」等があります。しかし、中小企業診断士は、経営全般を見通せる専門家です。今後は「課題の掘り起こし→課題解決」の過程において、全体をコーディネートする役割が期待されているのです。

ご発表いただいた種山さんは、公認会計士でもあります。他士業から見て、中小企業診断士がどのように評価されているのかという視点も含んだ内容は、中小企業診断士の枠にとどまらない幅広さを感じさせました。

今後の研究会では、次のようなテーマを予定しています。業種特化や支援の形など、さまざまな切り口は、参加者にとっても刺激となるものばかりだと思います。

  • 飲食店経営(講師:河野祐治さん)
  • 経営革新計画作成支援(講師:清水 真さん)
  • 美容院経営(講師:野村 忠さん)

次回は、参加者の声と、スキルアップ研究会の"本当の魅力"についてお届けします。

(つづく)

診断士スキルアップ研究会に入会するには、いくつかの条件があります。

  • 千葉県中小企業診断士協会の会員である方
  • 年齢が55歳以下である方
  • 現在独立している、もしくは将来、コンサルタントとして独立したいという気持ちがある方

見学については、お気軽にお申し付けください。

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