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診断士カレイドスコープ

「研究会に行こう!vol.2」

取材・文:太田 佐和子(中小企業診断士)

【第1回】「良い食品販売研究会」訪問記その1

取材日:2011年5月16日

「研究会に行こう!」の2回目は、(社)中小企業診断協会東京支部の研究会である「良い食品販売研究会」を訪問してきました。

訪問前に事前確認

食品を一気通貫でみる?

入手したチラシをみると、「良い食品販売研究会」の目的が書いてありました。目的は「良い食品の原料選択の仕方、良い食品の作り方を学び、その食品販売のあり方を考えること」とのこと。研究会の名前に「販売」とついているので「売ること」を中心に研究すると思っていましたが、どうやらもっと幅広く、食品について原料から販売までを一気通貫で研究している会のようです。食品の原料や作り方になると専門家の領域のようにも感じますが、皆さんどのような研究をされているのでしょうか。

企業支援に必要な理論も学ぶ?

また、チラシの活動内容の欄には、「酒造メーカーなどで、実際に企業診断を行っています。また、実践に役立つ知識を深めるために、コトラーやドラッカー、マービン・バウアーなどの定石本に折り込まれた理論を解釈し、診断ノウハウやツールとして活かすための研究を行っています」とありました。単に食品の研究をしているだけでなく、企業支援に必要な基礎知識も並行して学んでいるようです。

では、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。奥深そうな内容に心が弾みます。早速申し込みをし、研究会に参加させていただくことにしました。

定例会に気軽に参加

和やかな雰囲気

第3月曜日の夜、会場は東京都中央区にある久松町区民館です。会場に入ると、10名ほどの方がすでに着席されていました。決して広くない会議室で皆さんロの字型に座っており、距離が近く全員の顔がよく見えます。開始前も皆さんで近況報告などで談笑されており、初めて参加する私もその輪に混ぜていただきました。こうした和やかな雰囲気の中、会がスタートしました。

「食」について詳しく知る

テーマは「肉牛」と「チーズ」

この日の定例会は、二名の会員による研究発表でした。松澤秀蔵先生による「肉用牛畜産業の課題」、芦田健一会員による「チーズの勉強会1~ミクロの視点から~」です。そして最後にはなんと、チーズの試食会まであるとのこと!18時半からの研究会で「肉」と「チーズ」の話を聞いたらお腹が空いてしまいそうですが、どちらも普段めったに聞くことのできない内容であり、チーズをおいしく味わうためにも、空腹をぐっとこらえワクワクしながらお話に耳を傾けました。

肉用牛畜産業の課題

まずは、松澤秀蔵先生による「肉用牛畜産業の課題」についての発表です。松澤先生はかつて自ら食肉店を経営し、また昭和33年から中小企業診断士でもいらっしゃる方です。配布された資料は、松澤先生がかつて雑誌「肉牛ジャーナル」に連載された「肉用牛畜産業の課題」というレポートと、「肉牛原価・販売価格計算表(部分肉卸用)」というエクセル表です。

「肉用牛畜産業の課題」については過去にも研究会で発表されているそうで、今回はそのうち、部門別会計制度の課題を取り上げられていました。

畜産の場合、肉用の牛を繁殖させて売る/子牛を買って大きく育てる/成体を売る/肉に加工する、といった様々な事業形態があります。その事業形態(部門)毎に会計を見なければ、計画的な経営はできません。しかし、畜産での部門別管理会計はかなり困難であるそうで、あまり進んでいないそうです。松澤先生からは、これら課題に対する考察や、松澤先生自身が長年取り組まれてきた手法や考え方について、非常にわかりやすく丁寧にご講義いただきました。また、手法の一つとして、松澤先生が作成されたエクセル表を使い、皆で牛肉の原価計算方法を学びました。普段購入している肉がどういう仕組みで価格設定されているのか、実は知りませんでしたので大変興味深いものでした。

松澤先生からは、食肉店の経営者として、また畜産業を支援する中小企業診断士として、また一消費者として、様々な視点からみた肉用牛畜産業について教えていただくことができました。参加者からの質問もたくさんあり、活発な時間となりました。

チーズができるしくみ

次に発表されたのは、芦田健一会員です。芦田会員が農商工連携の業務である地域の酪農農家を訪問したところ、チーズ作りを始めたという奥様から「チーズの勉強をしたくて本を読んでいるのだが、難しくて内容が分からない」という相談を受けたそうです。芦田会員は大学時代に電子顕微鏡を専門で学んでいたこともあり、「では私が代わりに読んで説明しましょう」と本の内容説明を引き受けられ、今回のレポートをまとめられました。

チーズの勉強となると、やはり「作り方」の勉強になってきますが、それは私たち中小企業診断士がいくら学んでも、現場の方々には太刀打ちできるものではありません。ならば、現場の方々がわからないところを補完して役に立てたら、と芦田会員は考えられたそうです。この考え方は中小企業診断士の役割を考えるにあたり一つのヒントになると感じました。

報告では、チーズができるしくみ、チーズの種類、種類によってどのような違いがあり、その違いは何から生じるものなのか等、こちらもわかりやすくご説明いただきました。説明の中で印象的だったのは、「すごくミクロなレベルの違いがチーズそのものの違いに表れている」という話です。この「違いの理由」を知っているだけでも、チーズの製造者やチーズ専門店の方とより深い話ができるでしょうし、相手が言っていることを少しでも理解できるようになると、より有効な支援ができるのだろうと感じました。

座学で「食」を学ぶだけではない

お待ちかねの試食タイム

説明が一通り終わった後は、お待ちかねの試食タイムです。芦田会員が厳選して購入したというカマンベールチーズ・ゴーダチーズ・ブルーチーズの3種類が用意されました。切り分けたチーズを皆さんで試食し、感想や意見を語り合いました。チーズのことをほんの少し詳しくなってから試食してみると、以前より味の違いをしっかり感じられたような気がします。参加者の皆さんも試食を待ちわびていたようで、和気あいあいと感想や意見を言い合っていました。

経営理論を学び、支援ツールをつくり出す

会の最後に次回の案内がありました。次回は、食品に関する発表に加え、齊藤昭彦会長による「ゼロからの財務諸表」についての発表があるとのことです。「ゼロからの財務諸表思考法(葛馬正男、日本経済新聞出版社、2009年)」が研究会での課題図書の一冊になっており、その本をもとに、財務諸表の分析理論について、実例を使いながら議論を行うそうです。

この「良い食品販売研究会」では、2年連続で「中小企業経営診断シンポジウム」第3分科会で発表を行っており、2009年度には東京支部賞を受賞しました。そのときの発表テーマは「良い酒を販売させるための販売店支援ツール」です。これは、食品についての研究に加え、課題図書を使った経営理論分析も行っているからこその成果だと思います。

(つづく)

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