経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

診断士カレイドスコープ

平成23年中小企業経営診断シンポジウム報告

取材・文:鎌田 浩一(中小企業診断士)松林 栄一(中小企業診断士)

【第1回】「成功のカギは"出会い(CHANCE)"にある」

取材日:2011年11月9日

平成23年11月9日(水)、東京都文京区の東京ガーデンパレスにて、平成23年度「中小企業経営診断シンポジウム」が開催されました。今回は、このシンポジウムの模様をレポートいたします。

企業の躍進をサポートする中小企業診断士

中小企業経営診断シンポジウム

「中小企業経営診断シンポジウム」は、「中小企業の健全な発展のために、高度な経営手法、経営診断技法等について深く研究し、広く経営診断・助言体制の強化を図ること」を目的として、年に1度行われている一大イベントで、統一テーマに沿い、以下のプログラムで進行しました。

第1部

開会式(10:30~10:40)

基調講演(10:40~11:50)

「社員が主役」の経営 未来工業株式会社代表取締役社長 瀧川克弘氏

第2部

第1分科会(13:00~16:10)

中小企業診断士による経営革新支援事例論文発表(中小企業庁長官賞対象)

第2分科会(13:00~16:50)

診断協会各支部および会員グループによる調査・研究発表

「東日本大震災復興支援活動--中小企業診断士の役割」発表

第3分科会(13:00~16:50)

東京支部による研究会成果発表<支援事例・診断ツール>(入選者発表)

[同時開催]無料経営相談会(13:00~16:00)

表彰式(17:00~17:30)

本稿では3回に分けて、中小企業経営診断シンポジウムの全プログラムの模様をご紹介します。

開会式

シンポジウムは、10時30分に開会しました。冒頭の開会式では、福田尚好・(社)中小企業診断協会会長による開催挨拶に続き、徳増有治・中小企業庁経営支援部長より来賓挨拶を頂戴いたしました。

福田尚好・(社)中小企業診断協会会長
福田尚好・(社)中小企業診断協会会長
徳増有治・中小企業庁経営支援部長
徳増有治・中小企業庁経営支援部長

「社員が主役」の経営

開会式終了後、10時40分~11時50分までの70分間にわたっては、未来工業株式会社の代表取締役社長である瀧川克弘氏による基調講演が行われました。講演のテーマは、「『社員が主役』の経営」。皆様お待ちかねとあって、会場は満席です。熱気に包まれた中、講演は始まりました。

未来工業株式会社は、岐阜県に本社を構える、電気設備資材・給排水設備・ガス設備資材の製造販売を手がける企業であり、平成23年5月16日に、法政大学・日刊工業新聞社・あさ出版が共同で主催した第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の表彰式において、経済産業大臣賞を受賞した企業です。全国の書店で一大ブームを巻き起こした「日本でいちばん大切にしたい会社」の2冊目で、「日本でいちばん休みの多い会社」として紹介された企業、ということでご存じの方も多いかもしれません。

瀧川克弘・未来工業株式会社代表取締役社長
瀧川克弘・未来工業株式会社代表取締役社長

「日本でいちばん休みが多い」にもかかわらず、好業績、高収益力を誇り、主要製品のコンセントボックスでは国内シェア80%という脅威の実績を持つ超優良企業。同社2代目となる瀧川社長は、講演の中で、そんな同社の強みの源泉を惜しみなく披露してくださいました。時折ジョークを織り交ぜながら、温かい口調で語りかける飾らないお姿は、まさに「誠実」を絵に描いたような経営者像でした。

同社は、数々のユニークな経営手法で知られています。「年間休日140日超」、「残業禁止」、「タイムレコーダーなし」、「制服なし」、「報連相なし」、「強制教育なし」、「終身雇用」、「70歳定年」、「ユニークな提案活動」、「正社員しか雇わない」、「3年間の育児休暇制度」。なんとも型破りな、オリジナリティあふれる制度が目白押しです。一見しただけでは異色の手法に感じられますが、これらの制度が生まれてきたのには、ワケがあります。

その1つは、「創業時の誓い」。ときは昭和40年、同社の創業時にさかのぼります。創業者である山田昭夫・現取締役相談役と清水昭八氏は、同社を立ち上げた際、3つのことを誓い合ったといいます。

1.人と同じ物を作らない。「世界で初めて」を作る。

2.人を大切にする。人にこだわった経営をしよう。そのためには経営者が公私混同しない。

3.この仕事で世の中に貢献していく。

この創業時の誓いが、今なお脈々と続いていることが、同社の成長を支えてきたのです。

そしてもう1つは、「常に考える!」ということ。2人の創業者は、先の3つの誓いを実現するためにこのスローガンを作りました。このスローガンも、今なお綿々と受け継がれ、社内のあちこちに張り出してあります。同社のユニークな制度の数々は、会社内の全員が「常に考える!」を実践することで生み出されてきたアイデアの結果なのです。

「常に考える!」ことで、3つの誓いをどう具現化してきたのか。その1つは、「ものづくり」に現れています。同社の販売するコンセントボックスは、なんと100種類。普通の企業なら、3~4種類の品揃えです。コスト度外視で、千差万別のお客様の要望に応える。97種類はすべて赤字でも、トータルで黒字になればいい。まさに「人と同じ物を作らない」の実践であり、これが80%を超えるシェアを生み出している秘密なのです。

2つ目は、「ひとづくり」。社員にとっては、「楽をさせて、高い給料をあげる」のが一番。そこで、たとえば「残業禁止」。「社員の1日は24時間しかない。人間らしく過ごせる時間は、たったの4時間だけ。この貴重な時間を残業で奪うことはあってはならない」--瀧川社長はそう、熱く語ります。まさに「人を大切にする」の実践です。

瀧川社長は、「これからの企業経営は、『社員が持っている潜在能力を、いかにして引き出してあげるか』が大切」といいます。「『管理』はしない。枠を広げてあげる。人間には学習する能力がある。変わっていける。過ちはあってもいい。部長は仕事をするな。働きやすい環境を作れ。手をかけずに目をかけろ。社員には自己啓発をしてもらい、多様な能力を発揮してもらう。そのためには惜しみなくお金を使う」。まさに、「企業は人なり」を独特のアイデアと方法で実践してこられた企業といえるでしょう。

未来工業株式会社は、こうしたユニークな社内制度のほかにも、エコアクション21などの環境活動や、「地域の人たちに世界の文化を」と称して開催している「未来コミュニティシアター」など、社会貢献活動にも熱心に取り組んでいます。「文化活動=会社のライフワーク」と位置づけ、高い経済性と社会性の両立を目指して、これからも歩み続けていきます。

「成功のカギは"出会い(CHANCE)"にある。」

瀧川社長のお話は、そのテーマどおり、まさに「『社員が主役』の経営」でした。会場の皆様も、深い感銘と大きな学びを得たのではないでしょうか。(社)中小企業診断協会は、当シンポジウムの案内パンフレットに、「成功のカギは"出会い(CHANCE)"にある。」というスローガンを掲げています。この日、こうして未来工業株式会社の取組みに触れられたことは、まさに多くの中小企業経営者や支援者にとっての"出会い"だったに違いありません。今後、多くの企業が、同社の取組みを参考に経営革新を図り、躍進を遂げていくことを願ってやみません。

(つづく)

【こちらもおススメ!】