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中小企業診断士、次世代へのバトン―千葉県中小企業診断士協会でスキルの伝承

文:稲垣 桃子(中小企業診断士)

【第1回】診断士スキルアップ研究会が誕生

次世代の若手診断士にバトンをつなぐべく、精力的な取組みを行う千葉県中小企業診断士協会を紹介する第1回目。今回は、診断士スキルアップ研究会成立の過程と、ベテラン診断士が抱く若手診断士への思いを記します。

研究会の様子
研究会の様子

140名ほどの会員の大半が企業内診断士である千葉県中小企業診断士協会。理論政策更新研修以外にはなかなか協会活動に参加されない方が多く、気づいたらいつも同じメンバー、というのが実情でした。協会内には、「このままではごくごく限られたメンバーに限定されてしまう」との危機感が生まれつつあり、そんな中、新人診断士や若手診断士に対する取組みがスタートしました。

3年前から、新しく入会した新人診断士は、1年間限定の「新人研究会」に入会し、その研究テーマについて、協会報や新年会の場でプレゼンテーションを行っています。しかし、新人研究会の活動は新人のうちだけにとどまってしまうため、ベテラン診断士との交流が行いにくいというデメリットがあります。そこで平成23年10月、千葉県中小企業診断士協会副会長の今井和夫さんの呼びかけにより、「診断士スキルアップ研究会」が発足しました。中小企業診断士登録の年度にかかわらず、若手会員に限定し、生きたコンサルティングスキルのバトンを渡していくという試みです。

診断士スキルアップ研究会の成立過程
千葉県中小企業診断士協会副会長 今井和夫

<研究会成立の目的>

平成23年10月1日、当時の中小企業診断協会千葉県支部に、新たな研究会として「診断士スキルアップ研究会」が発足しました。誕生の主な目的は、3つにまとめることができます。

1つ目は、主宰者である私の思いです。協会の設立理事(旧千葉県支部副支部長)を務め、また独立して17年目という経験からも、次世代を担っていく若手診断士の育成の場を提供したいという思いからでした。

2つ目は、近年、千葉県中小企業診断士協会でも実務補習を行うようになってから若手診断士が増え、協会の支援もあって同期内の交流は図られてきているものの、若い世代間の縦の交流の場づくりが課題となっていたことです。

そして3つ目が、中小企業支援機関との情報交流会をきっかけに、協会内の若手独立診断士の交流の場ができ、当該メンバーを中心に研究会が発足したことです。

<目的1・主宰者の思い>

要因1については、私の診断士経験が大きく影響しています。

私は、平成7年4月に中小企業診断士登録をしました。登録当初は企業内診断士で、職場も東京だったことから、当時の東京支部中央支会に所属しました。しかし、転勤をきっかけに同年6月末に退職し、7月に中小企業診断士として独立します。32歳のときでした。そして独立と同時に、独立診断士が多く、仕事面での連携も活発と聞いていた当時の千葉県支部に移りました。

実際に移ってみると、諸先輩から各中小企業支援機関に紹介していただいたり、一緒に仕事をさせていただいたりと、大変恵まれた環境でした。当時、すでにバブルは崩壊していましたが、中小企業基本法が改正される前で、中小企業対策事業も現在と比べて大変多かったと記憶しています。特に、私は商業関係を専門としていたことから、商店街の活性化や組合運営にかかわる仕事が多く、組合の次世代を担う後継者育成のための青年部活動も支援していました。

現在は、中小企業基本法が改正され、税収も少なくなっていること等から、中小企業対策事業規模は大幅に縮小されてきています。また支援内容も、集団に対する経営支援から個別企業に対する経営支援へと変わってきており、先輩診断士が後輩診断士と一緒に仕事をするケースはほとんどなくなってしまいました。したがって、若手診断士が仕事を通じてスキルアップを図ることは、大変困難な環境となっています。

こうした中、先輩診断士の方々にお世話になってきた私自身、近年増加傾向にある若手診断士に対し、今度は私が何かお手伝いできないかという思いが強くなってきていたのです。

<目的2・若い世代間の縦の交流の場づくり>

千葉県中小企業診断士協会でも実務補習を行うようになり、ここ数年は担当した班の研修生に入会していただけるケースが増えています。そして協会としても、新人会員向け説明会の開催や、同期意識醸成のための任意での新人会員研究会の活動支援を行ってきました。その結果、同期同士の連携は図られつつあると思います。

しかし、各研究会に積極的に参加する若手会員もいる一方で、世代間の年齢幅が広く、つい遠慮がちな参加姿勢になってしまっているとも感じていました。また、若手診断士にも第一線で活躍する方がいて、組合で言うところの「青年部」的な、若手同士がお互いに切磋琢磨し、中小企業診断士として成長していけるような組織が必要となってきました。

<目的3・中小企業支援機関との情報交流会による若手独立診断士の交流の場>

そんな中、ある千葉県内の中小企業支援機関との情報交流会が、安藤孝・千葉県中小企業診断士協会会長の支援機関への働きかけから実現しました。支援機関のトップ自ら、3回にわたって勉強会を開催していただき、大変有意義なお話をうかがうことができました。

そして、情報交流会を通じて若手独立診断士の交流が活発化し、盛り上がってきました。そこで私の想いを話し、研究会への参加協力を得られた結果、当該交流会メンバーを中心に、診断士スキルアップ研究会の発足に至ったのです。

<活動内容>

当研究会の活動目的は、「若手独立診断士及び将来独立を目指す若手診断士が、相互研鑽によるコンサルティング業務の知識とノウハウの習得に努める。そして、これらの活動により、千葉県中小企業診断士協会の次の世代を担う人材育成とコミュニケーションの促進をはかる」こととしています。具体的には、2ヵ月に1回、原則第3土曜日の午後に開催し、(1)企業のライフサイクル:創業、経営革新、企業再生、事業承継、管理的破綻等、(2)業種:小売業、サービス業、飲食業、製造業、(3)戦略分野:経営、労務、販売(営業)、生産、物流、IT等と、中小企業診断士として必要なスキルのテーマを会員相互で担当しながら、勉強会を行っています。

研究会で大切にしていることは、勉強会の後の"飲みニケーション"です。中小企業診断士がよい仕事をしていくためには、ネットワークがとても重要です。当研究会を、ネットワークづくりにも役立たせていきたいと考えています。

診断士スキルアップ研究会は、千葉県中小企業診断士協会をはじめ、千葉県の中小企業支援機関からも注目を集めています。それだけ、県内の若手診断士への期待は高いのです。

また、千葉県中小企業診断士協会・安藤孝会長からも若手への期待のメッセージが寄せられています。

新しい取組みに期待する 千葉県中小企業診断士協会会長 安藤 孝

千葉県中小企業診断士協会では、数年前から新入会員への支援活動を強化しています。中小企業診断士は、他士業と違って職域が明確ではなく、何を商売にするかは本人の意思にかかっています。新入会員に限らず若手診断士にとっては、何を自分の領域として活動すべきか迷うところと思います。

私は、これまでの自身のキャリアを活かした領域から始めて、少しずつそれを増やしていくことが望ましいと考えています。従来は、さまざまな分野の先輩診断士について、その仕事ぶりを見ながら、時間をかけて得意領域を見つけていくやり方が一般的でした。しかし、現在のように変化の激しい時代では、もっと別の効率的なやり方を模索する必要があります。そのためには、幅広く多くの方から話を聞き、体験し、自分に合った業務領域を見つけるための「場」が必要です。

この考えに基づいて、従来から外部支援機関の皆様にも、若手会員の活用をお願いしてきました。そしてこのたび、一部外部支援機関からの要請もあり、若手会員による勉強会を新たに開始したのです。若手と言っても、一般に言う若手とはやや定義が異なり、社会では働き盛りの年代の人たちです。当研究会は、参加者のスキルアップはもちろんですが、目的の1つとして、次世代の千葉県中小企業診断士協会を担ってくれる人材の育成にも期待しています。

ここ数年、毎年10人程度の新入会員が加入されています。若手診断士が研究会を通じて、将来的に中小企業診断士という職業で活躍するために、自身に適した領域を見つけていただければと思います。そして、この研究会はそれを十分に支援できるものと考えています。

では実際に、どのようなスキルの伝承が行われているのでしょうか。次回は、研究会の内容をご紹介します。

(つづく)

診断士スキルアップ研究会に入会するには、いくつかの条件があります。

  • 千葉県中小企業診断士協会の会員である方
  • 年齢が55歳以下である方
  • 現在独立している、もしくは将来、コンサルタントとして独立したいという気持ちがある方

見学については、お気軽にお申し付けください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。 http://chiba-smeca.com/modules/contact/