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診断士カレイドスコープ

「研究会に行こう!vol.3」

取材・文:太田 佐和子(中小企業診断士)

【第1回】「先端小売業研究会」訪問記その1

取材日:2011年9月28日

研究会の取材レポートをお届けする「研究会に行こう!」も、3回目となりました。今回は、東京支部城西支会の研究会である「先端小売業研究会」を訪問しました。
 中小企業診断士の世界には、何百もの研究会・懇話会・同好会等(以下、研究会)があり、多くの中小企業診断士が何らかの組織に属して活動しています。しかしこの研究会、なかなか活動のイメージがわきにくいもの。先端小売業研究会についても、実際に参加して初めてわかることがたくさんありました。

ニッチに特化した研究会?

「ニッチ市場」がターゲット

先端小売業研究会

まず、先端小売業研究会がどのような活動をしている会なのか、東京支部城西支会のホームページなどで調べてみました。すると、研究会の目的に次の2つが書かれています。

1.ニッチ市場における実践的なマーケティング手法の研究を行います

2.ニッチ市場における事例を研究し、得られたノウハウを中小企業支援に活用します

どうやら、ニッチ市場に特化した活動をされているようです。「先端」というのはニッチ市場を指していて、また小売業中心の研究をされているのだろうと推測されます。しかし、具体的なイメージはまだわかないような...。

そもそも「ニッチ市場」って?

マーケティングにおけるニッチ市場とは、ある程度のニーズ(需要)はあるものの、その規模が小さいため、商品やサービスの供給・提供が行われていない市場のことです。そして、ニッチ戦略とはこの小さな隙間でのNO.1シェアを目指すことであり、中小企業や起業家にとっては注目すべき戦略の1つです。最近では市場の成熟化により、生活者のライフスタイルは多様化・個性化しており、ニッチ市場を狙う企業も増えてきました。小売店においても、「こだわり」を持つ、新しいジャンルのお店が増えているように思います。

先端小売業研究会では、そうしたニッチ市場に対し、具体的にどのような研究活動をされているのか、さっそく研究会に参加してうかがってみることにしました。

活発な意見が飛び交う研究会

和やか、かつ引き締まった雰囲気

9月最終週の水曜日、会場である中野区立商工会館に着くと、会員の方が集まってきました。出席者は男性ばかりでしたが、「もちろん、女性会員もいるんですよ」と、ふだんの研究会の様子をいろいろと教えてくださり、皆さんと初対面の私も少し緊張が緩みます。そして開始時刻の19時になると、「では始めましょう」とリーダーの田中さんが場を切り替えられ、研究会がスタートしました。和やかでありつつ、引き締まった雰囲気の研究会という印象です。

独自の手法で、全員で

この日は、研究会全体で取組んできたある小売店のマーケティング戦略について、「研究報告書」が完成したとのことで、その内容について説明がありました。研究報告書を読んでまず目にとまったのは、「買い物行動把握のための分析シート」という表です。私はこれまで見たことがない表でしたが、先端小売業研究会では、ニッチなビジネスに対するマーケティングを検討するにあたり、この「買い物行動把握のための分析シート」を独自の分析ツールとして生み出し、活用しているのだそうです。そして報告書には、この分析結果に基づいた、非常にきめ細やかな施策の提案が盛り込まれていました。

説明を聞くと、「買い物行動把握のための分析シート」の作成や施策の提案は、研究会のどなたかが単独で行ったものではなく、研究会全員で取組まれたのだそうです。だからでしょうか、皆さん、積極的に感想や意見を出され、議論も盛り上がりました。一般的に研究会というのは、誰かが講義や研究発表を行い、出席者がそれを聞くという形式が多いように思いますが、先端小売業研究会のように、最初から最後まで「意見交換」や「ミーティング」のようなスタイルもよいものだと感じます。ワイワイ意見を言いながら全員で取組めば、楽しみながら議論もより深められますし、チームワークも深まるに違いありません。

最後に、次回の研究で取り上げる小売店の候補もいくつか紹介されました。今回、研究報告書にあったお店も含め、どれも非常に興味深いジャンルのお店ばかりです。店舗を見に行く計画にも次々と手が挙がり、スケジュールも決まったところで会は終了となりました。

中小企業診断士にとってのニッチ市場

先端小売業研究会

研究会の後、出席者の皆さんにいろいろと質問するお時間をいただきました。研究会に出席してみて感じたことをぶつけてみました。

― まず、なぜ「ニッチ」なのですか。

もともとこの会を創設された杉浦肇氏が当時、中野区の相談員をされており、いろいろな創業案件を受ける中で、これまでにない新業態が増えてきたと感じられたそうなのです。新業態となると、過去に事例もデータもありませんし、需要予測の方法さえわからない。でも、支援しなくてはいけません。そこで杉浦氏は、新しいビジネスを支援するにあたり、中小企業診断士の皆さんが利用できるツールをつくりたいと考えられました。それが、「買い物行動把握のための分析シート」であり、そしてその研究のために創設されたのが、この先端小売業研究会です。ちなみに杉浦氏は、平成8年に開催された「中小企業経営診断シンポジウム」(主催:(社)中小企業診断協会)において、「買い物行動把握のための分析シート」に関する論文発表を行い、中小企業庁長官賞を受賞しているんですよ。

先端というのは、いわゆるロングテールの先端にあたる部分を支援しよう、という意味が込められています。途中で、「ニッチビジネス」という名前に変えようという話もあったのですが、創業者の思いを大切にしたいと、先端小売業研究会の名前を継続してきました。

図表:買い物行動把握のための分析シート(あるパン屋さんの例)

買い物行動把握のための分析シート

(社)中小企業診断協会発行 『企業診断ニュース』2009年8月号 連載「ニッチ市場の創業支援と診断士の実業」(先端小売業研究会)より抜粋

― 活動の方針や内容をお聞かせください。

われわれは、そのお店のお客様が何を望んでいるのか、という視点を重視しています。新しく開業した方は、「自分はこういうものを売りたい」、「こういう事業をしたい」と、すごく強い思い入れがあるんですよね。でも、それが本当にお客様のニーズと一致しなければ、商売としては成功しません。ですので、売り手の思いとお客様のニーズをどうマッチングさせていくかが重要なのです。われわれは、お客様がそのお店でどういう買い物行動をしているのか、「買い物行動把握のための分析シート」を用いて分析し、お客様の視点から、売り手の施策をアドバイスするという活動をしています。この「買い物行動把握のための分析シート」は、創設者の杉浦氏が発案されたものですが、この研究会の中で随分改良されて、いまの形になりました。どのようなニッチ市場でも活用できるツールなんですよ。

またわれわれは、あくまで小売業のマーケティングに特化していますので、財務等には深くは突っ込みません。どういう切り口でビジネスを見るか、どういうビジネスモデルが考えられるか、というマーケティングの視点で取組んでいます。面白いですよ。

(つづく)

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