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診断士カレイドスコープ

元支援機関職員の中小企業診断士が教える施策活用法

文:園田 晋平(中小企業診断士)

【第2回】「新連携」~「異業種をひとつの結晶に育てる」の理念で、豚肉トレーサビリティビジネスを実現~

実際に中小企業施策を活用した企業を紹介しながら、その施策の実際をお伝えする目的で始まった当連載。今回は、異分野企業との果敢な連携により、新ビジネスに挑戦した過程で「新連携」事業と出会い、採択を受けた企業の事例をご紹介します。

「新連携」とは


池田謙伸代表取締役社長CEO

「新連携」とは、平成17年4月の中小企業新事業活動促進法施行とともに実施された事業(同法では「異分野連携新事業分野開拓」)で、分野を異にする事業者が有機的に連携し、その経営資源(設備、技術、個人の有する知識及び技能その他の事業活動に活用される資源)を有効に組み合わせて新事業活動を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図ることを言います。約7年間の承認件数は、累計で761件(平成23年9月30日現在)と少なく、他の法認定に比べてハードルが高いと言えます。

豚肉トレーサビリティシステム事業

株式会社協同インターナショナル(神奈川県川崎市、池田謙伸代表取締役社長CEO)は、現在では電子事業をはじめ、生ハム等の食品事業、酪農畜産機械事業、バイオ事業等、幅広い分野に展開し、その多くの分野で高いシェアと実績を有しています。同社は平成17年、「養豚市場を対象としたDNAトレーサビリティシステム」によって新連携の認定を受けました。まさに新連携事業がスタートした年のことでした。

トレーサビリティシステム事業の概要は、豚肉がどこの農場で生産されたのかを、DNA解析技術を利用してトレースすることにより、科学的に証明できるシステムです。このシステムによって、畜産農家にとっては偽装ブランド豚肉から自分たちの豚肉を守るというメリットが、また消費者にとっては食の安全というメリットが得られました。さらに将来的には、データベース化したDNA情報によって、育種向上にもつながる期待があります。

同社はなぜ、この事業で新連携の承認を得ることができたのでしょうか。もちろん、非常に高い事業可能性を有していたのも大きな理由ですが、根底には創立以来、社内に脈々と流れる、異業種に積極的に進出して新たな付加価値を生み出そうというパイオニア精神、そして事業機会に対し、自社の強みと異業種の強みを結合して取り組もうとする柔軟性とフットワークがありました。

新サービスが生まれるまで

同社は昭和45年(1970年)、先代社長によって創立されました。輸入機材の取扱いを中心に、早くから多角化を念頭に事業展開を模索しており、当時、わが国で酪農畜産農家の機械化が進みつつある点に着目しました。そして、酪農先進国である欧州の最新酪農機械の輸入事業を開始し、北海道をはじめ、全国の酪農畜産農家に販売したのです。

「酪農畜産における国内外のネットワークとノウハウ」という経営資源を蓄積した同社は約20年前、これらの経営資源を活かして、当時のわが国にはなかった生ハムの輸入事業を開始しました。生ハム事業は、1990年代のイタメシブームにも乗って順調に業績を伸ばし、現在でも輸入生ハムの国内トップシェアを維持しています。

しかし、こうして着々と事業を拡大しつつ、さらに次の手としてバイオ事業への進出を図っていた矢先に、わが国において食の安全性がクローズアップされる出来事が次々に発生しました。

連携によって新事業へ

21世紀に入って生じたBSE問題や食品加工メーカーの産地偽装問題等により、食肉のトレーサビリティが要求されるようになります。そんな中、多くの畜産農家がトレーサビリティ対応に頭を抱えているのを目の当たりにした同社は、バイオ事業への進出を図っていたこともあり、「豚肉トレーサビリティシステム」というアイデアの事業化に乗り出すことにしました。そして、この新事業とほぼ同時期にトップに就任した池田社長は、異業種との積極的な連携で、事業化を取り進めていくことを真っ先に考えたのでした。

新連携事業計画策定に挑戦

池田社長は、すぐにパートナー探しに着手します。そして、DNA分野に強いバイオ技術のベンチャー企業であるG&Gサイエンス(株)、(独法)草地畜産研究所と大手電機メーカーをパートナーに加えての研究開発が始まりました。

同事業の研究開発を進めるには、豚のサンプルを数多く採取する必要等もあり、かなりの資金が生じます。補助金による支援を検討し、川崎市産業振興財団に相談したところ、この事業は「異業種の中小企業者2者以上が連携して新サービスを開発する」ものであり、「異なる経営資源の持ち寄りにより可能となる事業活動で、相当程度の需要を開拓してビジネスとして成立する」との評価を受けました。そして、スタートしたばかりの「新連携」を紹介され、専門家による計画策定支援を受けることになったのです。こうして、専門家の支援も得ながら事業計画を策定した結果、協同インターナショナルをコア企業とし、高いと言われるハードルを見事にクリアして、計画が承認されました。

新連携が難しいと言われる理由の1つに、異業種の連携があり、グループ内での足並みの乱れや利害の衝突等、さまざまな障壁があることが考えられます。この点について池田社長は、「事業の最終目的が明確であったこと、そして創業以来、ずっと異業種と積極的にかかわってきたことで、抵抗感なく取り組め、意見調整もスムーズにできた」と話します。まさにこの言葉に、成功の秘訣のすべてが集約されているように思います。

新連携の重み

「異業種をひとつの結晶に育てる」--これは、池田社長の掲げる企業ビジョンです。このビジョンのとおり、「異業種との連携」はこれからの中小企業の発展に不可欠であり、それを裏づけるかのように、連携を後押しする国の施策も存在します。そしてその最たるものが、この「新連携」だと思います。異業種とともに取り組むことで、新たなビジネスが生まれる可能性があるのならば、支援策も充実した新連携認定にチャレンジする価値は、大いにあるかと思います。

(つづく)

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